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第二十部・同窓会 編
〝御劔伝説〟詳細
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けれど彼は「香澄にあげたんだから、一人で美味しく食べて」と言ってくれた。
ちまちまと食べては美味しさに打ち震え、食べ終わったあとのボックスは勿体なくて捨てられずに小物入れになっている。
それを勇斗に見透かされた気がして、香澄は一瞬ドキッとしてしまった。
「刺身、いただきます」
佑は勇斗の言葉をサラッと無視し、カツオのたたきに箸を伸ばす。
「かわいくねー男だな。香澄ちゃん、こいつ家でもいっつもこんな感じなの? 蛙のツラに小便っていうか」
優斗の言葉を聞いて、花が「食事中だから気を付けて」とテーブルの下で彼の足を蹴った。
「あ、あぁえっと……。んー。何を言っても響かないのは……そうかもです」
(そう言えば私がどれだけ怒っても臍を曲げても、佑さんはちっともへこまないな……)
むしろ香澄が怒れば怒るほど喜び、『この人大丈夫かな……』と心配してしまうほどだ。
「打たれ強いんでしょうか」
「それはあるかもね。こいつ、高校時代から『心臓に毛が生えてるのか』って思うところはあったし」
洸はジョッキのビールを呷りつつ頷く。
「まぁ、色々妬まれるから強くならざるを得なかったのは分かる。でもあんまり弱音を吐いてくれないし、友達やっててつまんねーんだよな」
ハムカツに齧り付いた勇斗の言葉に、透子が呆れる。
「あんた、弱音が聞きたくて友達やってんの?」
「そうじゃないけど、こいつ何をやらせても完璧じゃん? せめて弱音を吐くところでも見られたら、『あ、人間だったんだ』って安心できるっていうか」
「あー、それ分かる気がする。御劔が泣いたところも見た事ないよな」
(泣いた……のは、見たっけ。見てなかったっけ……? あれ?)
どこかで見たような気がするが、明確に覚えていない気もする。
泣きそうなぐらい愛しそうな顔は、何度も見た事がある。
けれど佑が悲しみや悔しさで涙を流す姿は、あまり想像できない。
その時、トン、と足に佑の足が当たった。
焼きたての椎茸をハフハフと囓っていた香澄は、「ん?」と顔を上げる。
ビールを飲み終えておかわりにワインを頼んだ佑は、香澄を見つめてにっこり笑ってくる。
(うう……? う……)
香澄は佑が笑っているのがどういう意味なのか分からず、椎茸をモグモグしつつ首を傾げた。
「ねぇ、香澄ちゃん。こいつの弱みってある?」
(これか!)
洸に尋ねられ、香澄は今の佑の笑顔にピンとくる。
「ん、うーん……。特に……見当たりませんけど」
「俺の弱みは、香澄だけだよ」
サラッと佑がいつものノリで言い、香澄は思わず彼を睨む。
「そこをもうちょっとさぁ……。実は足が臭いとか、寝ながらケツ掻くとか」
「それはあんたでしょ」
花に突っ込まれ、勇斗は苦笑いをしてビールの残りを飲む。
「でも御劔くんって欠点が想像できないよね。スタイル抜群、健康にも気を遣っていそうだし、その他ケアも全部お金掛けてやってるんでしょ? 性格もドライなところを除いて、欠点らしい欠点もないし」
透子はマグロの刺身を箸で取り、つまらなさそうに言う。
(……エッチがしつこいです。おまけに嫉妬深いです。すんごく変態です。私が嫌がる事を面白がってやる、小学生男子みたいな所もあります。……あと心が童貞)
香澄はカシスオレンジを飲みながら心の中で呟くが、決して口に出すまいと決意する。
あとで痛い目を見るのは自分だ。
そのあとも五人は佑をいじりつつ香澄に質問をし、香澄は守秘義務を守りながらお茶を濁した。
香澄も学生時代の佑の事を質問したが、返ってくる答えは少女漫画の世界のような話ばかりだ。
「盛ってません?」と聞いたが、どうやら〝本当にあった御劔伝説〟らしい。
教育実習生の女性が佑に連絡先を聞いたなど、思わず引くレベルだ。
頭が良くていつも学年トップにいるとか、球技大会、体育祭をやらせると、アイドルのライブ並みの歓声が上がり、女子が泣き出すなども。
修学旅行では佑と同じ班になりたがる女子たちで争いが起こり、結局教師に『いつものグループで班を作ってくれ』と頼まれたらしい。
水飲み場で佑が水を飲めば、同じ蛇口から水を飲みたがる女子が集まり、図書館で佑が借りた本が返却されると争奪戦になり、図書委員の女子が泣きながら「辞めたい」と教師に言ったとか。
「こいつに迷惑が掛かる事は〝協定〟でしないようになってるっぽいけど、間接的な事についてはその限りではない、みたいな感じだったよな」
話しているうちに全員いい感じに酒が回り、勇斗は顔を真っ赤にしている。
ちまちまと食べては美味しさに打ち震え、食べ終わったあとのボックスは勿体なくて捨てられずに小物入れになっている。
それを勇斗に見透かされた気がして、香澄は一瞬ドキッとしてしまった。
「刺身、いただきます」
佑は勇斗の言葉をサラッと無視し、カツオのたたきに箸を伸ばす。
「かわいくねー男だな。香澄ちゃん、こいつ家でもいっつもこんな感じなの? 蛙のツラに小便っていうか」
優斗の言葉を聞いて、花が「食事中だから気を付けて」とテーブルの下で彼の足を蹴った。
「あ、あぁえっと……。んー。何を言っても響かないのは……そうかもです」
(そう言えば私がどれだけ怒っても臍を曲げても、佑さんはちっともへこまないな……)
むしろ香澄が怒れば怒るほど喜び、『この人大丈夫かな……』と心配してしまうほどだ。
「打たれ強いんでしょうか」
「それはあるかもね。こいつ、高校時代から『心臓に毛が生えてるのか』って思うところはあったし」
洸はジョッキのビールを呷りつつ頷く。
「まぁ、色々妬まれるから強くならざるを得なかったのは分かる。でもあんまり弱音を吐いてくれないし、友達やっててつまんねーんだよな」
ハムカツに齧り付いた勇斗の言葉に、透子が呆れる。
「あんた、弱音が聞きたくて友達やってんの?」
「そうじゃないけど、こいつ何をやらせても完璧じゃん? せめて弱音を吐くところでも見られたら、『あ、人間だったんだ』って安心できるっていうか」
「あー、それ分かる気がする。御劔が泣いたところも見た事ないよな」
(泣いた……のは、見たっけ。見てなかったっけ……? あれ?)
どこかで見たような気がするが、明確に覚えていない気もする。
泣きそうなぐらい愛しそうな顔は、何度も見た事がある。
けれど佑が悲しみや悔しさで涙を流す姿は、あまり想像できない。
その時、トン、と足に佑の足が当たった。
焼きたての椎茸をハフハフと囓っていた香澄は、「ん?」と顔を上げる。
ビールを飲み終えておかわりにワインを頼んだ佑は、香澄を見つめてにっこり笑ってくる。
(うう……? う……)
香澄は佑が笑っているのがどういう意味なのか分からず、椎茸をモグモグしつつ首を傾げた。
「ねぇ、香澄ちゃん。こいつの弱みってある?」
(これか!)
洸に尋ねられ、香澄は今の佑の笑顔にピンとくる。
「ん、うーん……。特に……見当たりませんけど」
「俺の弱みは、香澄だけだよ」
サラッと佑がいつものノリで言い、香澄は思わず彼を睨む。
「そこをもうちょっとさぁ……。実は足が臭いとか、寝ながらケツ掻くとか」
「それはあんたでしょ」
花に突っ込まれ、勇斗は苦笑いをしてビールの残りを飲む。
「でも御劔くんって欠点が想像できないよね。スタイル抜群、健康にも気を遣っていそうだし、その他ケアも全部お金掛けてやってるんでしょ? 性格もドライなところを除いて、欠点らしい欠点もないし」
透子はマグロの刺身を箸で取り、つまらなさそうに言う。
(……エッチがしつこいです。おまけに嫉妬深いです。すんごく変態です。私が嫌がる事を面白がってやる、小学生男子みたいな所もあります。……あと心が童貞)
香澄はカシスオレンジを飲みながら心の中で呟くが、決して口に出すまいと決意する。
あとで痛い目を見るのは自分だ。
そのあとも五人は佑をいじりつつ香澄に質問をし、香澄は守秘義務を守りながらお茶を濁した。
香澄も学生時代の佑の事を質問したが、返ってくる答えは少女漫画の世界のような話ばかりだ。
「盛ってません?」と聞いたが、どうやら〝本当にあった御劔伝説〟らしい。
教育実習生の女性が佑に連絡先を聞いたなど、思わず引くレベルだ。
頭が良くていつも学年トップにいるとか、球技大会、体育祭をやらせると、アイドルのライブ並みの歓声が上がり、女子が泣き出すなども。
修学旅行では佑と同じ班になりたがる女子たちで争いが起こり、結局教師に『いつものグループで班を作ってくれ』と頼まれたらしい。
水飲み場で佑が水を飲めば、同じ蛇口から水を飲みたがる女子が集まり、図書館で佑が借りた本が返却されると争奪戦になり、図書委員の女子が泣きながら「辞めたい」と教師に言ったとか。
「こいつに迷惑が掛かる事は〝協定〟でしないようになってるっぽいけど、間接的な事についてはその限りではない、みたいな感じだったよな」
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