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第二十部・同窓会 編

また近いうちにね!

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「いやぁ、いい男捕まえたね。麻衣はいつも『一人でいいんだ』って強がってたけど、『いつかいい人現れる』って言ったでしょ? でしょ~?」

 そう言って、奈央は麻衣の肩を組んで一緒に体を左右に揺らす。

「もう家族に紹介もしたんでしょ? で、結婚まで秒読み? いやぁ……。結婚って、する子は一瞬で決まるもんよ」

 最後に決め台詞のように言った奈央は、「わはは!」と豪快に笑った。

 麻衣はチラッとマティアスを見たあと、分かりやすく赤面している。

(可愛い……。やっぱり私の最推し)

 香澄はそんな親友を見て、一人グッと拳を握る。

 話題は麻衣とマティアスの事なり、麻衣は照れながらもマティアスとのなれそめを話し始めた。

 マティアスも時々口を挟み、彼らしい一言を言っては真っ赤になった麻衣に睨まれる。

「それにしても二人とも幸せそうで良かったよ。香澄は有名人に東京に連れていかれて、どうなる事やら……って思ったし、麻衣はずっと彼氏いなかったのに、突然ドイツ人と結婚するって言いだすし……。何が起こるか分からないもんだね」

 話しながらも、そろそろ飲み放題の二時間が終わるので、全員帰り支度をしている。

「麻衣もそのうち東京に引っ越すって? 今度二人で東京行くから、都会っ子に東京案内してほしいな。それにお宅訪問したい!」

 彩美に言われ、香澄は佑の意見を伺うように彼を見る。

 すると佑は「勿論」と頷いてくれたので、奈央と彩美は「やったー!」とはしゃいだのだった。






 店を出たのは二十時すぎだ。

「これからどうする?」

 彩美が尋ね、奈央がニッコリ笑う。

「香澄はせっかく帰省したんだから、のんびり故郷を楽しんだら? 実家にも顔を見せるんでしょ? 遅くまで連れ回したら申し訳ないから、もう解散にしておこうか。私は彩美ともうちょっと飲んでから帰る」

 奈央の気遣いに、香澄は感謝する。

「ありがとう。実は佑さん、昨日まで大阪にいたから少し休ませてあげたかったの」

 本当はもっと一緒にいたかったが、多忙な佑には少しでも休んでほしかった。

「ええーっ!? それは……! 世界を股に掛ける経営者って凄いね? 御劔さん、どうぞ休んでください……!」

 奈央に言われ、佑は苦笑いする。

「慣れているから大丈夫ですが、お気遣いありがとうございます」

「いいえ。うちの夫もなんですけど、疲れに慣れたら駄目ですからね。『大丈夫』って言っているうちに疲労が積み重なって、いつか倒れますから。香澄を未亡人にしないでください」

 奈央らしい心配の仕方をされ、佑は笑いながら「はい」と頷いた。

 そのあと香澄と佑は四人と別れ、タクシーに乗ってホテルに戻る事にした。

 別れ際、香澄は麻衣に思いきり抱きつく。

「ん? どうした?」

 麻衣はポンポンと香澄の背中を叩き、いつものようにあやしてくれる。

(麻衣は絶対に私が守るからね)

 香澄はしっかり親友を抱き締めてから、パッと顔を上げ笑った。

「また近いうちにね!」

「うん」

「愛してるよ!」

「あっはは! 御劔さんが後ろで凄い顔してるから、やめて!」

 親友の明るい笑い声を聞きながら、香澄はマティアスに「麻衣を頼みます」と挨拶をしてタクシーに乗った。





「ねぇ、佑さん」

「ん?」

「明日の午前中、ちょっとだけ実家行ってもいい?」

「勿論だよ。行くなら、先に連絡しておいたほうがいいんじゃないか?」

「そうだね。連絡しておく」

 頷いた香澄は、気が重たいながらもいつものスマホを取りだし、コネクターナウで母に連絡を取る。

【同窓会で札幌に戻ってるんだけど、明日の午前中ちょっと寄ってもいい?】

 すると、すぐに既読がついて返事がきた。

【勿論!】

 そのあと母から【OKです】というスタンプが送られてきて、香澄は笑顔になった。

(麻衣にも両親にも、悪い事が起こりませんように)

 心の中で祈りながらスマホをすぐ閉じ、カメラのレンズがある面を下に向ける。

 小さく息を吐いて佑の手を握ると、彼は何も言わずその手を握り返してくれた。



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