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第二十部・同窓会 編

佑の同級生

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 同窓会の一次会は代官山で行われるらしく、近くまで小金井に送ってもらう事になった。

 車に乗り、暗くなった白金台を進んでいく。

 ものの十分で目的地に着いたあと、二人は車から降りて雑踏に混じった。

 護衛も一緒で、私服姿の彼らは一定の距離を空けて歩いている。

 指定された店は、代官山駅から徒歩五分にある居酒屋だ。

 店内は落ち着いた色調で統一され、黒い椅子にライトブラウンの木製テーブルが並んでいる。

「あー、御劔来た。こっち」

 いち早く佑を見つけたのは真澄だ。

 彼はビジネスパートナーだが、学生時代からの親友でもある。

「香澄ちゃん、こんばんは」

「こんばんは。真澄さん」

 メンバーは真澄の他に男性が二人、女性が二人いる。

 佑と香澄を入れれば七人だ。

 全員集まっていたので、香澄はまず挨拶をする事にした。

「あの、初めまして。赤松香澄と申します。今回は部外者なのにお邪魔してしまってすみません。隅っこで大人しくしていますので、皆さんお好きに盛り上がってください」

 ペコリと頭を下げると、「可愛い~!」と知らない男性から声が上がった。

「御劔くん、この子が例の婚約者? 可愛いね。お肌すべすべ……!」

 女性の一人が言い、「ここおいでよ」とソファ席の座面を軽く叩く。

「お邪魔します」

 香澄は会釈をしてから席に座り、佑はその向かいに座った。

「とりあえず生でいい? 女子陣は?」

 真澄が言うと、佑は「俺はビールでいいよ」と言って香澄にドリンクメニューを渡す。

 香澄は隣のテーブルの料理を気にしていたが、慌ててドリンクメニューに目を落とした。

「えっと、じゃあカシスオレンジ」

「食べたいフードメニューがあったら、何でも頼んでいいよ。香澄の分は俺が払うから」

 佑は香澄の食いしん坊を承知していて、ニコニコ笑ってフードメニューを勧めてくる。

「御劔、ダダ甘だな~。高校時代は女子に塩対応だったのに」

 男性の一人が目を剥いて驚き、もう一人もやや引いた顔をしている。

「お前らが最近の御劔を知らないだけだろ。こいつ、香澄ちゃんと出会ってからずっとこうだぞ」

 真澄が言い、他の四人は「えぇ~?」と意外そうに佑を見る。

 香澄は学生時代の佑を気にして、小さく挙手すると質問した。

「あの、佑さんの学生時代って、彼女……とかどういう感じだったんですか?」

「おっ? 香澄ちゃん、それ聞いちゃう?」

 隣にいた女性が喜び、佑は呆れた顔をする。

「その前に、軽く自己紹介してもらっていいか? 香澄は名前を知らないんだから」

 佑が言い、真澄を除く四人が「ああ」という顔をする。

「じゃあ、俺から。羽原勇斗はばらゆうと。年齢は御劔と一緒だからいいよね? 仕事は外資系企業の営業やってます」

 パリッとした爽やかな感じの彼から名刺を受け取り、香澄は会釈をして自分の名刺を差しだした。

 外資系で働いているだけあってこなれた雰囲気があり、服装はシャツにニット、黒いテーパードパンツだが、すべてシンプルながら値段の高そうなアイテムばかりだ。

 おまけに腕には高級時計があるので、割と羽振りがいいのだろう。

「優斗はまだ独身で、女の子を食い物にしてるから気を付けて」

 真澄がニヤニヤしながらつけ加え、勇斗は「このやろ」と彼を睨んだ。

「俺は蟹江洸かにえこう。小さいけど飲食店を経営してる。都内に居酒屋とかカフェとかあるから、今度御劔と一緒に来てよ。因みに奥さんと子供がいるよ」

 洸も名刺とショップカードをくれ、香澄も名刺を渡す。

 彼は人のいい雰囲気があり、さっぱりとしたベリーショートヘアに服装はゆったりとしたトレーナーにカーゴパンツと、カジュアルだ。

 耳には大きめのゲージのボディピアスをしていて、勝手な印象ながらラップが好きそうだな……と感じてしまった。

 次に同じ並びに座っている、奥の席の女性が微笑んだ。

「私は前島透子まえじまとうこ。しがないOL。そろそろお局って言われそうな独身です」

 自虐を込めて笑った透子も名刺をくれ、香澄も渡す。

 彼女は優しげな雰囲気の色白美人で、ストレートのロングへアが印象的だ。

 飾らないナチュラルな綺麗さがあり、ツイードジャケットに白いブラウス、ベロア素材のスリットスカートを穿いていた。

「あたしは神谷花かみやはな。旦那と子供がいるし、御劔くんの事は狙ってないから安心して。旦那が開業医で、病院で医療事務をしてる」

 彼女はパーマの掛かったボブヘアで、可愛らしい顔立ちをしていた。

 白いタートルネックニットに、パキッとした鮮やかなオレンジ色のフェイクレザーのスカートを穿いている。

 香澄は花とも名刺交換をし、四枚集まった名刺を見てにっこり笑う。

「皆さん、宜しくお願い致します」

「よろしくー」と言い合っていると、飲み物が運ばれてきた。

「先に乾杯しちゃおう! じゃあ、全員お疲れ様!」

 花が仕切り、中ジョッキを掲げる。

「お疲れさま」

 全員が口々に「お疲れ様」を言い、手に持ったジョッキやグラスを合わせる。

 佑は一番に香澄と乾杯してくれたので、何気なく嬉しかった。

 話をする前に食べ物をオーダーする事にし、まず刺身盛り合わせを二皿頼んだ。

 店内には居酒屋らしい手書きのメニューがあり、香澄は久しぶりの雰囲気にワクワクする。
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