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第二十一部・フェルナンド 編
やぁ、お帰り
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『……ジョシュ?』
それでもドアを開けない約束を守って声を掛けた時、一番聞きたくない声がした。
『ミズ・アカマツ。この少年に害を与えられたくなくば、ドアを開けろ』
フェルナンドのボディガードの声がし、香澄は背筋を震わせる。
『お前がアルダーソン家の部屋にいたのは分かっていた。内側から開かないなら、開かせるまで。この少年が一人で歩いていた時、〝一緒に〟来てもらった』
(~~~~っ、卑怯者……っ!)
香澄は歯噛みする。
『カスミ、ごめんね……。僕……。痛っ……』
ジョシュアの小さな嗚咽を聞いた香澄は、深呼吸して自分を落ち着かせたあと、意を決してドアを開けた。
するとすぐ目の前に、ジョシュアが四人の男に囲まれ目に涙を浮かべている姿が見えた。
『その子を離してください』
男たちを睨み付けると、男の一人がジョシュアの肩を離した。
『カスミ!』
ジョシュアは香澄に抱きつこうとしたが、その前に男の一人が彼女の腕を引っ張った。
「あっ……!」
『来い』
とっさに足を踏ん張って抵抗したが、体重差、力の差がありズルズルと引きずられる。
『カスミ! 離せ!』
「ジョシュ!」
香澄が悲痛な叫び声を上げるなか、彼は部屋の中に放り込まれた。
「離して! っむぐっ」
閉じたドアに手を伸ばした香澄の口の中に、タオルが押し込まれる。
「むーっ!!」
これだけの騒ぎがあっても、昼間は皆、各施設に赴いて楽しんでいるので、客室の廊下を通る者はいなかった。
香澄はそのまま軽々と担ぎ上げられ、同じデッキ内にあるフェルナンドのスイートルームに運び込まれた。
**
二度と戻りたくないと思ったスイートルームのソファに座らされると、向かいにはフェルナンドが脚を組んで座し、こちらを見ていた。
『やぁ、お帰り』
微笑んではいるが、その茶色い目は怒りに燃えている。
香澄は表情を強張らせ、慎重に周囲を窺う。
ボディーガードは四人いて、出入り口の前は勿論、香澄の両側にもバルコニー側にも立っていて逃げ場がない。
(やばい……)
窮地に立たされた香澄の鼓動は、これ以上なく速まっていた。
(殺される……? いや、でも殺さないって言ってたけど……)
混乱と恐怖のあまり、まともに思考が動かない。
『あれを』
フェルナンドが護衛の一人に指示を出す。
思わずそちらを見ると、男がキャビネットの引き出しから、ピンク色のフワフワした物を出したところだ。
「な……、何……っ?」
香澄は怯えて後ずさろうとしたが、別のボディガードが彼女の肩を押さえた。
動けなくなった香澄は、足首にファーでできた足枷を嵌められる。
足枷からはチェーンが長く伸び、室内のどこかに固定されているようだ。
絶望した香澄は真っ青になり、どうしたらいいか分からず立ち尽くす。
『丁度良くワンピース姿だし、手洗いに支障はないだろう。チェーンは手洗いにもバスルームにも届くようになっている』
『もうやめてください!!』
香澄は涙を流し、拳を握ってフェルナンドに訴える。
一度は佑と電話ができて、もう助かったと安心していたからこそ、味わった絶望は大きかった。
フェルナンドは無言で立ち上がり、歩いて香澄の前までくると彼女の顎を捉えた。
『〝やめてください〟? 勝手に逃げておいて、何を言っているんだ?』
彼は激しい憎悪の込もった目で香澄を睨むと、思いきり頬を叩いてきた。
「っあぐっ……っ」
物凄い衝撃に、目の前で火花が散ったかと思った。
一瞬息を止めたあと、眩暈が襲ってきて香澄は一歩よろける。
『今度ふざけた真似をしたら、この場にいる全員でお前をレイプするぞ』
フェルナンドは力の加減をせずに香澄の頬に指を食い込ませ、顔を近付けると凄む。
「っ…………っ、――――っ……」
暴力と脅しとに、香澄の心はいとも簡単に折れた。
それでもドアを開けない約束を守って声を掛けた時、一番聞きたくない声がした。
『ミズ・アカマツ。この少年に害を与えられたくなくば、ドアを開けろ』
フェルナンドのボディガードの声がし、香澄は背筋を震わせる。
『お前がアルダーソン家の部屋にいたのは分かっていた。内側から開かないなら、開かせるまで。この少年が一人で歩いていた時、〝一緒に〟来てもらった』
(~~~~っ、卑怯者……っ!)
香澄は歯噛みする。
『カスミ、ごめんね……。僕……。痛っ……』
ジョシュアの小さな嗚咽を聞いた香澄は、深呼吸して自分を落ち着かせたあと、意を決してドアを開けた。
するとすぐ目の前に、ジョシュアが四人の男に囲まれ目に涙を浮かべている姿が見えた。
『その子を離してください』
男たちを睨み付けると、男の一人がジョシュアの肩を離した。
『カスミ!』
ジョシュアは香澄に抱きつこうとしたが、その前に男の一人が彼女の腕を引っ張った。
「あっ……!」
『来い』
とっさに足を踏ん張って抵抗したが、体重差、力の差がありズルズルと引きずられる。
『カスミ! 離せ!』
「ジョシュ!」
香澄が悲痛な叫び声を上げるなか、彼は部屋の中に放り込まれた。
「離して! っむぐっ」
閉じたドアに手を伸ばした香澄の口の中に、タオルが押し込まれる。
「むーっ!!」
これだけの騒ぎがあっても、昼間は皆、各施設に赴いて楽しんでいるので、客室の廊下を通る者はいなかった。
香澄はそのまま軽々と担ぎ上げられ、同じデッキ内にあるフェルナンドのスイートルームに運び込まれた。
**
二度と戻りたくないと思ったスイートルームのソファに座らされると、向かいにはフェルナンドが脚を組んで座し、こちらを見ていた。
『やぁ、お帰り』
微笑んではいるが、その茶色い目は怒りに燃えている。
香澄は表情を強張らせ、慎重に周囲を窺う。
ボディーガードは四人いて、出入り口の前は勿論、香澄の両側にもバルコニー側にも立っていて逃げ場がない。
(やばい……)
窮地に立たされた香澄の鼓動は、これ以上なく速まっていた。
(殺される……? いや、でも殺さないって言ってたけど……)
混乱と恐怖のあまり、まともに思考が動かない。
『あれを』
フェルナンドが護衛の一人に指示を出す。
思わずそちらを見ると、男がキャビネットの引き出しから、ピンク色のフワフワした物を出したところだ。
「な……、何……っ?」
香澄は怯えて後ずさろうとしたが、別のボディガードが彼女の肩を押さえた。
動けなくなった香澄は、足首にファーでできた足枷を嵌められる。
足枷からはチェーンが長く伸び、室内のどこかに固定されているようだ。
絶望した香澄は真っ青になり、どうしたらいいか分からず立ち尽くす。
『丁度良くワンピース姿だし、手洗いに支障はないだろう。チェーンは手洗いにもバスルームにも届くようになっている』
『もうやめてください!!』
香澄は涙を流し、拳を握ってフェルナンドに訴える。
一度は佑と電話ができて、もう助かったと安心していたからこそ、味わった絶望は大きかった。
フェルナンドは無言で立ち上がり、歩いて香澄の前までくると彼女の顎を捉えた。
『〝やめてください〟? 勝手に逃げておいて、何を言っているんだ?』
彼は激しい憎悪の込もった目で香澄を睨むと、思いきり頬を叩いてきた。
「っあぐっ……っ」
物凄い衝撃に、目の前で火花が散ったかと思った。
一瞬息を止めたあと、眩暈が襲ってきて香澄は一歩よろける。
『今度ふざけた真似をしたら、この場にいる全員でお前をレイプするぞ』
フェルナンドは力の加減をせずに香澄の頬に指を食い込ませ、顔を近付けると凄む。
「っ…………っ、――――っ……」
暴力と脅しとに、香澄の心はいとも簡単に折れた。
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