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第十九部・マティアスと麻衣 編
人生初のラブホテル
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そんな二人は、大都会のど真ん中に立っていた。
そびえ立つビル群とネオンを見て、麻衣は圧倒されて呟く。
「これが……新宿……か……」
新宿と言えば、歌舞伎町や新宿二丁目の印象が強い。
繁華街といえば札幌のすすきのしか知らない麻衣は、お上りさん的な感想しか抱けずにいる。
(怖い所なのかな?)
そう思っていた時、マティアスに肩をポンと叩かれた。
「マイ」
「っふぁいっ!」
ドキッとした麻衣は、声をひっくり返して返事をする。
マティアスは、そんな彼女をジッと見つめてから提案してきた。
「提案だが、やりたい事がある」
「……な、なんでしょう……」
(まさか……ね……)
ドキッドキッと胸が高鳴る。
こういう雰囲気に慣れていない麻衣は、この場から遁走したくなる衝動と戦っていた。
「ラブホテルに泊まって、そこで食事をしてゆっくり過ごさないか?」
(やっぱりーーーー!!!!!)
先日ラブホテルに興味を示していたのは、形だけではなかった。
目をまん丸にして固まっていると、マティアスが「行こう」と手を繋いで歩きだす。
「場所は確認したし、予約もしてある」
「いつの間に!?」
(ええええええええええええええええええ)
もう驚きすぎて、自分とマティアスが釣り合わないどころの話ではない。
(だって……。え???? ちょっと……。い、一応勝負パンツ穿いてきたけど……。え???? 私、だよ???? 初体験????)
手が震え、手汗までかいてきた。
いつもの自分なら、全力で抵抗していただろう。
今までは「自分はそんなキャラじゃないから」「あとで恥を掻きたくないから」と、色恋からは全力で逃げていた。
けれどマティアスを受け入れると決めた今、ここで逃げたら〝終わり〟な気がする。
マティアスは優しいから許してくれるだろうが、自分が自分を許せないと思う。
(こういう時ぐらい、勇気を出さないと……!)
〝これ〟は、越えなければいけないハードルだ。
彼と一緒に歩むなら、絶対に避けられない、恥ずかしい事が沢山待っている。
その中の最も初歩的な事――〝初めてのエッチ〟すらできないなら、今後、結婚も一緒に住む事も不可能だろう。
(気合い……っ、気合いを……っ。~~~~香澄、勇気をちょうだい……!)
必死に自分に言い聞かせるも、どうしたらいいか分からず、麻衣は心の中で親友に助けを求める。
一人でグルグルしている間、気が付けば麻衣はマティアスに連れられて、バリ島のような雰囲気のホテルに入っていた。
店内にはガムラン音楽が流れ、独特なお香の匂いもする。
ロビーは吹き抜けになっていて南国を感じさせる植物が置かれ、アジアリゾートのヴィラを模した雰囲気になっている。
(……あれ? 私、さっきまで大都会の真ん中にいたよね? バリ……?)
大学の卒業旅行に、香澄や友達と一緒にバリ島に行った事がある。
その時の雰囲気そっくりで、気持ちが一杯一杯になっているのもあり、自分が今どこにいるのか分からなくなってしまう。
ロビーにはフリードリンクやビリヤード台まであり、ラブホテルと思えない。
(ラブホテルってこう……、薄暗い感じなんじゃなかったの? こんなにお洒落なの? ……パネェ……)
麻衣が呆然としている間、マティアスはフロントでルームキーを受け取ってきた。
「そこにあるアメニティは、好きな物を選んで部屋に持っていっていいらしい」
言われて見てみれば、駄菓子屋のように棚に籠が幾つも置かれている。
何種類かあるバスソルトは、スプーンですくって好きなだけ持っていけるようだ。
冷蔵庫には一口サイズのスイーツやおつまみまであった。
別の棚には様々なシャンプー、コンディショナーがあり、ボトルごと部屋に持っていっていいらしい。
「え、えぇと……」
麻衣はボーッとしたまま、適当に目についたものを手に取る。
そのあと雰囲気に呑まれたままエレベーターに乗り、部屋があるフロアに着いてしまった。
廊下は薄暗く、バリリゾートを思わせる照明がオレンジ色の光を放っていた。
そのムードの良さが、余計に居心地悪くさせる。
そびえ立つビル群とネオンを見て、麻衣は圧倒されて呟く。
「これが……新宿……か……」
新宿と言えば、歌舞伎町や新宿二丁目の印象が強い。
繁華街といえば札幌のすすきのしか知らない麻衣は、お上りさん的な感想しか抱けずにいる。
(怖い所なのかな?)
そう思っていた時、マティアスに肩をポンと叩かれた。
「マイ」
「っふぁいっ!」
ドキッとした麻衣は、声をひっくり返して返事をする。
マティアスは、そんな彼女をジッと見つめてから提案してきた。
「提案だが、やりたい事がある」
「……な、なんでしょう……」
(まさか……ね……)
ドキッドキッと胸が高鳴る。
こういう雰囲気に慣れていない麻衣は、この場から遁走したくなる衝動と戦っていた。
「ラブホテルに泊まって、そこで食事をしてゆっくり過ごさないか?」
(やっぱりーーーー!!!!!)
先日ラブホテルに興味を示していたのは、形だけではなかった。
目をまん丸にして固まっていると、マティアスが「行こう」と手を繋いで歩きだす。
「場所は確認したし、予約もしてある」
「いつの間に!?」
(ええええええええええええええええええ)
もう驚きすぎて、自分とマティアスが釣り合わないどころの話ではない。
(だって……。え???? ちょっと……。い、一応勝負パンツ穿いてきたけど……。え???? 私、だよ???? 初体験????)
手が震え、手汗までかいてきた。
いつもの自分なら、全力で抵抗していただろう。
今までは「自分はそんなキャラじゃないから」「あとで恥を掻きたくないから」と、色恋からは全力で逃げていた。
けれどマティアスを受け入れると決めた今、ここで逃げたら〝終わり〟な気がする。
マティアスは優しいから許してくれるだろうが、自分が自分を許せないと思う。
(こういう時ぐらい、勇気を出さないと……!)
〝これ〟は、越えなければいけないハードルだ。
彼と一緒に歩むなら、絶対に避けられない、恥ずかしい事が沢山待っている。
その中の最も初歩的な事――〝初めてのエッチ〟すらできないなら、今後、結婚も一緒に住む事も不可能だろう。
(気合い……っ、気合いを……っ。~~~~香澄、勇気をちょうだい……!)
必死に自分に言い聞かせるも、どうしたらいいか分からず、麻衣は心の中で親友に助けを求める。
一人でグルグルしている間、気が付けば麻衣はマティアスに連れられて、バリ島のような雰囲気のホテルに入っていた。
店内にはガムラン音楽が流れ、独特なお香の匂いもする。
ロビーは吹き抜けになっていて南国を感じさせる植物が置かれ、アジアリゾートのヴィラを模した雰囲気になっている。
(……あれ? 私、さっきまで大都会の真ん中にいたよね? バリ……?)
大学の卒業旅行に、香澄や友達と一緒にバリ島に行った事がある。
その時の雰囲気そっくりで、気持ちが一杯一杯になっているのもあり、自分が今どこにいるのか分からなくなってしまう。
ロビーにはフリードリンクやビリヤード台まであり、ラブホテルと思えない。
(ラブホテルってこう……、薄暗い感じなんじゃなかったの? こんなにお洒落なの? ……パネェ……)
麻衣が呆然としている間、マティアスはフロントでルームキーを受け取ってきた。
「そこにあるアメニティは、好きな物を選んで部屋に持っていっていいらしい」
言われて見てみれば、駄菓子屋のように棚に籠が幾つも置かれている。
何種類かあるバスソルトは、スプーンですくって好きなだけ持っていけるようだ。
冷蔵庫には一口サイズのスイーツやおつまみまであった。
別の棚には様々なシャンプー、コンディショナーがあり、ボトルごと部屋に持っていっていいらしい。
「え、えぇと……」
麻衣はボーッとしたまま、適当に目についたものを手に取る。
そのあと雰囲気に呑まれたままエレベーターに乗り、部屋があるフロアに着いてしまった。
廊下は薄暗く、バリリゾートを思わせる照明がオレンジ色の光を放っていた。
そのムードの良さが、余計に居心地悪くさせる。
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