1,206 / 1,550
第十九部・マティアスと麻衣 編
駄目な大人だなぁ
しおりを挟む
「話が逸れたけど、高校時代に『モデルをやりたい』と言った女の子は大勢いた。でも、今言った理由で採用しなかった。俺は本気でやっているのに、恋愛を持ち込まれるのはまっぴらだ」
「そっか」
頷いて、ほんの少し自惚れてしまった。
(佑さんに『モデルになってほしい』って言われた私は、やっぱり〝特別〟って思っていいのかな?)
そう思うと嬉しくなり、香澄は窓の外を見るふりをしてニヤついた顔をごまかす。
「気になるだろうけど、香澄が想像している〝取っ替え引っ替え〟はなかったよ。女友達は厳選したし、『当分彼女はいらない』と判断した。真澄から言わせると『寂しい青春』みたいだけど」
目的の服を探し終えた佑は、ソファに腰掛けている。
「卒業式は?」
「面倒は嫌だから、すぐ帰った。だから『第二ボタンください』もなかった。真澄をはじめとする男友達は、俺の事情や考え方を理解してくれたから、スムーズに帰れるよう協力してくれたな。俺が女の子に興味を持っていないと分かったあとは、掌返すように仲良くしてくれたもんな」
聞けば現金な話なのに、佑はクスクス笑っている。
「佑さんの新年会に混ぜてもらったら、そういう事を教えてもらえるのかな?」
「あっ……」
言われて、佑は改めて思いだしたようだ。
「香澄が知りたいならいいけど……。ただ、全部昔の話だからな?」
「ふふ。分かってる」
微笑んだあと、随分話し込んでいたのに気づき、香澄は腕時計を見た。
(麻衣たちが待っているし、いつまでもゆっくりできないな)
そう思い、ソファに掛かっている服を指さした。
「それ、麻衣の〝応援〟?」
「ああ。観光で来たなら、デート用の服を持ってきてないだろうと思って。試作品でいいなら、役立ててほしいって思ったんだ」
「ありがとう。きっと喜ぶ」
微笑んだ香澄に、佑が手を差し伸べてきた。
「じゃあ、褒めて」
「わっ」
グイッと腕を引っ張られたかと思うと、香澄は佑に抱き締められていた。
「ん……っ。し、仕方ないなぁ」
香澄はもう一度「仕方ない」と言い、佑の頬を両手で包む。
「こっちは?」
「ん?」
佑は意味深に微笑んで、少し唇をすぼめた。
「~~~~もー……仕方ないなぁ……」
もう一度「仕方ない」を言い、香澄は佑の頬を両手で包む。
「目、閉じて」
そう言うと、佑は素直に目を閉じた。
「ん」
彼の睫毛は相変わらず長い。
(美人だなぁ……。お肌すべすべ。彫りが深い。……美形。ずっと見てられる)
香澄は目を伏せた佑をしげしげと見て、彼の美形具合に感心する。
「まだ?」
「ふわっ……!」
油断していたところ、お尻をさわっと撫でられて変な声がでた。
「い、今する」
そう言って香澄は顔を傾け、ちゅっと佑の唇にキスをした。
「……溜めておいて、それだけ?」
香澄の顔が離れたタイミングで佑は目を開け、不満そうに小首を傾げる。
「……んもぉ……。欲しがるなぁ」
香澄はもう一度顔を近付け、ちゅっと啄んでから舌で佑の唇を舐めた。
軽く下唇を噛んで、もう一度唇を舐める。
すると佑はぐっと彼女を抱き寄せ、さらに深く口づけてきた。
「んっ、……ん、ぁ、……ふ、……ん」
力強い舌に何度も舌や唇を舐められ、すぐにフワフワとした心地になる。
理性がとろけそうになったが、麻衣のための服を思いだした。
「むぐ、……ん。……だ、だめ」
「……え?」
佑は不服そうに目を開く。
「カフェで麻衣たちが待ってるから……。だめ」
「……どうしても?」
「どうしても」
「急な仕事が入った事には?」
「なりません」
キッパリ否定すると、佑は長くて大きな溜め息をついた。
「もー、佑さんは駄目な大人だなぁ」
香澄はよしよしと彼の背中を撫で、大きな子供を慰める。
「そっか」
頷いて、ほんの少し自惚れてしまった。
(佑さんに『モデルになってほしい』って言われた私は、やっぱり〝特別〟って思っていいのかな?)
そう思うと嬉しくなり、香澄は窓の外を見るふりをしてニヤついた顔をごまかす。
「気になるだろうけど、香澄が想像している〝取っ替え引っ替え〟はなかったよ。女友達は厳選したし、『当分彼女はいらない』と判断した。真澄から言わせると『寂しい青春』みたいだけど」
目的の服を探し終えた佑は、ソファに腰掛けている。
「卒業式は?」
「面倒は嫌だから、すぐ帰った。だから『第二ボタンください』もなかった。真澄をはじめとする男友達は、俺の事情や考え方を理解してくれたから、スムーズに帰れるよう協力してくれたな。俺が女の子に興味を持っていないと分かったあとは、掌返すように仲良くしてくれたもんな」
聞けば現金な話なのに、佑はクスクス笑っている。
「佑さんの新年会に混ぜてもらったら、そういう事を教えてもらえるのかな?」
「あっ……」
言われて、佑は改めて思いだしたようだ。
「香澄が知りたいならいいけど……。ただ、全部昔の話だからな?」
「ふふ。分かってる」
微笑んだあと、随分話し込んでいたのに気づき、香澄は腕時計を見た。
(麻衣たちが待っているし、いつまでもゆっくりできないな)
そう思い、ソファに掛かっている服を指さした。
「それ、麻衣の〝応援〟?」
「ああ。観光で来たなら、デート用の服を持ってきてないだろうと思って。試作品でいいなら、役立ててほしいって思ったんだ」
「ありがとう。きっと喜ぶ」
微笑んだ香澄に、佑が手を差し伸べてきた。
「じゃあ、褒めて」
「わっ」
グイッと腕を引っ張られたかと思うと、香澄は佑に抱き締められていた。
「ん……っ。し、仕方ないなぁ」
香澄はもう一度「仕方ない」と言い、佑の頬を両手で包む。
「こっちは?」
「ん?」
佑は意味深に微笑んで、少し唇をすぼめた。
「~~~~もー……仕方ないなぁ……」
もう一度「仕方ない」を言い、香澄は佑の頬を両手で包む。
「目、閉じて」
そう言うと、佑は素直に目を閉じた。
「ん」
彼の睫毛は相変わらず長い。
(美人だなぁ……。お肌すべすべ。彫りが深い。……美形。ずっと見てられる)
香澄は目を伏せた佑をしげしげと見て、彼の美形具合に感心する。
「まだ?」
「ふわっ……!」
油断していたところ、お尻をさわっと撫でられて変な声がでた。
「い、今する」
そう言って香澄は顔を傾け、ちゅっと佑の唇にキスをした。
「……溜めておいて、それだけ?」
香澄の顔が離れたタイミングで佑は目を開け、不満そうに小首を傾げる。
「……んもぉ……。欲しがるなぁ」
香澄はもう一度顔を近付け、ちゅっと啄んでから舌で佑の唇を舐めた。
軽く下唇を噛んで、もう一度唇を舐める。
すると佑はぐっと彼女を抱き寄せ、さらに深く口づけてきた。
「んっ、……ん、ぁ、……ふ、……ん」
力強い舌に何度も舌や唇を舐められ、すぐにフワフワとした心地になる。
理性がとろけそうになったが、麻衣のための服を思いだした。
「むぐ、……ん。……だ、だめ」
「……え?」
佑は不服そうに目を開く。
「カフェで麻衣たちが待ってるから……。だめ」
「……どうしても?」
「どうしても」
「急な仕事が入った事には?」
「なりません」
キッパリ否定すると、佑は長くて大きな溜め息をついた。
「もー、佑さんは駄目な大人だなぁ」
香澄はよしよしと彼の背中を撫で、大きな子供を慰める。
13
お気に入りに追加
2,552
あなたにおすすめの小説
社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
上司は初恋の幼馴染です~社内での秘め事は控えめに~
けもこ
恋愛
高辻綾香はホテルグループの秘書課で働いている。先輩の退職に伴って、その後の仕事を引き継ぎ、専務秘書となったが、その専務は自分の幼馴染だった。
秘めた思いを抱えながら、オフィスで毎日ドキドキしながら過ごしていると、彼がアメリカ時代に一緒に暮らしていたという女性が現れ、心中は穏やかではない。
グイグイと距離を縮めようとする幼馴染に自分の思いをどうしていいかわからない日々。
初恋こじらせオフィスラブ
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~
椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」
私を脅して、別れを決断させた彼の両親。
彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。
私とは住む世界が違った……
別れを命じられ、私の恋が終わった。
叶わない身分差の恋だったはずが――
※R-15くらいなので※マークはありません。
※視点切り替えあり。
※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。
若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~
雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」
夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。
そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。
全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
『逃れられない淫らな三角関係』番外編 ヘルプラインを活用せよ!
臣桜
恋愛
『逃れられない淫らな三角関係』の番外編です。
やりとりのある特定の読者さまに向けた番外編(小冊子)です。
他にも色々あるのですが、差し障りのなさそうなものなので公開します。
(他の番外編は、リアルブランド名とかを出してしまっている配慮していないものなので、ここに載せるかは検討中)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる