1,194 / 1,536
第十八部・麻衣と年越し 編
うまくやっていけそうかも
しおりを挟む
現在は飲食店と新オフィス開設、下着ラインを加える計画が進んでいて、香澄は下着ラインを担当していた。
「メニュー開発については普通一か月かけるところ、二か月を予定している。その分、試作品の予算も増やして、CEブランドの飲食店として納得できる物を作ってもらう」
昨今、ラグジュアリーブランドのカフェやレストランは珍しくない。
入店しただけでステータスとなり、その内装や料理を写真に撮れば必ずバズる。
業界のお洒落な人は必ず訪れ、SNSに写真を投稿し、ファッション誌が特集しただけで大きな話題になる。
Chief Everyがプロデュースするカフェとレストランの中に、思いきり高級路線を狙ったCEPカフェも紛れさせ、希少価値を上げる狙いもある。
内装は落ち着きがあり品のある物になるよう、朔と一緒にインテリアデザイナーと相談しているところだ。
食事については、プレオープンに招待する著名人が、見た目も味も満足する物を出さなければいけない。
成功すれば集客はかなり見込めると踏んでいる。
〝外〟を整える傍ら、現在は妥協せずメニュー開発を進めていた。
信頼できる国産の材料を確保し、ヴィーガンメニューの対応も可能になるよう調整する。
アレルギー対策もしっかり考え、代替え品を使っても美味しくできるかを確認させる。
誰もが安心して食べられ、満足できる食事を提供するのはたやすくない。
Chief Everyカフェ、レストラン、CEPカフェすべてのメニュー開発に、二か月を掛ける傍ら、店舗内外の工事を余裕を持った工程で進めようとしていた。
「材料確保の段階は終わり、今はフードデザインの段階だ。コンセプトと合うデザインが決まったら、試作を開始してもらう。オフィスから通いやすい六本木の店舗で試作品を作ってもらっているから、一月中は通って試食する予定だ。香澄も付き合ってくれ。女性目線の意見もほしい」
「それは勿論、喜んで協力するけど……。栄養士やフードコーディネーターもいるんでしょ?」
あらゆるレストランやカフェのオープンに携わったという、フードコーディネーターと契約をしたという話は聞いている。
「勿論。でも一般目線寄りの意見もほしい。メイン顧客は若い女性だから」
「はい! じゃあ遠慮なく、食いしん坊のスキルを発動したいと思います」
張り切って頷くと、佑は笑いながら頭を撫でてくれた。
**
御劔邸に着くと、麻衣が「おかえりなさい」と出迎えてくれた。
「あぁ~。麻衣の『おかえり』が染みる~」
ぎゅーっと麻衣に抱きつくと、「お疲れ様」と背中をポンポンしてくれる。
「カイ、おかえり」
マティアスも出てきて、靴を脱いだ佑が「アロクラは?」と尋ねた。
「ニューイヤーだからと言って、どこかに酒を飲みに行った」
「まったく……。離れに連絡しておかないと」
溜め息をつき、佑はスマホを開いて円山に連絡する。
「ん? ん? 麻衣、マティアスさんと二人きりだったの?」
リビングに向かいつつ、香澄は麻衣の肩を組んでニヤニヤする。
「ちょっと、香澄。おじさん臭い」
「んっふっふ……。あとで詳細よろしく」
ポンと麻衣の肩を叩いたあと、香澄はキッチンで水を飲み、自室で着替える事にした。
部屋着に着替えてバスルームを確認すると、麻衣が用意してくれたのか風呂の用意ができている。
ありがたくいただく事にして、洗面所でメイク落としを始めた。
――と、「香澄」と声がし、麻衣が部屋に入ってくる。
「お風呂、入れといたからね。私は先に部屋で入った」
「ありがと」
ダブル洗顔して顔を拭いていると、麻衣がポツンと呟いた。
「私、マティアスさんとうまくやっていけそうかも」
「ほんと?」
今までの彼女は、マティアスのストレートな好意に戸惑っていたように感じられた。
だから朗報だ。
「私、香澄が思ってる以上に外見コンプレックスがあるんだ。香澄が一緒にいる時は気楽にいられる。でも世の中全員が、香澄みたいにいい人じゃない」
「ん……」
麻衣のコンプレックスは分かっているつもりで、彼女が傷つく言葉は言わないし、気にするだろう事もしないようにしている。
それでも、自分以外の人に彼女が苦しめられているのは事実だ。
「でもマティアスさんって本当に外見を気にしてないみたい。……その、性格っていうか、人間性が好きだって言ってくれて」
「うんうん」
香澄はプレ化粧水をピタピタと馴染ませながら話を聞く。
「メニュー開発については普通一か月かけるところ、二か月を予定している。その分、試作品の予算も増やして、CEブランドの飲食店として納得できる物を作ってもらう」
昨今、ラグジュアリーブランドのカフェやレストランは珍しくない。
入店しただけでステータスとなり、その内装や料理を写真に撮れば必ずバズる。
業界のお洒落な人は必ず訪れ、SNSに写真を投稿し、ファッション誌が特集しただけで大きな話題になる。
Chief Everyがプロデュースするカフェとレストランの中に、思いきり高級路線を狙ったCEPカフェも紛れさせ、希少価値を上げる狙いもある。
内装は落ち着きがあり品のある物になるよう、朔と一緒にインテリアデザイナーと相談しているところだ。
食事については、プレオープンに招待する著名人が、見た目も味も満足する物を出さなければいけない。
成功すれば集客はかなり見込めると踏んでいる。
〝外〟を整える傍ら、現在は妥協せずメニュー開発を進めていた。
信頼できる国産の材料を確保し、ヴィーガンメニューの対応も可能になるよう調整する。
アレルギー対策もしっかり考え、代替え品を使っても美味しくできるかを確認させる。
誰もが安心して食べられ、満足できる食事を提供するのはたやすくない。
Chief Everyカフェ、レストラン、CEPカフェすべてのメニュー開発に、二か月を掛ける傍ら、店舗内外の工事を余裕を持った工程で進めようとしていた。
「材料確保の段階は終わり、今はフードデザインの段階だ。コンセプトと合うデザインが決まったら、試作を開始してもらう。オフィスから通いやすい六本木の店舗で試作品を作ってもらっているから、一月中は通って試食する予定だ。香澄も付き合ってくれ。女性目線の意見もほしい」
「それは勿論、喜んで協力するけど……。栄養士やフードコーディネーターもいるんでしょ?」
あらゆるレストランやカフェのオープンに携わったという、フードコーディネーターと契約をしたという話は聞いている。
「勿論。でも一般目線寄りの意見もほしい。メイン顧客は若い女性だから」
「はい! じゃあ遠慮なく、食いしん坊のスキルを発動したいと思います」
張り切って頷くと、佑は笑いながら頭を撫でてくれた。
**
御劔邸に着くと、麻衣が「おかえりなさい」と出迎えてくれた。
「あぁ~。麻衣の『おかえり』が染みる~」
ぎゅーっと麻衣に抱きつくと、「お疲れ様」と背中をポンポンしてくれる。
「カイ、おかえり」
マティアスも出てきて、靴を脱いだ佑が「アロクラは?」と尋ねた。
「ニューイヤーだからと言って、どこかに酒を飲みに行った」
「まったく……。離れに連絡しておかないと」
溜め息をつき、佑はスマホを開いて円山に連絡する。
「ん? ん? 麻衣、マティアスさんと二人きりだったの?」
リビングに向かいつつ、香澄は麻衣の肩を組んでニヤニヤする。
「ちょっと、香澄。おじさん臭い」
「んっふっふ……。あとで詳細よろしく」
ポンと麻衣の肩を叩いたあと、香澄はキッチンで水を飲み、自室で着替える事にした。
部屋着に着替えてバスルームを確認すると、麻衣が用意してくれたのか風呂の用意ができている。
ありがたくいただく事にして、洗面所でメイク落としを始めた。
――と、「香澄」と声がし、麻衣が部屋に入ってくる。
「お風呂、入れといたからね。私は先に部屋で入った」
「ありがと」
ダブル洗顔して顔を拭いていると、麻衣がポツンと呟いた。
「私、マティアスさんとうまくやっていけそうかも」
「ほんと?」
今までの彼女は、マティアスのストレートな好意に戸惑っていたように感じられた。
だから朗報だ。
「私、香澄が思ってる以上に外見コンプレックスがあるんだ。香澄が一緒にいる時は気楽にいられる。でも世の中全員が、香澄みたいにいい人じゃない」
「ん……」
麻衣のコンプレックスは分かっているつもりで、彼女が傷つく言葉は言わないし、気にするだろう事もしないようにしている。
それでも、自分以外の人に彼女が苦しめられているのは事実だ。
「でもマティアスさんって本当に外見を気にしてないみたい。……その、性格っていうか、人間性が好きだって言ってくれて」
「うんうん」
香澄はプレ化粧水をピタピタと馴染ませながら話を聞く。
11
お気に入りに追加
2,501
あなたにおすすめの小説
【R18】鬼上司は今日も私に甘くない
白波瀬 綾音
恋愛
見た目も中身も怖くて、仕事にストイックなハイスペ上司、高濱暁人(35)の右腕として働く私、鈴木梨沙(28)。接待で終電を逃した日から秘密の関係が始まる───。
逆ハーレムのチームで刺激的な日々を過ごすオフィスラブストーリー
法人営業部メンバー
鈴木梨沙:28歳
高濱暁人:35歳、法人営業部部長
相良くん:25歳、唯一の年下くん
久野さん:29歳、一個上の優しい先輩
藍沢さん:31歳、チーフ
武田さん:36歳、課長
加藤さん:30歳、法人営業部事務
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
隠れ御曹司の愛に絡めとられて
海棠桔梗
恋愛
目が覚めたら、名前が何だったかさっぱり覚えていない男とベッドを共にしていた――
彼氏に浮気されて更になぜか自分の方が振られて「もう男なんていらない!」って思ってた矢先、強引に参加させられた合コンで出会った、やたら綺麗な顔の男。
古い雑居ビルの一室に住んでるくせに、持ってる腕時計は超高級品。
仕事は飲食店勤務――って、もしかしてホスト!?
チャラい男はお断り!
けれども彼の作る料理はどれも絶品で……
超大手商社 秘書課勤務
野村 亜矢(のむら あや)
29歳
特技:迷子
×
飲食店勤務(ホスト?)
名も知らぬ男
24歳
特技:家事?
「方向音痴・家事音痴の女」は「チャラいけれど家事は完璧な男」の愛に絡め取られて
もう逃げられない――
不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました
入海月子
恋愛
有本瑞希
仕事に燃える設計士 27歳
×
黒瀬諒
飄々として軽い一級建築士 35歳
女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。
彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。
ある日、同僚のミスが発覚して――。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
私の婚活事情〜副社長の策に嵌まるまで〜
みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
身長172センチ。
高身長であること以外はいたって平凡なアラサーOLの佐伯花音。
婚活アプリに登録し、積極的に動いているのに中々上手く行かない。
名前からしてもっと可愛らしい人かと…ってどういうこと? そんな人こっちから願い下げ。
−−−でもだからってこんなハイスペ男子も求めてないっ!!
イケメン副社長に振り回される毎日…気が付いたときには既に副社長の手の内にいた。
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※完結済み、手直ししながら随時upしていきます
※サムネにAI生成画像を使用しています
お兄ちゃんはお医者さん!?
すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。
如月 陽菜(きさらぎ ひな)
病院が苦手。
如月 陽菜の主治医。25歳。
高橋 翔平(たかはし しょうへい)
内科医の医師。
※このお話に出てくるものは
現実とは何の関係もございません。
※治療法、病名など
ほぼ知識なしで書かせて頂きました。
お楽しみください♪♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる