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第二十部・同窓会 編

ドイツ組への協力要請

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「またあとで連絡する。遅い時間に悪かった」

『いや、構わない』

 ひとまず電話を切ったあと、佑はドイツ時間を確認する。現在、あちらは十八時過ぎだ。

「この時間なら大丈夫か」

 そう思い、まずアドラー、双子それぞれに連絡をして、人払いをした状態でビデオ通話ができるかを尋ねた。

 佑からこのような提案をする事は滅多にないため、本能的に異変を感じた双方からすぐ返事がきた。

 佑はノートパソコンを開いてアプリを開く。

 やがて三つのウィンドウにアドラー、アロイス、クラウスのそれぞれが映った。

『どーした? タスク』

 佑は双子とアドラーの顔を見て、自然と安堵している自分がいるのに気付いた。

 悔しいが、自分一人では解決できないかもしれない。

 特に相手が狙撃手を雇っている場合、銃とは縁遠い自分より、荒波に揉まれた祖父の助言があると助かる。

 祖父も双子も、ヨーロッパやアメリカを中心として活躍している。

 フェルナンドの根城はスペインなので、彼らの人脈が必ず役立つと思っていた。

「手短に話す。俺もさっき情報を得たばかりで、すべてを知っている訳ではない。だが緊急事態だと判断したので、早い段階で協力を仰ぎたい」

 そう前置きをしてから、佑は香澄から聞いた情報、そしてマティアスと話した事をなるべく詳細に伝えた。

 しばらく三人は難しい顔をして黙り込み、やがてアドラーが口を開いた。

『スペインの海運会社の、代表取締役社長のファミリーネームがアベラルドだ。佑がバルセロナで見た彼は三十代半ばだな? それなら心当たりがある。しかしアベラルド家の彼はエミリオという名で、フェルナンドではない』

「それは俺も調べている。だがネットでエミリオ・アベラルドの顔を検索すると、奴にそっくりなんだ。別人に思えない」

『仮名っていう事は大いに考えられるよね』

 クラウスが髪を掻き上げて溜め息をつき、眉間に皺を寄せる。

「もしスペインにツテがあるなら、その辺りを調べてほしい。俺もスペインに知り合いはいるが、エミリオ・アベラルドと直接の知り合いではないし、海運関係はやや疎い」

『分かった。知り合いに当たってみよう』

 アドラーが頷く。

『俺たちも知り合いを当たってみる。勿論、向こうに勘づかせるような真似はしないから安心して』

 アロイスも協力を申し出た。

「頼む。香澄は誰かが命を落とすかもしれない事を恐れている。彼女にはもう『自分のせいで』と思わせたくない」

 自分たちの前に立ちはだかる障害は、エミリアだけで十分だ。

 自分が婚約者だから香澄が狙われたのだと思うと、申し訳なくて堪らない。

(何とかしなきゃ……)

 厳しい顔をする佑に、アドラーが画面の向こうから話し掛けてきた。

『香澄さんが心配なのは分かる。だが気負いすぎないように。きちんと寝て食べて、万全な状態で敵を迎え撃てるようにしなさい。私のほうから国際基準のボディガードを向かわせる。彼らが日本に着く頃になったらまた連絡をする。相手に気づかれないようにするから、安心しなさい』

「……分かった。ありがとう」

 祖父に言われ、佑は頷く。

「他の人には内密に頼む。俺も両親には言わない。ドイツ組で事情を知っているのは、この三人とマティアスだけだ」

『りょーかい』

『とりあえず、今すぐは何もできないから寝ろよ。そっち真夜中だろ?』

 アロイスに言われ、佑は現在の時刻を思いだす。

「今、大阪なんだ。香澄が一人で怖がっているから、これから秘書たちに事情を話して、すぐに東京に向かう」

『まぁ、自分の飛行機だし好きにしなよ。カスミに宜しく』

 クラウスに言われ、佑は頷く。

「香澄のスマホ以外、何に盗聴器、カメラが仕込まれているか判明していないから、自宅から電話、ビデオ通話はしない。連絡をくれても出られない可能性があるから、それは理解してくれ」

『分かった。早く香澄を抱き締めてあげなよ。俺たちもミサトが心配だから、札幌の護衛に連絡しとく』

 アロイスの言葉を聞いて、佑も「そうしたほうがいい」と頷いた。

 それから通信を切り、同じホテルに泊まっている河野と、小山内、呉代ペアに連絡をした。

 緊急の用事があるから、すぐ部屋に来てほしいと伝えると、間もなく三人が集まる。
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