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第十七部・クリスマスパーティー 編

絡んでくる三人

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 和牛盛りに牛すじ入り玉子スープ、さらにタレ味の肉が出て、締めに冷麺が出される。

 早くも食べ終えた者は、テーブルを移って乾杯しなおし、おしゃべりを楽しんでいる。

 香澄はこれから麻衣と会うので、ファジーネーブルを飲んだあとウーロン茶を飲んでいた。

 佑が冷麺を食べ終えたのを見計らって、同じフロアの社員たちが話し掛けてくる。

「あ、か、ま、つ、さーん!」

「わっ」

 その時、河野を立たせて香澄の右隣にドドッと座ってきたのは、言わずもがな成瀬、水木、荒野だ。

「酔ってますね!?」

「ぜんぜーん! まだジョッキ四杯だよ」

「飲んでるじゃないですか」

 三人は酒に強いらしく、飲みに行っても絶対に潰れないのだとか。
 もともと仕事の話をしながらチームで飲んだ時、この三人が最後まで残って意気投合したらしい。

「赤松さん、親友ちゃんが来るんだっけ?」

「そうなんです。一次会が終わったあと、空港まで迎えに行く予定で。今から楽しみです」

「私らも、赤松さんの親友だったら会ってみたいけどね~」

「でも、もともと仲良かった友達なら、私たちみたいなのを見て『なに、この新参者』って思うかも?」

「女は友達でも嫉妬するからね~」

「あはは、とってもいい子なんですけどね。どうなんでしょう?」

 麻衣は香澄が札幌からいなくなって寂しがっていた。
 香澄も「麻衣は誰かと仲良く遊びに行っているのかな?」と思うと、同性であれ彼氏であれ少し嫉妬してしまう。

「で? 家にはあの『アロクラ』の双子社長デザイナーがいて? ドイツ人イケメンももう一人いるって?」

「ン、ま、まぁ……」

「はぁ~、眼福じゃない!? いいなぁ~」

「水木さんたちだって、彼氏いるじゃないですか」

「そうなんだけどね~。もう何て言うか空気……!」

「それ!」

 成瀬と荒野が手を叩いて喜び、賛同する。

「でもクリスマスの時に聞きましたけど、プロポーズもされたんですよね?」

 クリスマス前の女子会をした時、水木が「もしかしたらプロポーズされるかも」と言っていた。それでキャーキャーお祝いをしていたのだが……。

「んー、指輪、もらったけどね」

 そう言ってかざしてみせた左手の薬指には、ダイヤの指輪が嵌まっている。

「んふふふふ……! 結婚式、呼んでくださいね?」

「もっちろーん! 赤松さんも絶対呼んでね?」

「は、はい」

 佑との結婚を匂わされ、香澄は周りを気にして小声で返事をする。

「っていうか、それってペアリングだよね? 婚約指輪とは違うの?」

 成瀬が香澄の肩を抱き、四人だけに聞こえる声でコソコソ尋ねてきた。

「そ……その……。婚約指輪の前にペアリングを暫定的に……」

「いいじゃーん。目ざとく気づいたお綺麗どころは、舌打ちしてたけどね」

 成瀬がケラケラと愉快そうに笑い、持ってきたビールを呷る。

「も、もぉ~。そういうのはいいですよ。なるべく穏便に生きたいので……」

 佑を狙う女性がいるのは重々承知だが、飯山たちの時のような思いはしたくない。

「分かってるよー。私たちも見つけ次第、ジワジワと潰してるから」

「へっ? つ、つぶ……?」

 穏やかではない言葉に目を剥く香澄に、三人は凶悪な笑みを浮かべてみせる。

「なんもー? 赤松さんは気にしなくていいの。ちょっと夢見そうなアホに、私たちが現実を教えてあげてるだけだから」

「そ、そんな……、な、何を……」

「気にしない、気にしない! 私たちは赤松さんと社長に幸せになってほしいだけ!」

「そうそう!」

「飯山たちの時みたいにならないように、赤松さんを恨まない方向でやってるから安心して」

「は、はぁ……」

 一体何をやっているんだか……と心配だが、それを聞くのもまた怖い。

 そのあとも三人と楽しく話していたのだが、やがて一次会がお開きになる二十時になった。

 すでに佑は全員分の食事代を支払い済みだ。
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