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第二十部・同窓会 編
勇斗が話す佑
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「あいつすっごいモテたんだよね。今でも芸能人並みの知名度だし、学生時代よりハンパないファンがついてるだろうけど」
「そうですね」
「まぁ、学生時代のモテる伝説なんてたかが知れてるけど、あいつは夢を叶えて大物になっただろ? 友達として誇らしいけど、変な奴に騙されたり、ハニトラされないか心配だったんだよ」
「うん……。何か、分かる気がします」
仮に香澄の友達が芸能人になったとして、環境を心配するのは当然な気がする。
話を聞きながら、勇斗は少しチャラい印象があったが、佑の事を大切に思っているのだと知って安心した。
「学生時代は女子の集団が馬鹿みたいな協定とか作るだろ? その中で何かあったとしても、〝学校内で起こった子供がやった事〟で済むと思うんだ」
香澄は無言で頷く。
「俺も社会人になって色んな事を知った。いつまでも学生気分じゃいられないとか、ミスは自分一人のものじゃないとか、色々。そんな中、学生時代から起業した御劔は、全部自分で責任を取らないといけないだろ? 会社が守ってくれるとか、上司や先輩が教えてくれるとか、一切ない」
また香澄は頷く。
「最初は御劔が構想を練って、ITに強い真澄が友達と一緒にアプリを作って……が始まりだっけ。それで御劔はもともと興味のあったデザインを使って、ミシン一つでガンガンオリジナルの服を作ってった。テナントを借りてそこで販売するところから初めて、少し経つとどっかから資金持ってきて、どでかい事をやり始めてすっげぇビックリした。正直、『雇ってくれ』って思った事、何度もあるよ」
佑の事を話す勇斗は、とても楽しそうだ。
そんな彼を見て、香澄までつい笑顔になる。
「でも一応俺なりにプライドがあった。最初から一緒にやってた真澄なら別だけど、羽振りがよさそうだから会社に入れてくれなんて、かっこ悪くてさ。だから俺は俺で、自分が選んだ道を頑張ろうと思った。あいつがビッグになるなら、その友達として恥ずかしくない男になりたいって」
勇斗は前方を見ながら笑い、手持ち無沙汰に指の関節をポキポキ鳴らしている。
「凄く素敵だと思います。佑さんも、羽原さんのようなお友達がいて、きっと誇らしいと思います」
「そっかな。ありがと」
勇斗は照れくさそうに笑い、話を続ける。
「仕事で失敗して、一度は辞めようかと思った時、御劔が迷いなく『困ったらいつでも言ってくれ』って言ってくれたのは、本当にありがたかったな。あいつ、まっすぐな目をして言うんだ。本当に〝親友が困ってるから無条件に助ける〟っていう感じで。そう言われて、『情けねー事言ってらんないな』って逆に活を入れられた気分になった。それから、くじけずに頑張ってる」
二人の絆を感じ、香澄は静かに微笑む。
「それぐらい、御劔は大切なダチなんだ。……だからあいつの会社が大きくなればなるほど、心配も増していった。色んなセキュリティは、金を掛ければ何とかなるかもしれないけど、人が関わる事だけはそうもいかない。実際あいつ……、前カノと駄目になった時にボロボロになった……だろ? 知ってる?」
美智瑠の事だと察し、香澄は「聞きました」と頷く。
「御劔って学生時代から女に対して一歩引いてたんだよ。『モテすぎゆえの悩みか?』ってムカついてた時期もあったけど、御劔を巡って女子たちが掴み合いの喧嘩したり、陰湿な事をしてるって聞いて『ヒエッ』ってなったね。モテるのは羨ましいけど、そういういざこざの責任を取れって言われたら無理ゲーだわ」
「そうですね……」
確かに、自分が原因で掴み合いの喧嘩が起こったなど聞いたら、どうしたらいいか分からないだろう。
「独立してからあいつは多忙の極みで、女を作るどころじゃなかった。たまに飲んでも楽しそうに仕事の話ばっかりしてて〝そういう時期〟なんだと思った。そのうち話に美智瑠ちゃんの名前が混じるようになって、何回か飲み会に連れてきた事もあった」
「……どんな人でした?」
気になって尋ねると、勇斗は心配しないでいいと言うように、首を横に振ってみせる。
「まー……、家庭的そうでいい子だとは思ったよ。でも……んー、御劔には悪いけど、ちょっと打算的っぽい所もあったかな。何て言うか、男ウケするポイントを押さえてる感じだった。あざといっていうのもまた違うし、俺たちに色目を使った訳じゃないんだけど、何となく『慣れてるな』っていうのは感じた。……御劔にはナイショね」
「あ……はい」
佑の口からは語られなかった美智瑠の一面を知り、香澄はドキッとする。
「会社では御劔の秘書っぽい事をして、私生活でも支えていて、彼女としてよくやってたんじゃないかな。いつかの幸せ……結婚して大邸宅に住んで、Chief Everyはますます大きくなって……っていうのに備えて、あの時から色々我慢していた事もあったんだと思う」
「我慢……ですか」
心当たりはある気がするが、一応尋ねてみる。
「そうですね」
「まぁ、学生時代のモテる伝説なんてたかが知れてるけど、あいつは夢を叶えて大物になっただろ? 友達として誇らしいけど、変な奴に騙されたり、ハニトラされないか心配だったんだよ」
「うん……。何か、分かる気がします」
仮に香澄の友達が芸能人になったとして、環境を心配するのは当然な気がする。
話を聞きながら、勇斗は少しチャラい印象があったが、佑の事を大切に思っているのだと知って安心した。
「学生時代は女子の集団が馬鹿みたいな協定とか作るだろ? その中で何かあったとしても、〝学校内で起こった子供がやった事〟で済むと思うんだ」
香澄は無言で頷く。
「俺も社会人になって色んな事を知った。いつまでも学生気分じゃいられないとか、ミスは自分一人のものじゃないとか、色々。そんな中、学生時代から起業した御劔は、全部自分で責任を取らないといけないだろ? 会社が守ってくれるとか、上司や先輩が教えてくれるとか、一切ない」
また香澄は頷く。
「最初は御劔が構想を練って、ITに強い真澄が友達と一緒にアプリを作って……が始まりだっけ。それで御劔はもともと興味のあったデザインを使って、ミシン一つでガンガンオリジナルの服を作ってった。テナントを借りてそこで販売するところから初めて、少し経つとどっかから資金持ってきて、どでかい事をやり始めてすっげぇビックリした。正直、『雇ってくれ』って思った事、何度もあるよ」
佑の事を話す勇斗は、とても楽しそうだ。
そんな彼を見て、香澄までつい笑顔になる。
「でも一応俺なりにプライドがあった。最初から一緒にやってた真澄なら別だけど、羽振りがよさそうだから会社に入れてくれなんて、かっこ悪くてさ。だから俺は俺で、自分が選んだ道を頑張ろうと思った。あいつがビッグになるなら、その友達として恥ずかしくない男になりたいって」
勇斗は前方を見ながら笑い、手持ち無沙汰に指の関節をポキポキ鳴らしている。
「凄く素敵だと思います。佑さんも、羽原さんのようなお友達がいて、きっと誇らしいと思います」
「そっかな。ありがと」
勇斗は照れくさそうに笑い、話を続ける。
「仕事で失敗して、一度は辞めようかと思った時、御劔が迷いなく『困ったらいつでも言ってくれ』って言ってくれたのは、本当にありがたかったな。あいつ、まっすぐな目をして言うんだ。本当に〝親友が困ってるから無条件に助ける〟っていう感じで。そう言われて、『情けねー事言ってらんないな』って逆に活を入れられた気分になった。それから、くじけずに頑張ってる」
二人の絆を感じ、香澄は静かに微笑む。
「それぐらい、御劔は大切なダチなんだ。……だからあいつの会社が大きくなればなるほど、心配も増していった。色んなセキュリティは、金を掛ければ何とかなるかもしれないけど、人が関わる事だけはそうもいかない。実際あいつ……、前カノと駄目になった時にボロボロになった……だろ? 知ってる?」
美智瑠の事だと察し、香澄は「聞きました」と頷く。
「御劔って学生時代から女に対して一歩引いてたんだよ。『モテすぎゆえの悩みか?』ってムカついてた時期もあったけど、御劔を巡って女子たちが掴み合いの喧嘩したり、陰湿な事をしてるって聞いて『ヒエッ』ってなったね。モテるのは羨ましいけど、そういういざこざの責任を取れって言われたら無理ゲーだわ」
「そうですね……」
確かに、自分が原因で掴み合いの喧嘩が起こったなど聞いたら、どうしたらいいか分からないだろう。
「独立してからあいつは多忙の極みで、女を作るどころじゃなかった。たまに飲んでも楽しそうに仕事の話ばっかりしてて〝そういう時期〟なんだと思った。そのうち話に美智瑠ちゃんの名前が混じるようになって、何回か飲み会に連れてきた事もあった」
「……どんな人でした?」
気になって尋ねると、勇斗は心配しないでいいと言うように、首を横に振ってみせる。
「まー……、家庭的そうでいい子だとは思ったよ。でも……んー、御劔には悪いけど、ちょっと打算的っぽい所もあったかな。何て言うか、男ウケするポイントを押さえてる感じだった。あざといっていうのもまた違うし、俺たちに色目を使った訳じゃないんだけど、何となく『慣れてるな』っていうのは感じた。……御劔にはナイショね」
「あ……はい」
佑の口からは語られなかった美智瑠の一面を知り、香澄はドキッとする。
「会社では御劔の秘書っぽい事をして、私生活でも支えていて、彼女としてよくやってたんじゃないかな。いつかの幸せ……結婚して大邸宅に住んで、Chief Everyはますます大きくなって……っていうのに備えて、あの時から色々我慢していた事もあったんだと思う」
「我慢……ですか」
心当たりはある気がするが、一応尋ねてみる。
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