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第二十部・同窓会 編

スナイパーについての推測

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「じゃあ、俺は新鮮な海鮮や肉を手配しようか」

「わぁ、佑さんが入ると一気にお鍋のグレードがアップする」

「御劔さんって、アク取りめっちゃ神経質にやりそう」

「あはは、それ!」

 麻衣の言葉に香澄が笑い、マティアスは「アク?」と首を傾げている。

「アク取り……。まぁ、確かに係に任命されたら一生懸命取るかもな……」

 佑はまじめに答え、それがまたおかしくて堪らない。

 皆で何気ない話をしているだけで、随分と心がリラックスしていた。

 だから東京にいた時より、冷静に考える事ができた。

(どこにいても盗聴されている恐れはあるけど、冷静に考えて、フェルナンドさんが雇ったスナイパーが、プライベートジェットに合わせて札幌に来るのは不可能なんじゃないかな。外国人だとして、入国する時に荷物検査を受けたでしょ? それでさらに羽田から新千歳っていったら、何回も武器が見つかる危険に遭いたくないんじゃないかな?)

 そう考えた香澄は、うん、と一人で頷く。

(だから、札幌には来てない……と思いたい)

 半分希望の混じった答えを出し、安心して溜め息をついた。

(今はそう考えておこう。せっかく札幌に同窓会に来たんだから、暗い顔をしていたら駄目だ)

 そう思ったあと、麻衣の顔を見て決意した。

(フェルナンドさんの件が落ち着くまで、麻衣を東京に来させないようにしよう。スナイパーが複数人いるなんて考えられないけど、東京に来ちゃったら危険な目に遭う確率が高くなっちゃう。マティアスさんに話したら、きっと協力してくれるはず)

 思考を巡らせている間、アミューズブーシュが出された。

 香澄はギャルソンに断ってからスマホで写真を撮り、甘くないプチシューを口に入れる。

「美味しいね」

「うん」

 麻衣と微笑み合ったあと、美しいアミューズやコース料理を楽しんだ。





 ランチが終わったあとは、ホテルに戻ってまた四人でのんびりする。

 両親には明日の昼間に少し顔を出すと、電話で連絡した。

 そして手洗いに立ったタイミングで、ノーマークのスマホで佑に先ほど考えた事をメッセージした。

『私から麻衣に〝東京に来る時期を遅らせて〟っていうのは不自然だと思うから、マティアスさんに頼もうと思う。彼に言われたら麻衣も同意すると思うし』

 すると、すぐに佑から返事があった。

『分かった。じゃあ、俺からマティアスに言っておこう。これから麻衣さんとコンビニまで行ってくれないか? その間に話をする』

『了解です』

 短いやり取りを経て、香澄はノーマークのスマホをポケットに入れ、リビングに戻る。

「ねぇ、麻衣」

「んー?」

「私、アイス食べたくなっちゃった。コンビニ付き合って」

 すると佑が〝いつもの〟反応をする。

「ルームサービスで頼もうか?」

「ううん。いいの。高級なアイスじゃなくて、フツーのが食べたいの」

 それに香澄も〝いつもの〟返しをする。

「分かった。いってらっしゃい。同じフロアに久住たちがいるから、必ず一緒に行くように」

「分かった」

 香澄は返事をし、コートを取りに向かう。
 麻衣も立ち上がり、「何のアイス食べようかな」と言いながら着いてくる。

 部屋を出たあと、香澄は護衛たちに声を掛け、一階のコンビニに向かった。



**



 香澄がスマホを持って出ていったのを見送った佑は、マティアスを見て言う。

「今後についてだが、しばらく麻衣さんとお前には、札幌に留まってもらいたい」

 マティアスが微かに瞠目したので、佑は香澄が言った事を説明する。

「殺し屋には色んな種類がいる。破れかぶれの奴は、金額も低いし足がつきやすい。玄人を雇えば成功率は高くなるが、裏社会では有名な奴だろうから、警察にもチェックされている」

 佑の言葉を聞き、マティアスは小さく頷いた。

「だがハイレベルの殺し屋を、フェルナンドという男が雇えるかという疑問もある。数千万積めば引き受けるだろうが、殺し屋だって相手を見ると思う」

「クラウザー家を敵にするか……か」

 マティアスはそう呟き、頷いた。
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