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第十七部・クリスマスパーティー 編

終わった

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「あー……。麻衣さんはそういうタイプか」

 佑はそれほど動じていなく、納得したように頷いていた。

「ちょっ……『そういうタイプか』じゃないでしょ」

 香澄は慌てて階下に向かおうとしたが、「席を外してほしい」と言われた手前ソロソロと移動していく。

 その途中でバチィンッ! と凄まじい音がし、双子のどちらかの悲鳴が聞こえた。

「ヒッ……」

(麻衣ーっ!!)

 親友が何をしているのか察し、香澄は両手で頭を抱えて懊悩する。

 いますぐ麻衣を止めたいが、自分を思っての事で、彼女なりのけじめなのだと思うと、無理に止めるのは違うかもしれない。

(でも叩く事ないじゃない! 麻衣の打撃力凄いのに! 暴力反対!)

 札幌にいた頃、麻衣と一緒にゲームセンターに行き、二人でパンチングマシーンをプレイした事があった。

 彼女はなかなかの高得点を出し、その後に香澄もプレイしたが、麻衣の半分にも及ばなかった。

 そこで親友が、かなりの打撃力を持っていると感心した記憶があった。

「凄い音がしたな……。首取れたかな」

 佑がゆっくり階段を下りながらのんびり言い、香澄は「もぉぉっ」と地団駄を踏む。

 どうやら三人への制裁は終わったらしく、麻衣が〝終わり〟を告げ、双子が爆笑しだした。

「そろそろ大丈夫かな……」

 ソロ……と顔を覗かせると、右手を庇って背中を丸めている麻衣と目が合った。

「……お、……オワリマシタカ……?」

 怖々と尋ねると、彼女はキッパリと言って頷く。

「終わった」

 麻衣はとてもスッキリした顔をしている。

 双子はまだケラケラ笑っていて、マティアスはぼんやりと立っていた。

「大丈夫ですか?」

「だいじょーぶ、だいじょーぶ」

 叩かれた頬は赤いものの、双子は本当に愉快そうなので「まぁいいか……」となる。
「はいはい、もうお開きにして寝るぞ」


 佑が保護者のように言った。

「僕らもうちょっと飲んでから寝るよ。うるさくしないから」

「昨日自分たちで買って来たワイン飲むから安心して」

「分かった」

「それじゃあ、おやすみなさい」

 麻衣は彼らに告げ、こちらに歩いてくる。

 香澄は親友の右手をギュッと握った。

「麻衣~……」

「ごめんね。でも、これでもうスッキリしたから、安心して」

「うん……」

「麻衣さん、思い切った人なんだな。なんだか頼もしいよ」

 三人で二階に上がりつつ、そんな会話をする。

「これでも、札幌にいた頃は香澄を守ってましたから」

「はは、違いない」

 二階に上がり、香澄は寝間着に着替えたあと、麻衣を誘って洗面所で一緒に歯を磨く。

「こんなに化粧品使ってるの凄いね」

 麻衣はズラリと並んだ基礎化粧品や、ジョン・アルクールの瓶を見て目を丸くする。

「ちょっと触らせて」

 麻衣はヘアターバンで前髪を上げた香澄の頬を、両手でモチモチと確かめてきた。

「わっ、すっごいモチモチすべすべ! ……で、あいっかわらずニキビ一つないね。毛穴も開いてないとか……。産毛もなくない?」

 至近距離で肌を褒められ、照れくさくて仕方がない。

「一応……、全身脱毛はしてるから……。あのね、顔の産毛がなくなると、ファンデののり良くなるよ」

「へぇ~。わっ、腕すべっすべ……。二の腕! 全然プツプツしてないね!?」

「ちょっ……。麻衣、くすぐったい」

 あちこち触られ、香澄はクスクス笑う。

「ねぇ、香澄の普段のお手入れとか、教えてよ」

「うん。なんも普通なんだけどね。メイクさんに教えてもらったのとか、私からの又教えだとうろ覚えの所もあるかもだけど、可能な限り全部伝授してしんぜよう」

「おっ、頼もしい!」

 そして洗面所でそれぞれ洗顔をする。

 香澄は拭き取り化粧水から、いつもの手順を説明していった。

 ……と言っても順番に塗っていくだけだ。

 顔を叩かず、掌で圧迫するように押さえるとか、美容液や乳液、クリーム等は手で温めると浸透が良くなる……ぐらいしか知識はないのだが。
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