1,166 / 1,544
第十八部・麻衣と年越し 編
一緒に寝たい
しおりを挟む
(佑さんといつまでも仲良く過ごせますように。麻衣とマティアスさんがうまくいきますように。アロイスさんとクラウスさんも、幸せになれますように。札幌の親や親戚、友達も健康で幸せな一年を送れますように。Chief Everyが右肩上がりの業績になり、社員の皆さんもニコニコで過ごせますように。貴恵さんや護衛の方々も健康で過ごせますように)
お参りが終わったあとは、今度は氷川神社に向けて歩く。
「御劔さんたち、お賽銭に一万円入れるからびっくりしちゃった」
「でしょ。お賽銭格差が生まれるの」
香澄は麻衣とボソボソと囁き、「やっぱり五円だよね」と頷き合う。
そんな二人の会話を聞いて、マティアスが少しどや顔で会話に参加してきた。
「俺は二十一円を入れた。調べたが、割り切れない数字は夫婦円満にいいらしい」
「あぁ、そういうのありますよね。十円だと『遠縁』とか、五百円だと『これ以上硬貨(効果)がない』とか……。穴の空いている硬貨は、『見通しがいい』でしたっけ」
お賽銭について話していると、クラウスがケラケラ笑って口を挟んできた。
「そういうのも日本的でいいけどさぁ。結局は神社に寄付する訳でしょ? 大きい金入れたほうがいいんだって。要は火力」
「……そう言われると、何も言えません……」
双子も佑と一緒で、札束で殴るタイプだ。
美しい顔で「金は正義でしょ?」と言われると、反論のしようがない。
「まーまー。余分に入れてる分『カスミたちも幸せになりますように』って祈ってあげるから」
「あ、ありがとうございます……」
アロイスによく分からない仲裁をされ、香澄は苦笑いをする。
そこに佑が参戦した。
「香澄の幸せは誰よりも一番、俺がたっぷり願っておいたから、心配しなくていいよ」
そう言われ、香澄は「もー」とクスクス笑った。
**
お参りをするのに順番待ちをするのも含め、家に帰ったのは一時間半弱後だ。
家に帰るとすぐ着物を脱いで畳む作業に掛かる。
佑もマティアスも、「香澄(麻衣)の着物は俺が脱がせたい」と主張した。
だが双子に「寝る時間が勿体ないんでしょ? 明日タンテたちが来るんでしょ?」と言われ、彼らに手伝われてしまう。
長襦袢になったところで男性陣に出ていってもらい、洋服に着替えたあと、佑に畳み方を教えてもらった。
男性陣も着替え、さあ寝ようとなったのは、もう深夜の二時近くだ。
麻衣は部屋に行き、双子とマティアスも三階に引っ込んだ。
香澄は水を飲んでから佑の寝室まで行き、彼に挨拶をした。
「おやすみなさい」
「ん、おやすみ」
キングサイズのベッドに座って枕元のライトをつけていた佑は、ちょいちょいと香澄を手招きした。
「ん?」
側まで行くと、佑が微笑んで尋ねてくる。
「今夜も麻衣さんと一緒?」
「……う、うん……」
「新年最初の夜と、初夢を見る夜は一緒に寝たい。今夜と明日の夜。……駄目か?」
優しく言われ、ジワッと頬が熱を持つ。
(今まで麻衣を優先してたけど、佑さんは我慢してくれてた。色々我が儘をきいてくれたし……)
彼が今まで自分に捧げてくれたものを、胸の中で反芻する。
佑がいるから、麻衣はホテルなしに東京に来られて、ゴージャスな体験ができている。
そんな佑がご褒美に、と望むのは香澄だけだ。
(私だけは佑さんをないがしろにしちゃいけない)
自分に言い聞かせ、香澄は微笑んだ。
「……麻衣に話してくるね」
「分かった」
小さな声で告げて、香澄は麻衣の部屋に向かった。
**
香澄は麻衣の部屋をひょこっと覗く。
「麻衣」
「んー? 寝る準備終わった?」
麻衣はベッドの上でうつ伏せになり、スマホを見ている。
そんな彼女に、香澄は申し訳ないなが申し出た。
「あのね、今日と明日の夜、佑さんと寝てもいい? 勿論、イチャついたりとかは絶対しない」
戸惑いながらも打ち明けると、彼女はクシャッと破顔した。
お参りが終わったあとは、今度は氷川神社に向けて歩く。
「御劔さんたち、お賽銭に一万円入れるからびっくりしちゃった」
「でしょ。お賽銭格差が生まれるの」
香澄は麻衣とボソボソと囁き、「やっぱり五円だよね」と頷き合う。
そんな二人の会話を聞いて、マティアスが少しどや顔で会話に参加してきた。
「俺は二十一円を入れた。調べたが、割り切れない数字は夫婦円満にいいらしい」
「あぁ、そういうのありますよね。十円だと『遠縁』とか、五百円だと『これ以上硬貨(効果)がない』とか……。穴の空いている硬貨は、『見通しがいい』でしたっけ」
お賽銭について話していると、クラウスがケラケラ笑って口を挟んできた。
「そういうのも日本的でいいけどさぁ。結局は神社に寄付する訳でしょ? 大きい金入れたほうがいいんだって。要は火力」
「……そう言われると、何も言えません……」
双子も佑と一緒で、札束で殴るタイプだ。
美しい顔で「金は正義でしょ?」と言われると、反論のしようがない。
「まーまー。余分に入れてる分『カスミたちも幸せになりますように』って祈ってあげるから」
「あ、ありがとうございます……」
アロイスによく分からない仲裁をされ、香澄は苦笑いをする。
そこに佑が参戦した。
「香澄の幸せは誰よりも一番、俺がたっぷり願っておいたから、心配しなくていいよ」
そう言われ、香澄は「もー」とクスクス笑った。
**
お参りをするのに順番待ちをするのも含め、家に帰ったのは一時間半弱後だ。
家に帰るとすぐ着物を脱いで畳む作業に掛かる。
佑もマティアスも、「香澄(麻衣)の着物は俺が脱がせたい」と主張した。
だが双子に「寝る時間が勿体ないんでしょ? 明日タンテたちが来るんでしょ?」と言われ、彼らに手伝われてしまう。
長襦袢になったところで男性陣に出ていってもらい、洋服に着替えたあと、佑に畳み方を教えてもらった。
男性陣も着替え、さあ寝ようとなったのは、もう深夜の二時近くだ。
麻衣は部屋に行き、双子とマティアスも三階に引っ込んだ。
香澄は水を飲んでから佑の寝室まで行き、彼に挨拶をした。
「おやすみなさい」
「ん、おやすみ」
キングサイズのベッドに座って枕元のライトをつけていた佑は、ちょいちょいと香澄を手招きした。
「ん?」
側まで行くと、佑が微笑んで尋ねてくる。
「今夜も麻衣さんと一緒?」
「……う、うん……」
「新年最初の夜と、初夢を見る夜は一緒に寝たい。今夜と明日の夜。……駄目か?」
優しく言われ、ジワッと頬が熱を持つ。
(今まで麻衣を優先してたけど、佑さんは我慢してくれてた。色々我が儘をきいてくれたし……)
彼が今まで自分に捧げてくれたものを、胸の中で反芻する。
佑がいるから、麻衣はホテルなしに東京に来られて、ゴージャスな体験ができている。
そんな佑がご褒美に、と望むのは香澄だけだ。
(私だけは佑さんをないがしろにしちゃいけない)
自分に言い聞かせ、香澄は微笑んだ。
「……麻衣に話してくるね」
「分かった」
小さな声で告げて、香澄は麻衣の部屋に向かった。
**
香澄は麻衣の部屋をひょこっと覗く。
「麻衣」
「んー? 寝る準備終わった?」
麻衣はベッドの上でうつ伏せになり、スマホを見ている。
そんな彼女に、香澄は申し訳ないなが申し出た。
「あのね、今日と明日の夜、佑さんと寝てもいい? 勿論、イチャついたりとかは絶対しない」
戸惑いながらも打ち明けると、彼女はクシャッと破顔した。
12
お気に入りに追加
2,509
あなたにおすすめの小説
王女殿下に婚約破棄された、捨てられ悪役令息を拾ったら溺愛されまして。
Rohdea
恋愛
伯爵令嬢のフルールは、最近婚約者との仲に悩んでいた。
そんなある日、この国の王女シルヴェーヌの誕生日パーティーが行われることに。
「リシャール! もう、我慢出来ませんわ! あなたとは本日限りで婚約破棄よ!」
突然、主役であるはずの王女殿下が、自分の婚約者に向かって声を張り上げて婚約破棄を突き付けた。
フルールはその光景を人混みの中で他人事のように聞いていたが、
興味本位でよくよく見てみると、
婚約破棄を叫ぶ王女殿下の傍らに寄り添っている男性が
まさかの自分の婚約者だと気付く。
(───え? 王女殿下と浮気していたの!?)
一方、王女殿下に“悪役令息”呼ばわりされた公爵子息のリシャールは、
婚約破棄にだけでなく家からも勘当されて捨てられることに。
婚約者の浮気を知ってショックを受けていたフルールは、
パーティーの帰りに偶然、捨てられ行き場をなくしたリシャールと出会う。
また、真実の愛で結ばれるはずの王女殿下とフルールの婚約者は───
婚約者は聖女を愛している。……と、思っていたが何か違うようです。
棗
恋愛
セラティーナ=プラティーヌには婚約者がいる。灰色の髪と瞳の美しい青年シュヴァルツ=グリージョが。だが、彼が愛しているのは聖女様。幼少期から両想いの二人を引き裂く悪女と社交界では嘲笑われ、両親には魔法の才能があるだけで嫌われ、妹にも馬鹿にされる日々を送る。
そんなセラティーナには前世の記憶がある。そのお陰で悲惨な日々をあまり気にせず暮らしていたが嘗ての夫に会いたくなり、家を、王国を去る決意をするが意外にも近く王国に来るという情報を得る。
前世の夫に一目でも良いから会いたい。会ったら、王国を去ろうとセラティーナが嬉々と準備をしていると今まで聖女に夢中だったシュヴァルツがセラティーナを気にしだした。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
悪夢から逃れたら前世の夫がおかしい
はなまる
恋愛
ミモザは結婚している。だが夫のライオスには愛人がいてミモザは見向きもされない。それなのに義理母は跡取りを待ち望んでいる。だが息子のライオスはミモザと初夜の一度っきり相手をして後は一切接触して来ない。
義理母はどうにかして跡取りをと考えとんでもないことを思いつく。
それは自分の夫クリスト。ミモザに取ったら義理父を受け入れさせることだった。
こんなの悪夢としか思えない。そんな状況で階段から落ちそうになって前世を思い出す。その時助けてくれた男が前世の夫セルカークだったなんて…
セルカークもとんでもない夫だった。ミモザはとうとうこんな悪夢に立ち向かうことにする。
短編スタートでしたが、思ったより文字数が増えそうです。もうしばらくお付き合い痛手蹴るとすごくうれしいです。最後目でよろしくお願いします。
夫の不貞現場を目撃してしまいました
秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。
何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。
そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。
なろう様でも掲載しております。
【完結】お前なんていらない。と言われましたので
高瀬船
恋愛
子爵令嬢であるアイーシャは、義母と義父、そして義妹によって子爵家で肩身の狭い毎日を送っていた。
辛い日々も、学園に入学するまで、婚約者のベルトルトと結婚するまで、と自分に言い聞かせていたある日。
義妹であるエリシャの部屋から楽しげに笑う自分の婚約者、ベルトルトの声が聞こえてきた。
【誤字報告を頂きありがとうございます!💦この場を借りてお礼申し上げます】
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる