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第十八部・麻衣と年越し 編
そんなに理解しがたいだろうか
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「マイがヴァージンなのは分かっているし、嫌がる事はしないと約束する。怖いのは察する。だが今後の事も考えると、触れ合ってみないと前に進めない。どうだろうか」
「だっ……、んー? ちょっ……あぁあぁ…………、もぉ、……うーっ!」
どう反応すればいいのか分からず、感情が迷子になる。
もしマティアスが双子のようなタイプなら、怒って終わりにできる。
けれどマティアスは常に真剣なので、ごまかせない。
マティアスと関わるほど、いかに自分が男性と向き合う事から逃げていたか痛感する。
『私は太ってるから、男に何を言われても真剣に取り合ったら駄目。バカにされて終わり』
ずっとそう思い、自分を守ってきた。
今までどんな事があっても、浮つく自分を許せず、すべての言葉を受け流していた。
時に笑い飛ばし、時に自虐して、〝性的に見られる女性〟と振る舞わなかった。
真に受けて「からかわれた」と怒れば、「面倒なデブ」と思われる。
だから今までずっと、自分を卑下して笑って受け流す術を身につけ、あらゆる言葉に対応してきた。
でもマティアスは、本当に自分を性的に見ている。……のかもしれない。
だが脳裏を駆け巡るのは、さまざまな〝もしも〟だ。
『ヤリ捨てされたらどうしよう』
『ホテルに行ったら、シャワーを浴びてる間に財布を持ち逃げされたっていう話を、ネットで見た事がある』
思いだすのは、誠実と言えない思考ばかりだ。
自分が性的に求められると思っていないので、「裏に何かあるでしょ?」とつい疑ってしまう悪癖を持っている。
それなのにこのマティアスという男は、本気で自分を想っているようで、どう対応したらいいのか分からない。
「……問題はどこにある?」
麻衣が黙って考えている間も、彼はずっと彼女を見つめて、表情の奥にあるものを探ろうとしていた。
「……すごく失礼な事を言うけど、いい?」
「構わない」
「処女厨?」
「……? 処女中? ……俺はヴァージンじゃない」
「いや、そうじゃなくて。んー……あぁ、もう……。処女の女性を抱くのが好き?」
「いや。ヴァージンを相手にした事は一回しかない。ティーンの時に付き合ったガールフレンドだけだ。とても痛がって申し訳なく思ったから、可能ならヴァージンではない女性がいい」
これについては一理あると思い、納得する。
「……わ、私を抱いたらお金が発生するシステム?」
「マイはヴァージンなのに売春するのか? …………? ……? ……マイを抱くのに金がかかるなら払うが……。…………?」
マティアスは心の底から困惑し、何度も首をひねっている。
「いっ、いや、そうじゃなくて! 私がマティアスさんにお金を払うかって事!」
「…………」
とうとうマティアスは困った顔をしたまま黙り、タブレット端末をスリープにした。
彼はむくりと起き上がって胡座を掻き、何やら考えながら頭を掻く。
思わず麻衣も起き上がり、ばつの悪い顔をして俯いた。
そんな彼女に、マティアスが尋ねてくる。
「好きな女性を抱きたいという気持ちは、そんなに理解しがたいだろうか」
「……ごめんなさい。疑いたくないんだけど、私が自分に魅力を感じていないから、裏があるんじゃないかって思っちゃう」
(こんな事を言ってたら、嫌われるな。何とかマインドリセットしたい。でもどうやったら……)
自己嫌悪も激しくなっていて、いよいよどうしたらいいか分からない。
「マイに魅力がないだって?」
だがマティアスは珍しく声のトーンを上げ、目を丸くする。
そしておもむろに麻衣の手を掴んだかと思うと、「怒らないでくれ」と言って自身の股間に導いた。
「えっ」
男性のそんな場所など触れた事がなく、麻衣はとっさに力一杯手を引く。
だがマティアスはそれ以上の力で、彼女の手を自分の股間に押しつけた。
「セクハラをしたい訳じゃない。ただ、さっきからうつ伏せにならないと誤魔化せないぐらい、マイに興奮していると知ってほしい。マイが自分を『魅力がない』と思っていても、俺はこの上なく魅力を感じている。その感覚を無視しないでくれ」
「~~~~っ」
掌に感じるのは、モリッとしたアレだ。
麻衣の掌に、芯を持った生々しい感触がある。
「だっ……、んー? ちょっ……あぁあぁ…………、もぉ、……うーっ!」
どう反応すればいいのか分からず、感情が迷子になる。
もしマティアスが双子のようなタイプなら、怒って終わりにできる。
けれどマティアスは常に真剣なので、ごまかせない。
マティアスと関わるほど、いかに自分が男性と向き合う事から逃げていたか痛感する。
『私は太ってるから、男に何を言われても真剣に取り合ったら駄目。バカにされて終わり』
ずっとそう思い、自分を守ってきた。
今までどんな事があっても、浮つく自分を許せず、すべての言葉を受け流していた。
時に笑い飛ばし、時に自虐して、〝性的に見られる女性〟と振る舞わなかった。
真に受けて「からかわれた」と怒れば、「面倒なデブ」と思われる。
だから今までずっと、自分を卑下して笑って受け流す術を身につけ、あらゆる言葉に対応してきた。
でもマティアスは、本当に自分を性的に見ている。……のかもしれない。
だが脳裏を駆け巡るのは、さまざまな〝もしも〟だ。
『ヤリ捨てされたらどうしよう』
『ホテルに行ったら、シャワーを浴びてる間に財布を持ち逃げされたっていう話を、ネットで見た事がある』
思いだすのは、誠実と言えない思考ばかりだ。
自分が性的に求められると思っていないので、「裏に何かあるでしょ?」とつい疑ってしまう悪癖を持っている。
それなのにこのマティアスという男は、本気で自分を想っているようで、どう対応したらいいのか分からない。
「……問題はどこにある?」
麻衣が黙って考えている間も、彼はずっと彼女を見つめて、表情の奥にあるものを探ろうとしていた。
「……すごく失礼な事を言うけど、いい?」
「構わない」
「処女厨?」
「……? 処女中? ……俺はヴァージンじゃない」
「いや、そうじゃなくて。んー……あぁ、もう……。処女の女性を抱くのが好き?」
「いや。ヴァージンを相手にした事は一回しかない。ティーンの時に付き合ったガールフレンドだけだ。とても痛がって申し訳なく思ったから、可能ならヴァージンではない女性がいい」
これについては一理あると思い、納得する。
「……わ、私を抱いたらお金が発生するシステム?」
「マイはヴァージンなのに売春するのか? …………? ……? ……マイを抱くのに金がかかるなら払うが……。…………?」
マティアスは心の底から困惑し、何度も首をひねっている。
「いっ、いや、そうじゃなくて! 私がマティアスさんにお金を払うかって事!」
「…………」
とうとうマティアスは困った顔をしたまま黙り、タブレット端末をスリープにした。
彼はむくりと起き上がって胡座を掻き、何やら考えながら頭を掻く。
思わず麻衣も起き上がり、ばつの悪い顔をして俯いた。
そんな彼女に、マティアスが尋ねてくる。
「好きな女性を抱きたいという気持ちは、そんなに理解しがたいだろうか」
「……ごめんなさい。疑いたくないんだけど、私が自分に魅力を感じていないから、裏があるんじゃないかって思っちゃう」
(こんな事を言ってたら、嫌われるな。何とかマインドリセットしたい。でもどうやったら……)
自己嫌悪も激しくなっていて、いよいよどうしたらいいか分からない。
「マイに魅力がないだって?」
だがマティアスは珍しく声のトーンを上げ、目を丸くする。
そしておもむろに麻衣の手を掴んだかと思うと、「怒らないでくれ」と言って自身の股間に導いた。
「えっ」
男性のそんな場所など触れた事がなく、麻衣はとっさに力一杯手を引く。
だがマティアスはそれ以上の力で、彼女の手を自分の股間に押しつけた。
「セクハラをしたい訳じゃない。ただ、さっきからうつ伏せにならないと誤魔化せないぐらい、マイに興奮していると知ってほしい。マイが自分を『魅力がない』と思っていても、俺はこの上なく魅力を感じている。その感覚を無視しないでくれ」
「~~~~っ」
掌に感じるのは、モリッとしたアレだ。
麻衣の掌に、芯を持った生々しい感触がある。
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