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第二十部・同窓会 編

「娘を宜しくお願いします」 ☆

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「いませんでした。学生時代にガールフレンドはいましたが、『面白くない男』と言われてフラれました。それ以降は元上司の関係で、白人女性を恋愛対象にみられず現在に至ります」

「……マティアスさんのご家族はどうなっていますか?」

 今度は父が問う。

「実母は病気で亡くなりました。父は僕と同じく秘書として働いていました。僕ともども解放されたあと、クラウザー社に入社しました。現在はパートナーに恵まれて新しい人生を歩んでいます。継母になる人は、健康で優しく良い人です」

 誰かが溜め息をついたのが聞こえ、居間が静まりかえる。

「妙な空気にしてすみません。この通り僕は曰く付きの男で、どれだけ金を持っていても〝トラウマ持ちで女に興味を持てない男〟です」

「……そんなあなたが、麻衣の事なら一人の女性として見られるんですか?」

 母が尋ね、マティアスはしっかり頷く。

「はい。外見や収入は問題ではありません。彼女が僕に心を開き、受け入れてくれた事に感動したんです。マイさんだけが僕を癒やしてくれます。勿論、慰めてほしいだけじゃありません。僕も彼女を幸せにしたい。これからの人生を一緒に歩んで、良い家庭を築きたいと思っています」

 またしばらく沈黙が落ちたあと、早苗が麻衣に問う。

「麻衣もマティアスさんと同じ気持ちなの?」

 彼女はこっくりと頷く。

「最初は、訳の分からない変な人だと思った。こんなイケメンに一途にまっすぐに『好きだ』って言われ続けて、感覚が変になっちゃった自覚はある。でもこの人は私を心底求めてくれているし、彼みたいな人はもう現れないと思ってる」

 キッパリと言い切ると、母が柔らかく笑った。

「ならいいんじゃない? お金や仕事とか上辺のものじゃなくて、もっと大切なものを当人同士が求め合っていると聞いて、私は安心したわ」

 母は吹っ切れた声で言い、信司も横でうんうんと頷いているが、父はまだ少し心配そうな顔をしている。

 マティアスが駄目押しするように深く頭を下げた。

「マイさんを僕にください。必ず幸せにします」

「わっ、私からもお願いします!」

 麻衣も慌てて頭を下げ、赤面する。

 よもや両親に、こうお願いする日がくると思っていなかった。

 しばらく沈黙があってから、父は息をつき「娘を宜しくお願いします」と言った。

「…………っ」

 麻衣は震える息を吸い、ゆっくり吐く。

 自分には縁遠いと思っていた結婚が、とうとう現実的な幸せになった。

 斜に構え、「恋人なんていらない、結婚なんてどうでもいい」と思っていたが、本当は人並みの幸せを欲していた。

 今、ようやくそれを手に入れられたのだ。

 泣いてしまいそうになった麻衣は、唇を歪め、目を見開いて涙を引っ込ませようとする。

 そんな娘を見て、母が柔らかく笑った。

「麻衣、好きな人ができて良かったねぇ。しかもこんなに素敵な人。お母さん嬉しい」

 母の声を聞き、麻衣は頭を下げたままポトリと涙を零した。

「マティアスくん、ドイツの美味しいビールの銘柄を知ってるか?」

 父は一気に打ち解け、別の話題を振る。

「ビールの風味によって色々ありますね」

 男同士の話題に信司が混じったあと、麻衣は全員に気付かれないように横を向いてべそべそと泣き始めた。

 そんな娘を見て、母が笑いながら言った。

「お腹すいてない? 実は近くのお店を予約してるから、時間になったら食べに行こうね」

「うん……っ」

 麻衣は泣き笑いの顔を上げ、母に笑いかける。

 張り詰めていた岩本家の居間は、一気に明るいに空気になった。

 その後、全員で中華料理店に行き、好きな物を好きなだけ頼み、飲んで騒いでの宴会となった。



**



「ン……、ぁ、あ……っ、ん……、ぅ……」

 香澄は佑の寝室で全裸にされ、長いキスが終わったあとに執拗に胸を舐められながら、蜜壷を指で探られていた。

 いつもなら佑に触れられ、愛しさ一杯になっていた。

 だが今は気もそぞろだ。

 それは彼女の体にも如実に表れ、いつもならキスだけで濡れていた場所は、少し潤んだだけに留まっていた。

「……体調悪いか?」

 佑が心配そうに尋ね、香澄はギクッとしながらも平静を装う。

「えっ? ど、どうして?」

 佑は「濡れが悪い」と言えば傷つけると思ったからか、少し黙る。
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