1,289 / 1,548
第二十部・同窓会 編
佑の同級生
しおりを挟む
同窓会の一次会は代官山で行われるらしく、近くまで小金井に送ってもらう事になった。
車に乗り、暗くなった白金台を進んでいく。
ものの十分で目的地に着いたあと、二人は車から降りて雑踏に混じった。
護衛も一緒で、私服姿の彼らは一定の距離を空けて歩いている。
指定された店は、代官山駅から徒歩五分にある居酒屋だ。
店内は落ち着いた色調で統一され、黒い椅子にライトブラウンの木製テーブルが並んでいる。
「あー、御劔来た。こっち」
いち早く佑を見つけたのは真澄だ。
彼はビジネスパートナーだが、学生時代からの親友でもある。
「香澄ちゃん、こんばんは」
「こんばんは。真澄さん」
メンバーは真澄の他に男性が二人、女性が二人いる。
佑と香澄を入れれば七人だ。
全員集まっていたので、香澄はまず挨拶をする事にした。
「あの、初めまして。赤松香澄と申します。今回は部外者なのにお邪魔してしまってすみません。隅っこで大人しくしていますので、皆さんお好きに盛り上がってください」
ペコリと頭を下げると、「可愛い~!」と知らない男性から声が上がった。
「御劔くん、この子が例の婚約者? 可愛いね。お肌すべすべ……!」
女性の一人が言い、「ここおいでよ」とソファ席の座面を軽く叩く。
「お邪魔します」
香澄は会釈をしてから席に座り、佑はその向かいに座った。
「とりあえず生でいい? 女子陣は?」
真澄が言うと、佑は「俺はビールでいいよ」と言って香澄にドリンクメニューを渡す。
香澄は隣のテーブルの料理を気にしていたが、慌ててドリンクメニューに目を落とした。
「えっと、じゃあカシスオレンジ」
「食べたいフードメニューがあったら、何でも頼んでいいよ。香澄の分は俺が払うから」
佑は香澄の食いしん坊を承知していて、ニコニコ笑ってフードメニューを勧めてくる。
「御劔、ダダ甘だな~。高校時代は女子に塩対応だったのに」
男性の一人が目を剥いて驚き、もう一人もやや引いた顔をしている。
「お前らが最近の御劔を知らないだけだろ。こいつ、香澄ちゃんと出会ってからずっとこうだぞ」
真澄が言い、他の四人は「えぇ~?」と意外そうに佑を見る。
香澄は学生時代の佑を気にして、小さく挙手すると質問した。
「あの、佑さんの学生時代って、彼女……とかどういう感じだったんですか?」
「おっ? 香澄ちゃん、それ聞いちゃう?」
隣にいた女性が喜び、佑は呆れた顔をする。
「その前に、軽く自己紹介してもらっていいか? 香澄は名前を知らないんだから」
佑が言い、真澄を除く四人が「ああ」という顔をする。
「じゃあ、俺から。羽原勇斗。年齢は御劔と一緒だからいいよね? 仕事は外資系企業の営業やってます」
パリッとした爽やかな感じの彼から名刺を受け取り、香澄は会釈をして自分の名刺を差しだした。
外資系で働いているだけあってこなれた雰囲気があり、服装はシャツにニット、黒いテーパードパンツだが、すべてシンプルながら値段の高そうなアイテムばかりだ。
おまけに腕には高級時計があるので、割と羽振りがいいのだろう。
「優斗はまだ独身で、女の子を食い物にしてるから気を付けて」
真澄がニヤニヤしながらつけ加え、勇斗は「このやろ」と彼を睨んだ。
「俺は蟹江洸。小さいけど飲食店を経営してる。都内に居酒屋とかカフェとかあるから、今度御劔と一緒に来てよ。因みに奥さんと子供がいるよ」
洸も名刺とショップカードをくれ、香澄も名刺を渡す。
彼は人のいい雰囲気があり、さっぱりとしたベリーショートヘアに服装はゆったりとしたトレーナーにカーゴパンツと、カジュアルだ。
耳には大きめのゲージのボディピアスをしていて、勝手な印象ながらラップが好きそうだな……と感じてしまった。
次に同じ並びに座っている、奥の席の女性が微笑んだ。
「私は前島透子。しがないOL。そろそろお局って言われそうな独身です」
自虐を込めて笑った透子も名刺をくれ、香澄も渡す。
彼女は優しげな雰囲気の色白美人で、ストレートのロングへアが印象的だ。
飾らないナチュラルな綺麗さがあり、ツイードジャケットに白いブラウス、ベロア素材のスリットスカートを穿いていた。
「あたしは神谷花。旦那と子供がいるし、御劔くんの事は狙ってないから安心して。旦那が開業医で、病院で医療事務をしてる」
彼女はパーマの掛かったボブヘアで、可愛らしい顔立ちをしていた。
白いタートルネックニットに、パキッとした鮮やかなオレンジ色のフェイクレザーのスカートを穿いている。
香澄は花とも名刺交換をし、四枚集まった名刺を見てにっこり笑う。
「皆さん、宜しくお願い致します」
「よろしくー」と言い合っていると、飲み物が運ばれてきた。
「先に乾杯しちゃおう! じゃあ、全員お疲れ様!」
花が仕切り、中ジョッキを掲げる。
「お疲れさま」
全員が口々に「お疲れ様」を言い、手に持ったジョッキやグラスを合わせる。
佑は一番に香澄と乾杯してくれたので、何気なく嬉しかった。
話をする前に食べ物をオーダーする事にし、まず刺身盛り合わせを二皿頼んだ。
店内には居酒屋らしい手書きのメニューがあり、香澄は久しぶりの雰囲気にワクワクする。
車に乗り、暗くなった白金台を進んでいく。
ものの十分で目的地に着いたあと、二人は車から降りて雑踏に混じった。
護衛も一緒で、私服姿の彼らは一定の距離を空けて歩いている。
指定された店は、代官山駅から徒歩五分にある居酒屋だ。
店内は落ち着いた色調で統一され、黒い椅子にライトブラウンの木製テーブルが並んでいる。
「あー、御劔来た。こっち」
いち早く佑を見つけたのは真澄だ。
彼はビジネスパートナーだが、学生時代からの親友でもある。
「香澄ちゃん、こんばんは」
「こんばんは。真澄さん」
メンバーは真澄の他に男性が二人、女性が二人いる。
佑と香澄を入れれば七人だ。
全員集まっていたので、香澄はまず挨拶をする事にした。
「あの、初めまして。赤松香澄と申します。今回は部外者なのにお邪魔してしまってすみません。隅っこで大人しくしていますので、皆さんお好きに盛り上がってください」
ペコリと頭を下げると、「可愛い~!」と知らない男性から声が上がった。
「御劔くん、この子が例の婚約者? 可愛いね。お肌すべすべ……!」
女性の一人が言い、「ここおいでよ」とソファ席の座面を軽く叩く。
「お邪魔します」
香澄は会釈をしてから席に座り、佑はその向かいに座った。
「とりあえず生でいい? 女子陣は?」
真澄が言うと、佑は「俺はビールでいいよ」と言って香澄にドリンクメニューを渡す。
香澄は隣のテーブルの料理を気にしていたが、慌ててドリンクメニューに目を落とした。
「えっと、じゃあカシスオレンジ」
「食べたいフードメニューがあったら、何でも頼んでいいよ。香澄の分は俺が払うから」
佑は香澄の食いしん坊を承知していて、ニコニコ笑ってフードメニューを勧めてくる。
「御劔、ダダ甘だな~。高校時代は女子に塩対応だったのに」
男性の一人が目を剥いて驚き、もう一人もやや引いた顔をしている。
「お前らが最近の御劔を知らないだけだろ。こいつ、香澄ちゃんと出会ってからずっとこうだぞ」
真澄が言い、他の四人は「えぇ~?」と意外そうに佑を見る。
香澄は学生時代の佑を気にして、小さく挙手すると質問した。
「あの、佑さんの学生時代って、彼女……とかどういう感じだったんですか?」
「おっ? 香澄ちゃん、それ聞いちゃう?」
隣にいた女性が喜び、佑は呆れた顔をする。
「その前に、軽く自己紹介してもらっていいか? 香澄は名前を知らないんだから」
佑が言い、真澄を除く四人が「ああ」という顔をする。
「じゃあ、俺から。羽原勇斗。年齢は御劔と一緒だからいいよね? 仕事は外資系企業の営業やってます」
パリッとした爽やかな感じの彼から名刺を受け取り、香澄は会釈をして自分の名刺を差しだした。
外資系で働いているだけあってこなれた雰囲気があり、服装はシャツにニット、黒いテーパードパンツだが、すべてシンプルながら値段の高そうなアイテムばかりだ。
おまけに腕には高級時計があるので、割と羽振りがいいのだろう。
「優斗はまだ独身で、女の子を食い物にしてるから気を付けて」
真澄がニヤニヤしながらつけ加え、勇斗は「このやろ」と彼を睨んだ。
「俺は蟹江洸。小さいけど飲食店を経営してる。都内に居酒屋とかカフェとかあるから、今度御劔と一緒に来てよ。因みに奥さんと子供がいるよ」
洸も名刺とショップカードをくれ、香澄も名刺を渡す。
彼は人のいい雰囲気があり、さっぱりとしたベリーショートヘアに服装はゆったりとしたトレーナーにカーゴパンツと、カジュアルだ。
耳には大きめのゲージのボディピアスをしていて、勝手な印象ながらラップが好きそうだな……と感じてしまった。
次に同じ並びに座っている、奥の席の女性が微笑んだ。
「私は前島透子。しがないOL。そろそろお局って言われそうな独身です」
自虐を込めて笑った透子も名刺をくれ、香澄も渡す。
彼女は優しげな雰囲気の色白美人で、ストレートのロングへアが印象的だ。
飾らないナチュラルな綺麗さがあり、ツイードジャケットに白いブラウス、ベロア素材のスリットスカートを穿いていた。
「あたしは神谷花。旦那と子供がいるし、御劔くんの事は狙ってないから安心して。旦那が開業医で、病院で医療事務をしてる」
彼女はパーマの掛かったボブヘアで、可愛らしい顔立ちをしていた。
白いタートルネックニットに、パキッとした鮮やかなオレンジ色のフェイクレザーのスカートを穿いている。
香澄は花とも名刺交換をし、四枚集まった名刺を見てにっこり笑う。
「皆さん、宜しくお願い致します」
「よろしくー」と言い合っていると、飲み物が運ばれてきた。
「先に乾杯しちゃおう! じゃあ、全員お疲れ様!」
花が仕切り、中ジョッキを掲げる。
「お疲れさま」
全員が口々に「お疲れ様」を言い、手に持ったジョッキやグラスを合わせる。
佑は一番に香澄と乾杯してくれたので、何気なく嬉しかった。
話をする前に食べ物をオーダーする事にし、まず刺身盛り合わせを二皿頼んだ。
店内には居酒屋らしい手書きのメニューがあり、香澄は久しぶりの雰囲気にワクワクする。
12
お気に入りに追加
2,544
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
『逃れられない淫らな三角関係』番外編 ヘルプラインを活用せよ!
臣桜
恋愛
『逃れられない淫らな三角関係』の番外編です。
やりとりのある特定の読者さまに向けた番外編(小冊子)です。
他にも色々あるのですが、差し障りのなさそうなものなので公開します。
(他の番外編は、リアルブランド名とかを出してしまっている配慮していないものなので、ここに載せるかは検討中)
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~
あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる