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第二十一部・フェルナンド 編
エミリオ・アベラルドという男
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毎年の募集定員も一名ほどというのも珍しくない。
今回働いてくれているのは、銃器弾薬類鑑定、刀剣鑑定にならび画像鑑定、現場鑑定を担う物理鑑定室の職員だ。
現在品川駅で見つかった香澄らしき人物は五人。
その中で三人が〝別人〟とされていた。
(どこに行ったんだ……)
万が一を思ってスマホをもう一台、さらにアラートつきのGPSを持たせても、何の役にも立たなかった。
あまりに自分が無力で、情けない。
佑は溜め息をついては無理矢理意識を仕事に戻し、モニターの時計表示を見て、「あと五分だから」と自分に言い聞かせた。
やがて終業になったあと、佑は改めてドイツの祖父に電話を掛けた。
その後、祖父からエミリオ・アベラルドの基本情報を得たが、香澄に手を出す男に思えなかった。
その後、祖父からエミリオ・アベラルドの基本情報を得ていたが、どう考えても香澄に手を出す男に感じられなかった。
仕事には真面目だが、明るく陽気な性格で、周囲から愛されるタイプらしい。
そして愛妻家で、娘と息子にもだだ甘のようだ。
仕事以外の時間は基本的に家族と過ごし、誘いがあれば友人たちとも遊ぶ。
だがキャンプなどを除いて泊まりはせず、酒も飲みすぎないし女性と関わらない。
彼の事業は船でものを輸送するのが仕事だ。
石油、石炭、機械、食料品、日用品、ありとあらゆる物を輸送し、世界中の輸出入のキモを握っている。
さらに豪華客船で人を運ぶのも含め、各旅行会社や造船会社と連携している。
アドラーは「佑と接点があると思えない」と言う。
現状、佑もそう思っている。
同じ業界にいるならライバルになるが、アパレルと海運とではあまりに住む世界が違う。
Chief Everyの商品を海運で運ぶ事や、佑が客として豪華客船で旅行をする……なら〝関わる〟と言えるかもしれない。
もっとも、海外に行く時は飛行機、しかもプライベートジェットを使っているので、本当に関わりがない。
豪華客船での旅も経験はあるが、問題を起こした覚えはない。
そんなエミリオに「破滅を願う」と言われてもピンとこない。
しかし香澄から聞いた情報――スペインで海運業を営んでいる男と言えば、彼しかいない。
ネットで調べたエミリオ・アベラルドは、確かにフェルナンドと同じ顔をしていた。
なので一体どこで恨みを買ったか分からず、何もかも手探りの状態だった。
アドラーに電話を掛けながら、佑は壁時計で時刻を確認する。
日本は現在十七時、ドイツは朝の九時だ。
《Hello.》
「オーパか。俺だ。今は大丈夫か? 俺は仕事が終わったところだ」
《ああ、構わない》
「香澄はまだ見つからない。捜査の範囲を空港まで広げてもらっているが、まだ有力な情報は得られていない」
《香澄さんはパスポートを所持していないだろう? 飛行機を利用すると思えない。エミリアの時は自ら出国したが、今は不意を突かれた形だろう?
「考えられるセンとして、囮が時間を稼いでいる間、本物は車に乗って高速に乗って遠くへ運ばれた。もしくは最悪、偽造パスポートを作られたかもしれない」
警察が言うには、暴力団なども使っている手口として、国が発行した〝本物の偽造パスポート〟を作る事ができるらしい。
パスポートさえあるなら、連れ出すほうも堂々と空港に行ける。
そこまで考えてドッと疲れ、佑は大きな溜め息をつく。
《言える事を伝えておこう。札幌にいる護衛から、香澄さんの実家に不審な男がうろつき回っていると報告され、警戒させている》
「…………何かされたのか?」
《その後、彼女のご両親は普通に過ごしていて、被害を受けたように見られない。現段階では見張っているだけ……と言える。マティアスと麻衣さんについては、マティアスが警戒している事もあり、こちらも実害はないそうだ》
報告を聞いて安堵の息を吐いたものの、佑が最も心配しているのは香澄だ。
(……脅されたか?)
あれだけ言い含めていた香澄が自分に逆らってフェルナンドに従うと思えず、余程の理由があったとしか考えられない。
実家の両親を盾に取られたなら、怯えて言う事を聞いても仕方がない。
今回働いてくれているのは、銃器弾薬類鑑定、刀剣鑑定にならび画像鑑定、現場鑑定を担う物理鑑定室の職員だ。
現在品川駅で見つかった香澄らしき人物は五人。
その中で三人が〝別人〟とされていた。
(どこに行ったんだ……)
万が一を思ってスマホをもう一台、さらにアラートつきのGPSを持たせても、何の役にも立たなかった。
あまりに自分が無力で、情けない。
佑は溜め息をついては無理矢理意識を仕事に戻し、モニターの時計表示を見て、「あと五分だから」と自分に言い聞かせた。
やがて終業になったあと、佑は改めてドイツの祖父に電話を掛けた。
その後、祖父からエミリオ・アベラルドの基本情報を得たが、香澄に手を出す男に思えなかった。
その後、祖父からエミリオ・アベラルドの基本情報を得ていたが、どう考えても香澄に手を出す男に感じられなかった。
仕事には真面目だが、明るく陽気な性格で、周囲から愛されるタイプらしい。
そして愛妻家で、娘と息子にもだだ甘のようだ。
仕事以外の時間は基本的に家族と過ごし、誘いがあれば友人たちとも遊ぶ。
だがキャンプなどを除いて泊まりはせず、酒も飲みすぎないし女性と関わらない。
彼の事業は船でものを輸送するのが仕事だ。
石油、石炭、機械、食料品、日用品、ありとあらゆる物を輸送し、世界中の輸出入のキモを握っている。
さらに豪華客船で人を運ぶのも含め、各旅行会社や造船会社と連携している。
アドラーは「佑と接点があると思えない」と言う。
現状、佑もそう思っている。
同じ業界にいるならライバルになるが、アパレルと海運とではあまりに住む世界が違う。
Chief Everyの商品を海運で運ぶ事や、佑が客として豪華客船で旅行をする……なら〝関わる〟と言えるかもしれない。
もっとも、海外に行く時は飛行機、しかもプライベートジェットを使っているので、本当に関わりがない。
豪華客船での旅も経験はあるが、問題を起こした覚えはない。
そんなエミリオに「破滅を願う」と言われてもピンとこない。
しかし香澄から聞いた情報――スペインで海運業を営んでいる男と言えば、彼しかいない。
ネットで調べたエミリオ・アベラルドは、確かにフェルナンドと同じ顔をしていた。
なので一体どこで恨みを買ったか分からず、何もかも手探りの状態だった。
アドラーに電話を掛けながら、佑は壁時計で時刻を確認する。
日本は現在十七時、ドイツは朝の九時だ。
《Hello.》
「オーパか。俺だ。今は大丈夫か? 俺は仕事が終わったところだ」
《ああ、構わない》
「香澄はまだ見つからない。捜査の範囲を空港まで広げてもらっているが、まだ有力な情報は得られていない」
《香澄さんはパスポートを所持していないだろう? 飛行機を利用すると思えない。エミリアの時は自ら出国したが、今は不意を突かれた形だろう?
「考えられるセンとして、囮が時間を稼いでいる間、本物は車に乗って高速に乗って遠くへ運ばれた。もしくは最悪、偽造パスポートを作られたかもしれない」
警察が言うには、暴力団なども使っている手口として、国が発行した〝本物の偽造パスポート〟を作る事ができるらしい。
パスポートさえあるなら、連れ出すほうも堂々と空港に行ける。
そこまで考えてドッと疲れ、佑は大きな溜め息をつく。
《言える事を伝えておこう。札幌にいる護衛から、香澄さんの実家に不審な男がうろつき回っていると報告され、警戒させている》
「…………何かされたのか?」
《その後、彼女のご両親は普通に過ごしていて、被害を受けたように見られない。現段階では見張っているだけ……と言える。マティアスと麻衣さんについては、マティアスが警戒している事もあり、こちらも実害はないそうだ》
報告を聞いて安堵の息を吐いたものの、佑が最も心配しているのは香澄だ。
(……脅されたか?)
あれだけ言い含めていた香澄が自分に逆らってフェルナンドに従うと思えず、余程の理由があったとしか考えられない。
実家の両親を盾に取られたなら、怯えて言う事を聞いても仕方がない。
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