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第十九部・マティアスと麻衣 編
おやすみなさい
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だが世の中、絶対という言葉はない。
だからマティアスは今でも怯えているのだ。
「大丈夫だよ。地球の裏側にいるんだから、そう簡単に見つからないって」
言ってから、「あれ? 日本の裏側ってブラジルだっけ?」と舌を出す。
「……すまない。心配しすぎている自覚はある」
珍しく落ち込んでいるらしい彼の腕をポンポンと叩き、励ます。
「何かあったらその時に考えよう。ここは札幌だし、彼女はマティアスさんが札幌に来てる事すら知らないはずだよ」
笑いかけると、やっとマティアスの表情が緩んだ。
「分かった。不安になってすまない。もう気にしないようにする」
「うん。……でさ。明日、私の弟がマティアスさんに会いたいって言ってるんだけど、いい? 弟が手料理作ってくれるって。結構うまいよ、あの子」
「ああ、ぜひ会いたい」
話題が変わって、マティアスはさらに表情を柔らかくした。
「一週間後には実家に行きたいけど、その前に弟を懐柔したほうがいいかな? って思ったんだ」
「名案だ。懐柔するのに秘策はあるか?」
「うーん。あの子、人なつっこいから、特に対策は必要ないと思う。弟の作った物、『美味しい』って食べたらそれで喜ぶと思いますよ」
「分かった」
買い物も終えたし、そろそろ休みたいと思った麻衣は、自分も汗を流す事にした。
ゆっくりお湯に浸かって風呂から上がると、布団に潜ってタブレットを見ていたマティアスがこちらを見てきた。
「……な、なに?」
「風呂上がりのマイ、いいな」
「もー」
照れくささを紛らわせるために手をパタパタと振り、水を飲む。
「ひとまず、今日は寝よう。電気、消しますよ」
「ああ」
部屋の電気を消し、慣れた足取りでベッドまで向かう。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
この部屋に男性を泊めるのは初めてだな……と思いつつ、目を閉じた。
(いびきかいたらやだな)
そう思ったが、疲れ切っていてあっという間に眠ってしまった。
**
土曜日の朝。
「ぅ…………、く……」
香澄は起きようとして、体のだるさにうめいた。
あのあと佑は後半戦を始め、朝になるまで寝かせてくれなかった。
香澄もタガが外れたように感じて喘ぎ、我を忘れてしまった。
そうなると、必ず翌朝に反動を味わう。
行為が終わったら何もできず泥のように眠ってしまうが、翌日目覚めると体液でグチャグチャになったはずの体は、綺麗に清拭されている。
「佑さんに感謝しないとな」と思うのだが、当然とんでもなく申し訳なくて恥ずかしい。
「大丈夫か?」
声を掛けられ、香澄は恨みがましい目で佑を見る。
「お……起きれない……」
「どうしたい?」
「…………お、……おしっこ……」
「了解」
恥ずかしくて堪らないが、動けないので仕方がない。
下半身にスウェットズボンを穿いた佑は、香澄を抱き上げる。
そしてベッド裏にある洗面所に連れていった。
「す……すみません」
「ごゆっくり」
「もー……」
気遣われるのも恥ずかしく、パタンと閉じたドアを睨んでから両手で顔を覆った。
用足しを終えてモソモソとベッドに戻ると、佑がチュッとキスをしてきた。
「朝ご飯、食べる?」
「んー……何時?」
「十時前」
「あぁ……」
寝過ぎだ、と香澄は嘆息した。
だからマティアスは今でも怯えているのだ。
「大丈夫だよ。地球の裏側にいるんだから、そう簡単に見つからないって」
言ってから、「あれ? 日本の裏側ってブラジルだっけ?」と舌を出す。
「……すまない。心配しすぎている自覚はある」
珍しく落ち込んでいるらしい彼の腕をポンポンと叩き、励ます。
「何かあったらその時に考えよう。ここは札幌だし、彼女はマティアスさんが札幌に来てる事すら知らないはずだよ」
笑いかけると、やっとマティアスの表情が緩んだ。
「分かった。不安になってすまない。もう気にしないようにする」
「うん。……でさ。明日、私の弟がマティアスさんに会いたいって言ってるんだけど、いい? 弟が手料理作ってくれるって。結構うまいよ、あの子」
「ああ、ぜひ会いたい」
話題が変わって、マティアスはさらに表情を柔らかくした。
「一週間後には実家に行きたいけど、その前に弟を懐柔したほうがいいかな? って思ったんだ」
「名案だ。懐柔するのに秘策はあるか?」
「うーん。あの子、人なつっこいから、特に対策は必要ないと思う。弟の作った物、『美味しい』って食べたらそれで喜ぶと思いますよ」
「分かった」
買い物も終えたし、そろそろ休みたいと思った麻衣は、自分も汗を流す事にした。
ゆっくりお湯に浸かって風呂から上がると、布団に潜ってタブレットを見ていたマティアスがこちらを見てきた。
「……な、なに?」
「風呂上がりのマイ、いいな」
「もー」
照れくささを紛らわせるために手をパタパタと振り、水を飲む。
「ひとまず、今日は寝よう。電気、消しますよ」
「ああ」
部屋の電気を消し、慣れた足取りでベッドまで向かう。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
この部屋に男性を泊めるのは初めてだな……と思いつつ、目を閉じた。
(いびきかいたらやだな)
そう思ったが、疲れ切っていてあっという間に眠ってしまった。
**
土曜日の朝。
「ぅ…………、く……」
香澄は起きようとして、体のだるさにうめいた。
あのあと佑は後半戦を始め、朝になるまで寝かせてくれなかった。
香澄もタガが外れたように感じて喘ぎ、我を忘れてしまった。
そうなると、必ず翌朝に反動を味わう。
行為が終わったら何もできず泥のように眠ってしまうが、翌日目覚めると体液でグチャグチャになったはずの体は、綺麗に清拭されている。
「佑さんに感謝しないとな」と思うのだが、当然とんでもなく申し訳なくて恥ずかしい。
「大丈夫か?」
声を掛けられ、香澄は恨みがましい目で佑を見る。
「お……起きれない……」
「どうしたい?」
「…………お、……おしっこ……」
「了解」
恥ずかしくて堪らないが、動けないので仕方がない。
下半身にスウェットズボンを穿いた佑は、香澄を抱き上げる。
そしてベッド裏にある洗面所に連れていった。
「す……すみません」
「ごゆっくり」
「もー……」
気遣われるのも恥ずかしく、パタンと閉じたドアを睨んでから両手で顔を覆った。
用足しを終えてモソモソとベッドに戻ると、佑がチュッとキスをしてきた。
「朝ご飯、食べる?」
「んー……何時?」
「十時前」
「あぁ……」
寝過ぎだ、と香澄は嘆息した。
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