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第二十部・同窓会 編

思ってもみない佑の一面

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「美智瑠ちゃんは外交的な子だった。休みの時は『デートしたいのに、家でゴロゴロしててつまらない』って言ってたな。御劔ってあんな感じだから、テーマパークとか得意じゃないんだよ。たまに行くぐらいなら楽しく付き合えるけど、年に何回も行くタイプじゃない。そもそもあいつ、有名になる前から人混みが苦手だったし」

 彼の話を聞き、納得した香澄はうんうんと頷いた。

「あー……、何か分かります。私も旅行やテーマパークは、たまに行くから楽しめるタイプです。間をあけずに何回も行くのは、ちょっと苦痛です。旅行やテーマパークに頻繁に行っている人を否定してるんじゃなくて、私は一回行くと次に『行こう』ってなるまでのチャージ期間が長いんだと思います」

 そう言うと、勇斗は頷いた。

「御劔もそういうタイプだよ。でも美智瑠ちゃんは違っていて、会社帰りにどこか寄って食事や飲みに行きたがったり、毎日会社で顔を合わせてるけど、休日は別でデートをしたがる子だった。多分そういう所が合わなかったんだろうな」

 理解した香澄は、小さく頷いた。

「御劔は美智瑠ちゃんといると、自分が面倒くさがりに感じたみたいで、常に申し訳なさを抱いてた。友達だと『じゃあ、そのうち』みたいな感じでいいけど、美智瑠ちゃんはもっと二人きりの時間を濃密に過ごしたかったんだろうな」

 佑から美智瑠の話を聞き、彼が罪悪感を抱いていたのは知っていた。

 けれど二人を客観的に捉える人の目線からは、また違った事実が見えてきた。

 そして香澄自身、顔も知らない美智瑠に嫉妬していた部分はあるが、まだまだ知らない事が多いと再認識した。

(私と美智瑠さん、どっちが佑さんを愛しているか……じゃなくて、根本的な相性の問題もあったんだな。確かに私と彼女とでは性格がまったく違うっぽいし、比べるだけ無駄なのかも)

 考えていると、勇斗がニカッと笑った。

「前置きが長くなったけど、香澄ちゃんって御劔の秘書をしてるとか、立ち位置が似てたから、つい美智瑠ちゃんと比べてしまったんだ。……で、改めて『違うよな』って思った、って話。でも気分悪かったろ。ごめんね」

「いえ。『聞きたい』って言ったのは私ですし、お気になさらず」

 謝られ、香澄はプルプルと首を横に振る。

「ありがと。……御劔さ、美智瑠ちゃんで失敗……っていうかしたから、似たタイプにはいかないと思ってたんだよね。だけどあいつの性格を考えると、引っ張っていくタイプより、やっぱり一緒にいて和む感じが好きなんだなーって分かったよ。正直、香澄ちゃんの話を聞いて『どうなるかな?』って思ってたけど、なんか納得したかな」

「そうですか?」

 香澄は嬉しくなって、思わず微笑む。

「うん。何て言うか安定感があるかな。普通に感情の上下はあるけど、根が強いっていうか。たとえば御劔が凄い失敗をしたとしても、幻滅せずに笑い飛ばして、一緒に乗り越えていくタイプかな? って思った」

 褒められて、香澄は照れ笑いした。

「いやぁ……そんな過大評価されても、困っちゃうんですけど……。私、ほんっとうにフツーですから。それに安定してないです」

「そう言うけど、人間〝普通〟が最強だからね? 御劔を見てごらん? あいつ、一人で何でもできるし、経営手腕も凄いけど、ハッキリ言って人付き合いに向いてないね」

「え? そうですか?」

 そうは思わなかったので、香澄は目を瞬かせる。

「ごく一部の人間にしか心を開かない、ロンリーウルフだよ。他はぜーんぶ〝その他大勢〟で、平等に〝価値があって無価値〟と思ってる。俺らは付き合いが長いから、あいつが心を閉ざした時の笑顔が分かるんだよね」

 思ってもみない佑の一面を知り、香澄は驚く。

「そんな笑い方するんですか? あぁー……、アロイスさん達といる時のあれ、そうなのかな?」

 香澄は双子を前にした時の佑を思いだしたが、勇斗は首を横に振って否定する。

「双子の従兄を相手にしてる時なら、違うと思うよ。御劔って男連中といるとブスッとして、いじられやすいけど、あいつが愛想悪くしてる相手って、心を開いてる相手なんだ。不機嫌にしていても許される人って感じかな。そうじゃない相手には、笑顔一択か、感情がなくなる感じかな。笑顔じゃなくなる時って、相手が相当やらかした時だけど」

「ほぉー、そうなんですね」

 頷いた時、二人は自動販売機前に着き、勇斗がブラックコーヒーを買う。

「香澄ちゃん、何飲む? ご馳走するよ」

「ありがとうございます。じゃあ、ちょっと高いですけどお茶いいですか?」

「たった数十円を何言ってんの」

 勇斗はケラケラ笑い、香澄のお茶を買ってくれる。

 それからまた座っていたブロックに戻り、勇斗の話を聞きながらお茶を飲んだ。



**



 いっぽうバーでは、洸が真澄に相談があるといって二人でカウンターに向かい、佑は透子と二人でテーブル席で話していた。

 そうなるまでは真澄がシガーを楽しんでいたので、佑も少し付き合って話をしていた。

 普段、佑は煙草を吸わないが、たまに上質のシガーを楽しむ程度なら良しとしている。

 社交の場でシガーが話題になる事もあり、体験しておくと会話が弾む事もあるからだ。

 何かにおいてまったくの無知よりは、多少嗜む程度でも知識があると興味を持ってもらえる。

 佑にそう教えたのはガブリエルだ。
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