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第十八部・麻衣と年越し 編
金持ちの遊戯
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「……か、格好いい……ですけど」
「マイもとても素敵だ。美しい。魅力的で、このままどこかに閉じ込めてしまいたくなる」
あのマティアスが甘い言葉を口にし、香澄は赤くなっている親友を見て盛大にニヤつく。
「マティアスさん。良かったら麻衣とツーショット撮りましょうか?」
スマホを構えると、マティアスがパァッと表情を明るくした。
「ぜひ頼む。俺のスマホで撮ってもらっていいだろうか」
「勿論です」
背景が香澄の部屋というのも何なので、廊下の壁を背にする事にした。
「はい、撮りますよ~」
マティアスと並んだ麻衣はガチガチに緊張していて、微笑ましい。
カシャッと一枚撮り、「もう一枚撮りますよ~」と声を掛けると、マティアスが麻衣の肩を抱いた。
「ちょっ……」
「一枚目とは変化をつけないと、面白くないだろう」
人生において「面白み」というものを求めていると思えない男が、好きな女ができるとこうも変わるのが面白い。
香澄はニヤニヤ笑いながらスマホを構え、画面をタップした。
「はい、どうせだからアップも撮りましょうか。寄って寄って」
「ちょ、ちょっと香澄」
「いいから、いいから」
マティアスはいつもと変わらない表情で、けれどノリノリで麻衣と顔を寄せる。
「はい、取りますよ~。三、二、一、……と」
写真を撮り、「もう一枚」と言ってスマホを構えると、マティアスが麻衣の頬にキスをした。
「ひぇっ……」
麻衣が真っ赤になって悲鳴を上げかけた瞬間を逃さず、香澄はシャッターボタンをタップした。
「よし! さいっこうの写真が撮れました! マティアスさん、麻衣にコネクターナウで送ってあげてください」
「了解した」
「も~。香澄……」
麻衣は物言いたげな目でこちらを見たが、ニコニコしていたら「あとで覚えてろよ」という顔で睨まれた。
そのあと彼女は大人しく、マティアスから画像を受け取っている。
「あとで私と佑さんの写真も撮ってね」
麻衣に言うと、元気のいい返事がきた。
「了解! っていうか、マティアスさん。私と香澄の写真も撮ってくれません?」
「了解した」
双子たちの準備ができるまで、そのようにして撮影会が行われていた。
準備ができたと言われて二階のリビングに行くと、双子はグレーの着物と羽織を着て、それぞれ角帯の色が違う。
双子は「見てー」と羽織を見せてきたが、その羽織の内側には、アルメスの特徴的な柄のスカーフが使われていた。
どうやら特注らしい。
「すっご……。金持ちの遊戯……」
麻衣が怯えながら呟き、香澄もゴクリと生唾を飲み込む。
佑もマティアスも、同様に羽裏に高価な布地を使っているに違いない。
男性の着物は女性ほど表面がきらびやかではないので、裏地を華やかにしているのだとか。
それが男性の着物の〝粋〟な遊びらしい。
「じゃあ〝金持ち〟は二人に特別なフワフワをあげようか」
「特別なフワフワ?」
佑の言う事が分からずキョトンとすると、彼はリビングの隅に置いてある箱から何かを取りだした。
「んっ?」
薄紙に包まれている〝何か〟を受け取ると、割と重量がある。
こわごわと薄紙を開いてみると――。
「「いやいやいやいや」」
ツヤツヤとしたセーブルの毛皮が出てきて、香澄と麻衣は同時に突っ込んだ。
「おっもしれー!」
「シンクロした! シンクロ!」
双子は手を叩いてキャッキャと笑い、佑は圧のある微笑みで尋ねてくる。
「もしかしてセーブルは嫌いだったか?」
「そ! そうじゃなくて!」
「……香澄。御劔さんの本性ってコレ?」
引きに引きまくった麻衣が、ボソッと耳元で囁いてくる。
「マイもとても素敵だ。美しい。魅力的で、このままどこかに閉じ込めてしまいたくなる」
あのマティアスが甘い言葉を口にし、香澄は赤くなっている親友を見て盛大にニヤつく。
「マティアスさん。良かったら麻衣とツーショット撮りましょうか?」
スマホを構えると、マティアスがパァッと表情を明るくした。
「ぜひ頼む。俺のスマホで撮ってもらっていいだろうか」
「勿論です」
背景が香澄の部屋というのも何なので、廊下の壁を背にする事にした。
「はい、撮りますよ~」
マティアスと並んだ麻衣はガチガチに緊張していて、微笑ましい。
カシャッと一枚撮り、「もう一枚撮りますよ~」と声を掛けると、マティアスが麻衣の肩を抱いた。
「ちょっ……」
「一枚目とは変化をつけないと、面白くないだろう」
人生において「面白み」というものを求めていると思えない男が、好きな女ができるとこうも変わるのが面白い。
香澄はニヤニヤ笑いながらスマホを構え、画面をタップした。
「はい、どうせだからアップも撮りましょうか。寄って寄って」
「ちょ、ちょっと香澄」
「いいから、いいから」
マティアスはいつもと変わらない表情で、けれどノリノリで麻衣と顔を寄せる。
「はい、取りますよ~。三、二、一、……と」
写真を撮り、「もう一枚」と言ってスマホを構えると、マティアスが麻衣の頬にキスをした。
「ひぇっ……」
麻衣が真っ赤になって悲鳴を上げかけた瞬間を逃さず、香澄はシャッターボタンをタップした。
「よし! さいっこうの写真が撮れました! マティアスさん、麻衣にコネクターナウで送ってあげてください」
「了解した」
「も~。香澄……」
麻衣は物言いたげな目でこちらを見たが、ニコニコしていたら「あとで覚えてろよ」という顔で睨まれた。
そのあと彼女は大人しく、マティアスから画像を受け取っている。
「あとで私と佑さんの写真も撮ってね」
麻衣に言うと、元気のいい返事がきた。
「了解! っていうか、マティアスさん。私と香澄の写真も撮ってくれません?」
「了解した」
双子たちの準備ができるまで、そのようにして撮影会が行われていた。
準備ができたと言われて二階のリビングに行くと、双子はグレーの着物と羽織を着て、それぞれ角帯の色が違う。
双子は「見てー」と羽織を見せてきたが、その羽織の内側には、アルメスの特徴的な柄のスカーフが使われていた。
どうやら特注らしい。
「すっご……。金持ちの遊戯……」
麻衣が怯えながら呟き、香澄もゴクリと生唾を飲み込む。
佑もマティアスも、同様に羽裏に高価な布地を使っているに違いない。
男性の着物は女性ほど表面がきらびやかではないので、裏地を華やかにしているのだとか。
それが男性の着物の〝粋〟な遊びらしい。
「じゃあ〝金持ち〟は二人に特別なフワフワをあげようか」
「特別なフワフワ?」
佑の言う事が分からずキョトンとすると、彼はリビングの隅に置いてある箱から何かを取りだした。
「んっ?」
薄紙に包まれている〝何か〟を受け取ると、割と重量がある。
こわごわと薄紙を開いてみると――。
「「いやいやいやいや」」
ツヤツヤとしたセーブルの毛皮が出てきて、香澄と麻衣は同時に突っ込んだ。
「おっもしれー!」
「シンクロした! シンクロ!」
双子は手を叩いてキャッキャと笑い、佑は圧のある微笑みで尋ねてくる。
「もしかしてセーブルは嫌いだったか?」
「そ! そうじゃなくて!」
「……香澄。御劔さんの本性ってコレ?」
引きに引きまくった麻衣が、ボソッと耳元で囁いてくる。
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