1,234 / 1,550
第十九部・マティアスと麻衣 編
欠点を持つ二人 ☆
しおりを挟む
「……目、閉じてていい?」
「そのほうが楽なら構わない」
了承を得て、麻衣は目を閉じる。
彼に見つめられる恥ずかしさはなくなった。
だがその代わりに感覚が鋭敏になって、体から得る気持ちよさが倍増した。
「ん……。あぁ……、ぁ……」
マティアスの手が、胸からお腹に移動した。
「あまり触らないでほしい」と言ったからか、彼はお腹をしつこく触らず、腰に手を滑らせる。
それから臀部から太腿を撫でられ、いよいよ秘部に近づく。
麻衣は緊張して息を吸い込んだ。
――と、乳房に温かな息がかかったかと思うと、チュッ……と胸の先端にキスをされた。
「んっぁ、あ……」
麻衣はビクッと身を震わせ、思いきり体を緊張させる。
するとマティアスは彼女の気持ちを和らげるために、「大丈夫だ」と言って二の腕を優しくさすった。
(大丈夫……。大丈夫)
頭の中ではグルグルと、「裸を晒して恥ずかしい」「信じると決めたのに、肉付きがいいって嗤われてないだろうか」という不安が渦巻いている。
それに加えてマティアスに愛撫されている気持ちよさも加わり、頭の中がパンクしてしまいそうだ。
麻衣は自分の事を、普通の人以上に羞恥耐性がないと思っている。
いつも「恥ずかしい」という感情を抱えて生き続けていた。
大人になって一見明るく、何を言われても平気に見えていたのは、訓練をした結果に過ぎない。
いつまで経っても太っている事にコンプレックスを抱き、それなのに何一つとして自分を変えようと前進できない自分を嫌悪してきた。
体も心も、すべて恥ずかしい。
そんな自分を、マティアスは受け入れてくれた。
麻衣が「恥ずかしい」と思っている事を、彼は嗤わない。
(この人を……、信じるって決めたんだ……!)
麻衣は恥ずかしさと気持ちよさの狭間で、必死に自分と戦っていた。
いつもの自分なら、ちっぽけなプライドを守るために、怒るか逃げる事で恥ずかしさを誤魔化していただろう。
逃げ癖のついている自分と戦わなくては、〝普通の女性の幸せ〟は手に入らない。
――そうか。
麻衣は歯を食いしばり、顔を真っ赤にしてプルプル震えながら納得した。
(世の中には太っていても彼氏や夫のいる人はいる。けどその人たちは、体型をカバーする長所があった。もしくは相手が体型なんて気にしない人だった。……私があらゆる事から逃げて色んな人を馬鹿にし続けてきたのは、……臆病だったからだ。そして、自分を受け入れてくれる人の存在を信じられなかった。誰にも、何にも、期待していなかった……)
麻衣は口内に溜まった唾を嚥下し、荒くなる呼吸を必死に整えようとする。
マティアスは何度も丁寧に麻衣の乳首を舐め、吸っていた。
(望めば手に入ったかもしれないのに、私は諦めて無い物ねだりをして、努力した人を僻んでいただけだった……)
理解した瞬間、ポロッと涙が零れた。
――変わろう。
心の中で、強く誓った。
自分は運良くマティアスと出会い、愛された。
きっかけは運でもいい。
舞い込んできた幸せであろうが、自分で掴んだものだろうが、関係ない。
幸せの内訳は、必ずしも努力した証ではない。
誰にだって幸せになるチャンスは訪れる。
チャンスを掴んだあと、どうやって幸せを維持し続けるかだ。
幸せを掴む前も、あとも、人はずっと努力し続けなければならない。
(これからは、マティアスさんの愛情を素直に受け入れよう。ひねくれた自分から卒業して、愛される女性になりたい。彼といつか生まれる子供たちが、誇りに思ってくれる人になろう)
麻衣は食いしばっていた口を開き、「は……っ」と息を吐く。
そして恐る恐る目を開け、目元を覆っていた腕をどけた。
すると胸元を愛撫していたマティアスと目が合い、彼が微笑み掛けてきた。
それに対し、麻衣はぎこちなく笑い返した。
――まず、一歩。
麻衣は震える手でマティアスの髪を撫で、彼の首や肩にも触れた。
温かくなめらかな肌を感じ、素直に「気持ちいい」と感じる。
「……気持ちいい、……よ……」
そう伝えると、マティアスは優しく笑った。
「そうか」
彼は感情豊かではないし、痒いところに手が届くような、気が利く人ではない。
自分も、完璧な女性ではない。
欠点を持つ二人が寄り添い、若葉マークのカップルが誕生した。
「そのほうが楽なら構わない」
了承を得て、麻衣は目を閉じる。
彼に見つめられる恥ずかしさはなくなった。
だがその代わりに感覚が鋭敏になって、体から得る気持ちよさが倍増した。
「ん……。あぁ……、ぁ……」
マティアスの手が、胸からお腹に移動した。
「あまり触らないでほしい」と言ったからか、彼はお腹をしつこく触らず、腰に手を滑らせる。
それから臀部から太腿を撫でられ、いよいよ秘部に近づく。
麻衣は緊張して息を吸い込んだ。
――と、乳房に温かな息がかかったかと思うと、チュッ……と胸の先端にキスをされた。
「んっぁ、あ……」
麻衣はビクッと身を震わせ、思いきり体を緊張させる。
するとマティアスは彼女の気持ちを和らげるために、「大丈夫だ」と言って二の腕を優しくさすった。
(大丈夫……。大丈夫)
頭の中ではグルグルと、「裸を晒して恥ずかしい」「信じると決めたのに、肉付きがいいって嗤われてないだろうか」という不安が渦巻いている。
それに加えてマティアスに愛撫されている気持ちよさも加わり、頭の中がパンクしてしまいそうだ。
麻衣は自分の事を、普通の人以上に羞恥耐性がないと思っている。
いつも「恥ずかしい」という感情を抱えて生き続けていた。
大人になって一見明るく、何を言われても平気に見えていたのは、訓練をした結果に過ぎない。
いつまで経っても太っている事にコンプレックスを抱き、それなのに何一つとして自分を変えようと前進できない自分を嫌悪してきた。
体も心も、すべて恥ずかしい。
そんな自分を、マティアスは受け入れてくれた。
麻衣が「恥ずかしい」と思っている事を、彼は嗤わない。
(この人を……、信じるって決めたんだ……!)
麻衣は恥ずかしさと気持ちよさの狭間で、必死に自分と戦っていた。
いつもの自分なら、ちっぽけなプライドを守るために、怒るか逃げる事で恥ずかしさを誤魔化していただろう。
逃げ癖のついている自分と戦わなくては、〝普通の女性の幸せ〟は手に入らない。
――そうか。
麻衣は歯を食いしばり、顔を真っ赤にしてプルプル震えながら納得した。
(世の中には太っていても彼氏や夫のいる人はいる。けどその人たちは、体型をカバーする長所があった。もしくは相手が体型なんて気にしない人だった。……私があらゆる事から逃げて色んな人を馬鹿にし続けてきたのは、……臆病だったからだ。そして、自分を受け入れてくれる人の存在を信じられなかった。誰にも、何にも、期待していなかった……)
麻衣は口内に溜まった唾を嚥下し、荒くなる呼吸を必死に整えようとする。
マティアスは何度も丁寧に麻衣の乳首を舐め、吸っていた。
(望めば手に入ったかもしれないのに、私は諦めて無い物ねだりをして、努力した人を僻んでいただけだった……)
理解した瞬間、ポロッと涙が零れた。
――変わろう。
心の中で、強く誓った。
自分は運良くマティアスと出会い、愛された。
きっかけは運でもいい。
舞い込んできた幸せであろうが、自分で掴んだものだろうが、関係ない。
幸せの内訳は、必ずしも努力した証ではない。
誰にだって幸せになるチャンスは訪れる。
チャンスを掴んだあと、どうやって幸せを維持し続けるかだ。
幸せを掴む前も、あとも、人はずっと努力し続けなければならない。
(これからは、マティアスさんの愛情を素直に受け入れよう。ひねくれた自分から卒業して、愛される女性になりたい。彼といつか生まれる子供たちが、誇りに思ってくれる人になろう)
麻衣は食いしばっていた口を開き、「は……っ」と息を吐く。
そして恐る恐る目を開け、目元を覆っていた腕をどけた。
すると胸元を愛撫していたマティアスと目が合い、彼が微笑み掛けてきた。
それに対し、麻衣はぎこちなく笑い返した。
――まず、一歩。
麻衣は震える手でマティアスの髪を撫で、彼の首や肩にも触れた。
温かくなめらかな肌を感じ、素直に「気持ちいい」と感じる。
「……気持ちいい、……よ……」
そう伝えると、マティアスは優しく笑った。
「そうか」
彼は感情豊かではないし、痒いところに手が届くような、気が利く人ではない。
自分も、完璧な女性ではない。
欠点を持つ二人が寄り添い、若葉マークのカップルが誕生した。
14
お気に入りに追加
2,552
あなたにおすすめの小説
社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
上司は初恋の幼馴染です~社内での秘め事は控えめに~
けもこ
恋愛
高辻綾香はホテルグループの秘書課で働いている。先輩の退職に伴って、その後の仕事を引き継ぎ、専務秘書となったが、その専務は自分の幼馴染だった。
秘めた思いを抱えながら、オフィスで毎日ドキドキしながら過ごしていると、彼がアメリカ時代に一緒に暮らしていたという女性が現れ、心中は穏やかではない。
グイグイと距離を縮めようとする幼馴染に自分の思いをどうしていいかわからない日々。
初恋こじらせオフィスラブ
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~
椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」
私を脅して、別れを決断させた彼の両親。
彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。
私とは住む世界が違った……
別れを命じられ、私の恋が終わった。
叶わない身分差の恋だったはずが――
※R-15くらいなので※マークはありません。
※視点切り替えあり。
※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。
若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~
雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」
夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。
そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。
全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
『逃れられない淫らな三角関係』番外編 ヘルプラインを活用せよ!
臣桜
恋愛
『逃れられない淫らな三角関係』の番外編です。
やりとりのある特定の読者さまに向けた番外編(小冊子)です。
他にも色々あるのですが、差し障りのなさそうなものなので公開します。
(他の番外編は、リアルブランド名とかを出してしまっている配慮していないものなので、ここに載せるかは検討中)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる