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第十九部・マティアスと麻衣 編
香澄は麺が好きだよなぁ
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「今すぐご飯は、ちょっとキツイ」
「じゃあ、もう少ししてからにしよう。食べたいものは?」
「……うう……。ラーメンかピザの宅配」
「おっ、がっつりきたな」
「やだ?」
「いいよ。何ならサイドメニューも思う存分」
「よし……。やる気出てきた」
食い気を見せる香澄を見て、佑はクスクス笑う。
「四、五十分は掛かると思うし、逆算してもう少ししたら頼もう」
「うん」
香澄は温かい羽毛布団の中で身じろぎし、佑に抱きついて顔を胸板に押しつける。
「……何か、久しぶりにゆっくり寝た」
「俺もだ」
「邪魔だったとかじゃないの。『もてなさないと』って気を張っていたというか……」
「分かるよ。俺も同じだ」
佑は香澄の頭を撫でて額にキスをし、匂いを嗅いでくる。
「非日常が続くと、日常が恋しくなるのは皆同じだ」
低い声が体越しに伝わり、彼の体温と匂いとに気持ちが安らいでいく。
「麻衣さんはともかく、双子とマティアスがずっと側にいたら、気が休まらなかっただろう」
「そんな事ないよ。マティアスさんが来てくれたから、麻衣は恋する事ができた」
親友の幸せを思うと、胸の奥がほっこりする。
「その点は良かったと思うけど」
佑はポンポンと香澄の背中を撫で、少し考えてから言う。
「もしあいつがビザを取るなら、就労ビザより配偶者ビザのほうがいいのかな」
「そう! そうだね!」
香澄は急に元気になり、スマホに手を伸ばす。
そしてマティアスにメッセージを送った。
『おはようございます。配偶者ビザオススメです』
送ってから安心し、また佑にくっついてウトウトする。
「香澄? チャーシュー麺が待ってるぞ? ピザか?」
「うう……もうちょっと……」
目を閉じて食べ物の事を考えつつ、香澄は久しぶりに安らげる時間を満喫した。
**
ブランチの時間に、ラーメンの出前がきた。
香澄は味噌チャーシュー麺で、佑は醤油チャーシュー麺の大盛りだ。
そして二人で餃子と炒飯をつつく。
「香澄って道産子だから味噌ラーメン好きなのか?」
食べ終わってお腹をさすっている時に尋ねられ、首を傾げる。
「何で? ラーメンは何でも好きだよ」
「でも札幌の味噌ラーメン、旭川の煮干しの入った醤油ラーメンとか言うじゃないか」
「あー……。確かにあるかもね。でもそんなに意識しなかったかも。時々テレビで全国の麺ベスト百とかやってるけど、札幌の味噌ラーメンが一位だったのは嬉しかったな……」
「ほら、やっぱり誇りに思ってる」
佑がクスクス笑い、お茶を淹れてくれる。
「いやー、でも博多のとんこつラーメンとか憧れてるし、長崎ちゃんぽんもすっごい好き。皿うどんとか。あれ? うどんになっちゃった」
「香澄は麺が好きだよなぁ。はい、お茶」
「ありがとう」
「俺はラーメンなら、喜多方ラーメンが好きかな」
「あー。喜多方ラーメン、スープが透き通ってて美味しそうだよね。現地で食べてみたいな。あと、香川県に行ってうどんを食べたい。私、チェーン店のうどんしか知らないけど、本場のうどんってシンプルな食べ方でも、滅茶苦茶美味しいって言うよね」
「ぶっかけな」
「そう。ぶっかけ」
話しながら、佑はふうふうとお茶を冷ましている香澄をチラッと見る。
香澄は猫舌なので、お茶が唇につく前に、スゥゥゥゥ……と息を吸いきってしまう。
そのあと息が続かず、ハー……と飲むのを諦めているのを見て、佑は静かに笑い崩れた。
「な、なに」
「いや。猫舌治らないな、って思って」
「もー。治らないよ」
「舌先につけようとするからだよ。口の奥に入れればいいんだから」
「そんな器用な事できないよ」
「舌使いは上達しただろ?」
からかうように言われて、香澄は真っ赤になる。
「じゃあ、もう少ししてからにしよう。食べたいものは?」
「……うう……。ラーメンかピザの宅配」
「おっ、がっつりきたな」
「やだ?」
「いいよ。何ならサイドメニューも思う存分」
「よし……。やる気出てきた」
食い気を見せる香澄を見て、佑はクスクス笑う。
「四、五十分は掛かると思うし、逆算してもう少ししたら頼もう」
「うん」
香澄は温かい羽毛布団の中で身じろぎし、佑に抱きついて顔を胸板に押しつける。
「……何か、久しぶりにゆっくり寝た」
「俺もだ」
「邪魔だったとかじゃないの。『もてなさないと』って気を張っていたというか……」
「分かるよ。俺も同じだ」
佑は香澄の頭を撫でて額にキスをし、匂いを嗅いでくる。
「非日常が続くと、日常が恋しくなるのは皆同じだ」
低い声が体越しに伝わり、彼の体温と匂いとに気持ちが安らいでいく。
「麻衣さんはともかく、双子とマティアスがずっと側にいたら、気が休まらなかっただろう」
「そんな事ないよ。マティアスさんが来てくれたから、麻衣は恋する事ができた」
親友の幸せを思うと、胸の奥がほっこりする。
「その点は良かったと思うけど」
佑はポンポンと香澄の背中を撫で、少し考えてから言う。
「もしあいつがビザを取るなら、就労ビザより配偶者ビザのほうがいいのかな」
「そう! そうだね!」
香澄は急に元気になり、スマホに手を伸ばす。
そしてマティアスにメッセージを送った。
『おはようございます。配偶者ビザオススメです』
送ってから安心し、また佑にくっついてウトウトする。
「香澄? チャーシュー麺が待ってるぞ? ピザか?」
「うう……もうちょっと……」
目を閉じて食べ物の事を考えつつ、香澄は久しぶりに安らげる時間を満喫した。
**
ブランチの時間に、ラーメンの出前がきた。
香澄は味噌チャーシュー麺で、佑は醤油チャーシュー麺の大盛りだ。
そして二人で餃子と炒飯をつつく。
「香澄って道産子だから味噌ラーメン好きなのか?」
食べ終わってお腹をさすっている時に尋ねられ、首を傾げる。
「何で? ラーメンは何でも好きだよ」
「でも札幌の味噌ラーメン、旭川の煮干しの入った醤油ラーメンとか言うじゃないか」
「あー……。確かにあるかもね。でもそんなに意識しなかったかも。時々テレビで全国の麺ベスト百とかやってるけど、札幌の味噌ラーメンが一位だったのは嬉しかったな……」
「ほら、やっぱり誇りに思ってる」
佑がクスクス笑い、お茶を淹れてくれる。
「いやー、でも博多のとんこつラーメンとか憧れてるし、長崎ちゃんぽんもすっごい好き。皿うどんとか。あれ? うどんになっちゃった」
「香澄は麺が好きだよなぁ。はい、お茶」
「ありがとう」
「俺はラーメンなら、喜多方ラーメンが好きかな」
「あー。喜多方ラーメン、スープが透き通ってて美味しそうだよね。現地で食べてみたいな。あと、香川県に行ってうどんを食べたい。私、チェーン店のうどんしか知らないけど、本場のうどんってシンプルな食べ方でも、滅茶苦茶美味しいって言うよね」
「ぶっかけな」
「そう。ぶっかけ」
話しながら、佑はふうふうとお茶を冷ましている香澄をチラッと見る。
香澄は猫舌なので、お茶が唇につく前に、スゥゥゥゥ……と息を吸いきってしまう。
そのあと息が続かず、ハー……と飲むのを諦めているのを見て、佑は静かに笑い崩れた。
「な、なに」
「いや。猫舌治らないな、って思って」
「もー。治らないよ」
「舌先につけようとするからだよ。口の奥に入れればいいんだから」
「そんな器用な事できないよ」
「舌使いは上達しただろ?」
からかうように言われて、香澄は真っ赤になる。
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