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第二十部・同窓会 編

二人で外の空気吸いに行く?

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「佑さん、来た事あるの?」

 香澄が尋ねると、佑は「真澄と何度かね」と微笑んだ。

「わ、わー……なんか、すみません。二次会でこんな凄い店に来ると思ってなかったから、ドレスコードとか合ってなかったらすみません」

 ニットにジャケットという姿の洸が謝ると、オーナーは「いいえ」と笑った。

「細かい事はお気にせず。どうぞ居心地の良さを感じてください」

「楽しませて頂きます」

 佑がよそいきの笑みを浮かべると、オーナーは会釈をして戻っていった。

「御劔くん、すっかりよそ行きの笑い方が板についてるよね」

 透子が茶化し、佑は「そうかな」と苦笑いする。

「香澄ちゃん、シガー体験してみる?」

 真澄に誘われ、香澄は「えっ?」とうろたえる。

 佑から違いは教えられたものの、香澄の感覚では煙草と同義だ。

 健康に良くないイメージがあるし、煙の匂いがあまり好きではないので、今まで煙草とは無縁で生きてきた。

(高級な所のだから、普通の煙草とは違うのかな? 肺まで吸わなきゃセーフ?)

 よく分からずにグルグル考えていると、佑が香澄の手を握ってきた。

「抵抗があるなら無理しなくていいよ」

「……ん、うん。じゃあ、やめときます」

 真澄にペコリと頭を下げたが、彼は「気にしなくていいよ。逆に悪かったね」とカラリと笑った。

 やがて酒が運ばれてきたあとに乾杯し、また続きのおしゃべりを楽しみ始める。

 場所が変わっただけで面子はほぼそのままなので、話す事も特に変わった訳ではない。

 けれど場を意識してか、全員声量は抑えめになり、じっくりと語る会話が多くなった。

(う……。おしっこ)

 アルコールもチェイサーも飲んで手洗いが近くなってしまった香澄は、「ちょっと行って来ます」と断って席を立った。

 スタッフに場所を聞いて手洗いに向かい、用を済ませてから真っ赤になった自分の顔を鏡で見る。

(はぁ……。すぐ顔赤くなるのやめたいな)

 そう思うものの、体質なので仕方がない。

 席に戻って飲み食いすればリップは落ちるが、それでも……と思ってリップを塗り直した。

 スマホを確認すると、麻衣から連絡が入っていた。

『ミッションコンプリート! マティアスさん、無事にうちの家族に受け入れられたみたい。午前中に挨拶してたんだけど、お昼を一緒に食べて、それからあとも何だかんだ話が弾んで、実家で夕ご飯食べたよ。お父さんが泊まってけってうるさかったけど、引き上げてきた(笑)』

(よし!)

 香澄は親友からの報告を見て、ガッツポーズを取る。

『おめでとう! 今ちょっと飲んでるから詳しくは明日! でもおめでとう!』

 短いメッセージを送ったあと、香澄はスタンプをポンポンポンと連続で送る。

「えっへへ……」

 満面の笑みを浮かべて手洗いを出た時、タイミング良く勇斗も男性側から出てきた。

「香澄ちゃん、大丈夫? 顔真っ赤だよ」

「羽原さんだって顔赤いじゃないですか」

 嬉しさのあまりニコニコして言葉を返すと、彼は「おや?」と楽しそうに口角を上げる。

「じゃあ、ちょっと二人で外の空気吸いに行く?」

「そうですね」

 スタッフに一言伝えてから、香澄は勇斗と外に出る事にした。

「あぁ、空気が新鮮! ……なんて、東京のど真ん中だけど。香澄ちゃん、北海道なんだよね? 空気美味しいでしょ」

 ビルの近くには店があり、その前にブロックがあったので、少し座らせてもらう事にした。

「うーん……。人口密度が桁違いですからね……」

 北海道から来たと言うと、よく空気が綺麗とか、食べ物や水が美味しいでしょ、など言われる。

 あまり褒められると、つい「そんな事ないですよ」と言いたくなるが、下手に謙遜すると逆に失礼な事もあるので、角が立たない言い方をするようにしている。

 お国自慢したい気持ちは勿論あるが、話している人が住んでいる街を下げて言う事はしたくない。

「御劔って付き合うまでに何度か札幌に行ったの? まぁ、実家に挨拶とかはしてるんだろうけど」

「そうですね。何度も札幌に来てくれています。来週末は私の同窓会があるので、その時も付いていくと言っています」

「あはは、過保護だな」

 勇斗は笑い、何とはなしに顎をさすりながら言った。

「俺さ、内心ビックリしてる訳」

「はい?」
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