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第二十部・同窓会 編

香澄の事を教えてくれませんか?

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「はい。本当はもうちょっといるんですが、御劔さんに会わせても大丈夫なのは、この二人と判断しました。……滝もマルも、皆には黙っててね?」

 麻衣が言い、奈央と彩美は頷く。

 そして奈央が補足した。

「もっと騒がしい子とか、やけにサバサバした子もいるんですけど、連れてきたらちょっと困った事になるかもなので、今回は見送りました。……悪い子じゃないんですけどね」

 その言葉を聞いて、佑はすべて察したようだ。

「逆にせっかくの同窓会なのに、気を遣わせてしまってすみません」

「いいえ、お気にせず。それより、飲み物オーダーしましょうか」

 彩美に言われ、全員がドリンクメニューを見る。

「私ビール」

 麻衣が片手を挙げ、奈央も「私も」と手を挙げる。それに佑とマティアスも加わった。

「えっと……私、ファジーネーブル」

 香澄はカクテルにし、彩美は白ワインだ。

 呼び出しボタンを押して飲み物をオーダーしたあと、フードメニューを覗き込む。

 店はどうやらしゃぶしゃぶと肉寿司など、肉メインの店のようだ。

(お肉だ……)

 香澄はメニュー写真を見て、ニヤァ……と笑う。

「本当にお肉好きだよね。全部ここにいってる?」

 そう言って彩美が胸を触ってきたので、香澄はとっさに両手で胸を守る。

「この子、色々育ったでしょ~。東京に行って磨かれたんだから」

 麻衣が言い、奈央が頷く。

「ねー、何かすっごい垢抜けた。綺麗なお姉さんって感じ」

 香澄は照れながら「ありがとう」と笑う。

「香澄ちゃんのジャフォ見てるけど、『セレブのアカウントかな?』って思うよね。もう嫉妬する気力すら消え失せちゃった」

「あっ、あーっ! 変なふうに受け取ったらごめん。思い出のために記録している感じなんだけど」

 ヒヤッとした香澄は、懸命に言い訳する。

「まさか! 自慢なんて思ってないよ。誰だってSNSの投稿はするだろうし。それに私は香澄ちゃんの鍵アカウントを見られる、選ばれたフォロワーなんだなーって思うと嬉しいよ」

「う、うーん……。なんか……調子に乗ってすみません……」

 しおしおと謝る香澄を見て、麻衣と奈央が豪快に笑う。

「ほんっと香澄って気にしいだなー」

「この面子でそんなこと気にしてどうすんの。それより肉食べな、肉」

 励まされて安堵した香澄は、気持ちを切り替えて真剣にメニューを見た。





 やがて飲み物が届いたあと、食べ物をオーダーして乾杯してから、本格的にお喋りが始まった。

 最初は佑と香澄、マティアスと麻衣のなれそめや関係、どのように生活をしているかなどが話題になり、奈央と彩美は大興奮していた。

 事前に佑に『信頼している子』と説明しているので、御劔邸の写真も披露した。

「はぁ~。御劔さんが人気者なのはテレビやネットで知ってたけど、こんなに話しやすい人とは思わなかった。そりゃあ誰だって惹かれるわな」

 奈央がハイボールを飲みながら言い、ローストビーフをチーズフォンデュする。

「香澄ちゃん、ぜーったいに離したら駄目だよ? こんな超優良物件、二っ度と現れないからね?」

 彩美はパッと見、守りたくなる可愛いさがあるが、酒が入るとたくましさを見せてくる。

 彼女はつい守りたくなる外見ながら、かなりのしっかり者だ。

 しっかり者の性格が災いして、社会人になったあとは『想像と違う』とフラれ続けていたらしい。

 だがいま付き合っている彼氏とは馬が合い、結婚秒読みのようで安心している。

「香澄だけじゃなくて麻衣もね。二人とも食らいついて離さない覚悟でいきなよ?」

 そう言った奈央は、姉御肌で学生時代にも女子生徒から人気があった。

 あまり女子らしさを見せるキャラではなかったので、学生時代は『結婚できなかったりして』と言っていたが、この四人の中で最初に結婚している。

 年上夫は、国際線の副操縦士コーパイをしている。

 忙しくてあまり家に帰れていないらしいが、『それぞれの時間を過ごす感じで丁度いい』と言っている。

 ちなみに夫が奈央にベタ惚れなので、浮気の心配もないらしい。

「あざっす」

 麻衣は照れながら奈央に礼を言い、ビールのジョッキを傾ける。

 佑とマティアスは会話の邪魔をしないように、隅のほうで会話を聞いていた。

 が、ある程度お喋りが落ち着いた頃、佑が尋ねてきた。

「もし良かったら、学生時代の香澄の事を教えてくれませんか?」

「もちろーん!」

 奈央が即答し、香澄は「佑さん!」と焦る。

「めちゃ普通だし、聞いて楽しい事なんてないよ?」

「香澄がどんな子だったか、男子にどう見られていたかとか、気になるじゃないか」

 だが佑はご機嫌に言って引こうとしない。
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