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第二十部・同窓会 編
親友の忠告
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気まずく麻衣の話を聞いていると、横から彩美が抱き締めてくる。
「香澄って一番男運がなかったよね。恋愛感情に疎いから、告白されて断れなくて……って付き合っちゃったんだよね。話を聞くたびに『もっとまともな人を好きになってたらな』って思ったけど、この子、そういう欲をあんまり持たないから」
彩美によしよしと頭を撫でられ、香澄は苦笑いしつつ彼女にもたれかかる。
「もっとありますけど、うんざりする事請け合いですね」
麻衣は吐き捨てるように言ったあと、冷たくなったポテトを摘まんで口に入れる。
「……凄まじい男だな。そこまで酷い男は聞いた事がない」
最初に感想を述べたのは、マティアスだった。
(集まるとこういう話になっちゃうんだよな……)
健二との事は過去のものと思っているが、親友が何度も怒る姿を見ると、逆に申し訳なくなってくる。
(佑さんは……、前に健二くんにきつーいお仕置きをしたみたいだから、今さら何もないよね?)
ソロリと佑の横顔を見ると、腕を組んだ彼は何かを考えているようだった。
そのあと、ウーロン茶を飲んだ奈央がしみじみと言う。
「私は香澄が御劔さんといい関係になれて、本当に安心してます。邪魔する奴がいたら、私がヤキ入れてやりますよ」
彩美もうんうんと頷く。
「原西って東京行ったんでしょ? 東京って広いし、まさか鉢合わせてないよね?」
彩美に言われ、香澄は気まずく笑う。
「それが鉢合っちゃって。……でも解決したから大丈夫。佑さんが助けてくれたの」
「あー……。マジ? 悪縁があるのかな。でも御劔さんが相手なら、もう寄ってこないでしょ?」
奈央に言われ、香澄は頷く。
「昼休憩にコーヒーショップで再開して、連絡先を教えてほしいって言われて、つい教えちゃったのは、私に非がある。もう男女じゃなくて、ただ懐かしいからっていう理由だと思って会ってみたら、デートみたいになっちゃって……。ちょっと嫌な事を思いだして一人で帰っちゃった。……でも、佑さんが慰めてくれたから大丈夫」
「わぁ……。あれだけの事をしておいて、まだ会おうっていう図太さがあるんだ。すご……」
香澄の話を聞き、彩美はドン引きしている。
自分で話しておきながら、香澄は当時を思い出して少し落ち込んだ。
(あの人、本質は変わってないんだろうなぁ)
やり手の営業という雰囲気を出していたが、『変わらないな』と感じた点も多々あった。
双子は軽薄な印象があっても、最後の一線を越えない賢さがある。
悪ふざけがすぎる時もあるが、基本的に彼らは佑をからかいたくて悪戯をしているだけだ。
香澄にベタベタしている時も、基本的に丁寧に接してくれるし、デートをした時の扱いも丁寧だった。
もしかしたらアンネや澪のように〝自分の守備範囲〟に入れた者に優しい性格なのかもしれない。
彼らが不特定多数の女性と付き合っていたのは、正直褒められた事でないと思うが、それにも深い理由があった。
エミリアの件が片付いたあと、双子は生き方を改善しようとし『人を本気で好きになってみたい』と言っていた。
だが健二は自分の悪い所に気づいていないようだったし、理解したとしても改める事はない気がする。
だから双子と健二とでは〝駄目〟さの質が違うのだ。
(目の前にいる人が、いい人か悪い人か、きちんと見極めないと駄目なんだよなぁ。それができるのが、大人なんだと思う。ダメンズメーカーのままじゃ駄目だ。……でも、佑さんもある意味、ヤンデレっぽいし、どう……なんだろう……?)
佑と出会ってから、まともな男性は女性を大切に扱うのだとようやく理解した。
香澄を尊重してくれ、何よりも香澄の幸せを望んでくれている。
だが佑は規格外の金持ちで、嫉妬の度合いも凄くて〝普通〟とは言いがたい。
なので本当に自分が〝理想的な男性〟と結ばれたのかと言われると、よく分からないのだが……。
「もう健二くんと関わる事はないから、大丈夫だよ」
友人に微笑みかけると、彼女たちは安心して深く頷いた。
「香澄は原西に嫌な事をされた時、ちゃんと怒ったの?」
奈央に尋ねられ、香澄は「ん?」と瞬きをする。
「香澄、普段怒らないでしょ。自分が我慢すれば収まるって思うタイプで……。怒る時はちゃんと怒らないと、良くない感情が溜まってあとから爆発するからね?」
心配され、香澄は当時を思いだす。
「『やめて』とはちゃんと言えた……気がするけど」
「それならいいんだけど。香澄の事じゃないけど、私の知ってる子は、人に怒りを向けるのが苦手で、心の中で繰り返し怒ってるうちに病んじゃった。……だから、気を付けてほしい」
奈央に言われ、香澄は微笑む。
「ありがとう、奈央ちゃん。佑さんには多分素直になれてると思う」
佑と衝突した事はあるが、好きだからこそ気持ちを伝えたいという思いだった。
どうでもいい人になら、多少誤解されても「まぁいいや」と思うかもしれない。
けれど家族になる人だからこそ、自分が何を考えているのか、不満に感じている理由を知ってほしいと思ったのだ。
「なら良かった。原西は香澄を雑に扱う男だったけど、御劔さんはそうじゃないもんね。これからも話し合って、いい関係を築いていって」
「ありがとう」
微笑んだ香澄の頭を彩美が可愛がるように撫で、話題を変えた。
「麻衣はマティアスさんとお似合いだよね」
いきなり話の矛先が麻衣に向かい、それまで香澄の話を聞いてうんうんと頷いていた麻衣が目を見開く。
「えっ……」
やや酔いが醒めた顔をする彼女を、横から奈央がつついた。
「香澄って一番男運がなかったよね。恋愛感情に疎いから、告白されて断れなくて……って付き合っちゃったんだよね。話を聞くたびに『もっとまともな人を好きになってたらな』って思ったけど、この子、そういう欲をあんまり持たないから」
彩美によしよしと頭を撫でられ、香澄は苦笑いしつつ彼女にもたれかかる。
「もっとありますけど、うんざりする事請け合いですね」
麻衣は吐き捨てるように言ったあと、冷たくなったポテトを摘まんで口に入れる。
「……凄まじい男だな。そこまで酷い男は聞いた事がない」
最初に感想を述べたのは、マティアスだった。
(集まるとこういう話になっちゃうんだよな……)
健二との事は過去のものと思っているが、親友が何度も怒る姿を見ると、逆に申し訳なくなってくる。
(佑さんは……、前に健二くんにきつーいお仕置きをしたみたいだから、今さら何もないよね?)
ソロリと佑の横顔を見ると、腕を組んだ彼は何かを考えているようだった。
そのあと、ウーロン茶を飲んだ奈央がしみじみと言う。
「私は香澄が御劔さんといい関係になれて、本当に安心してます。邪魔する奴がいたら、私がヤキ入れてやりますよ」
彩美もうんうんと頷く。
「原西って東京行ったんでしょ? 東京って広いし、まさか鉢合わせてないよね?」
彩美に言われ、香澄は気まずく笑う。
「それが鉢合っちゃって。……でも解決したから大丈夫。佑さんが助けてくれたの」
「あー……。マジ? 悪縁があるのかな。でも御劔さんが相手なら、もう寄ってこないでしょ?」
奈央に言われ、香澄は頷く。
「昼休憩にコーヒーショップで再開して、連絡先を教えてほしいって言われて、つい教えちゃったのは、私に非がある。もう男女じゃなくて、ただ懐かしいからっていう理由だと思って会ってみたら、デートみたいになっちゃって……。ちょっと嫌な事を思いだして一人で帰っちゃった。……でも、佑さんが慰めてくれたから大丈夫」
「わぁ……。あれだけの事をしておいて、まだ会おうっていう図太さがあるんだ。すご……」
香澄の話を聞き、彩美はドン引きしている。
自分で話しておきながら、香澄は当時を思い出して少し落ち込んだ。
(あの人、本質は変わってないんだろうなぁ)
やり手の営業という雰囲気を出していたが、『変わらないな』と感じた点も多々あった。
双子は軽薄な印象があっても、最後の一線を越えない賢さがある。
悪ふざけがすぎる時もあるが、基本的に彼らは佑をからかいたくて悪戯をしているだけだ。
香澄にベタベタしている時も、基本的に丁寧に接してくれるし、デートをした時の扱いも丁寧だった。
もしかしたらアンネや澪のように〝自分の守備範囲〟に入れた者に優しい性格なのかもしれない。
彼らが不特定多数の女性と付き合っていたのは、正直褒められた事でないと思うが、それにも深い理由があった。
エミリアの件が片付いたあと、双子は生き方を改善しようとし『人を本気で好きになってみたい』と言っていた。
だが健二は自分の悪い所に気づいていないようだったし、理解したとしても改める事はない気がする。
だから双子と健二とでは〝駄目〟さの質が違うのだ。
(目の前にいる人が、いい人か悪い人か、きちんと見極めないと駄目なんだよなぁ。それができるのが、大人なんだと思う。ダメンズメーカーのままじゃ駄目だ。……でも、佑さんもある意味、ヤンデレっぽいし、どう……なんだろう……?)
佑と出会ってから、まともな男性は女性を大切に扱うのだとようやく理解した。
香澄を尊重してくれ、何よりも香澄の幸せを望んでくれている。
だが佑は規格外の金持ちで、嫉妬の度合いも凄くて〝普通〟とは言いがたい。
なので本当に自分が〝理想的な男性〟と結ばれたのかと言われると、よく分からないのだが……。
「もう健二くんと関わる事はないから、大丈夫だよ」
友人に微笑みかけると、彼女たちは安心して深く頷いた。
「香澄は原西に嫌な事をされた時、ちゃんと怒ったの?」
奈央に尋ねられ、香澄は「ん?」と瞬きをする。
「香澄、普段怒らないでしょ。自分が我慢すれば収まるって思うタイプで……。怒る時はちゃんと怒らないと、良くない感情が溜まってあとから爆発するからね?」
心配され、香澄は当時を思いだす。
「『やめて』とはちゃんと言えた……気がするけど」
「それならいいんだけど。香澄の事じゃないけど、私の知ってる子は、人に怒りを向けるのが苦手で、心の中で繰り返し怒ってるうちに病んじゃった。……だから、気を付けてほしい」
奈央に言われ、香澄は微笑む。
「ありがとう、奈央ちゃん。佑さんには多分素直になれてると思う」
佑と衝突した事はあるが、好きだからこそ気持ちを伝えたいという思いだった。
どうでもいい人になら、多少誤解されても「まぁいいや」と思うかもしれない。
けれど家族になる人だからこそ、自分が何を考えているのか、不満に感じている理由を知ってほしいと思ったのだ。
「なら良かった。原西は香澄を雑に扱う男だったけど、御劔さんはそうじゃないもんね。これからも話し合って、いい関係を築いていって」
「ありがとう」
微笑んだ香澄の頭を彩美が可愛がるように撫で、話題を変えた。
「麻衣はマティアスさんとお似合いだよね」
いきなり話の矛先が麻衣に向かい、それまで香澄の話を聞いてうんうんと頷いていた麻衣が目を見開く。
「えっ……」
やや酔いが醒めた顔をする彼女を、横から奈央がつついた。
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