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第十七部・クリスマスパーティー 編
浦島太郎
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「ちょ……っ、ちょ、ま……っ?」
「まるで人間に掴まったリトルグレイだな」
リビングから覗きにきたマティアスが、ポケットからスマホを出してカシャッと写真を撮ってくる。
そんな彼は斎藤の手伝いをしていたのか、香澄の赤いエプロンをつけていた。
「マッ……マティアスさ……っ、ぶふぉんっ!!」
(佑さんの黒いエプロンもあるのに!)
香澄は彼の意味不明な選択肢に噴きだす。
「あぁ~、桃のいい香りがする。強めの桃だな」
「まるでどこかで風呂に入って、つけ直したみたい」
双子がわざとらしく言ってくる。
「キッ! ききき、気のせい! です!」
ドキッとしたあまり声が上ずったが、あとのまつりだ。
「はぁ~? 僕らは大人しく留守番してたのに、まさかラブホで休憩してた?」
「ラブホじゃないです! ……っ!」
墓穴を掘り、香澄は真っ青になった。
「語るに落ちたな」
ハッと双子が鼻で笑い、香澄を両側から捕まえたままズルズルとリビングに連行していく。
「へぇ? じゃあシティホテル?」
香澄はリビングのソファに座らされる。
その両側に双子がみちっと隙間なく座った。
「ち、……チガイマス……」
「へーぇ? 何が違うの? 俺たちまだ何も言ってないんだけど? 休憩ったら休むコトでしょ? 俺たちまだ日本語カンペキじゃないし~」
白々しい事を言い、双子はニヤニヤと意地悪に笑う。
(ひぃぃぃ……! 怖い! 怖い!)
その時、マティアスが声を掛けてきた。
「あまりいじめるなよ。亀をいじめてた子供たちは竜宮城にいけなかったんだから」
(それ浦島太郎! どこから仕入れたの!)
相変わらず訳の分からない突っ込みに、香澄は内心突っ込み返す。
「カスミ? 今日はちゃんと働いてた?」
アロイスに顎を摘ままれ、上を向かされる。
「は……働いて……マシタ」
「じゃあなんで目を逸らすの?」
笑いを含んだ声で尋ねられ、タラタラと冷や汗が背中に流れそうだ。
香澄はキュッと唇をすぼめ、見開いた目を斜め上に向けたまま固まる。
「あはは! 変な顔! カスミは何をしても可愛いんだけどさ」
笑いながらアロイスは香澄の顎を解放し、少し離れて座り直す。
「俺たちがいてイチャイチャできないのも分かるけど、俺たちもイチャつく相手がいないんだからね?」
ポンポンと頭を撫でられ、香澄はすべて見透かされている恥ずかしさに赤面して俯いた。
「あー、僕ら随分ゴブサタだよね。っていうかマティアスなんてあいつ、どこで何やってんだか」
キッチンで斎藤のアシスタントをしているマティアスを見て、クラウスが呆れたように言う。
(そう言えば、マティアスさんって女性と付き合ってるイメージないな。今まで彼女とかいたのかな。聞いたら失礼かな?)
そこに佑が現れて、大きな溜め息をついた。
「何やってるんだ、お前ら。散れ」
シッシッと手で双子を追い払う佑を見て、双子は不服そうに唇を突き出す。
その姿を見て、マティアスが「タロウ・ウラシマ」と呟いていたのを誰も知らない。
**
あっという間に二十七日になり、仕事納めになった。
この日は全員で大掃除だ。
実店舗では二日の初売りや福袋があり、ショップ店員いわく「地獄を見る」らしい。
香澄たちがせっせと大掃除をしている間も、今もTMタワー内にあるChief Every本店では店員たちが忙しく働いているのだろう。
だが給料はきちんと支払われているし年末手当もでるので、「苦労しているのに安月給で……」という不満はないようだ。
「赤松さん、ご機嫌ですね」
雑巾掛けをしていると松井が話し掛けてきて、「えっ?」と彼を見る。
「そんな……ダダ漏れでした?」
「今朝にお会いした時から、顔の締まりはないなと思っていました」
河野が口を挟み、思わず香澄はじわぁ……と頬を赤くする。
「今日で仕事納めですしね。お気持ちは分かりますよ」
「それもそうなんですけど、今日の夜に親友が札幌から来てくれるんです。十月ぶりに会えるので、嬉しくって……」
「あぁ、それは嬉しいですね。心置きなくお話して楽しい時間をお過ごしください」
「ありがとうございます、松井さん」
「まるで人間に掴まったリトルグレイだな」
リビングから覗きにきたマティアスが、ポケットからスマホを出してカシャッと写真を撮ってくる。
そんな彼は斎藤の手伝いをしていたのか、香澄の赤いエプロンをつけていた。
「マッ……マティアスさ……っ、ぶふぉんっ!!」
(佑さんの黒いエプロンもあるのに!)
香澄は彼の意味不明な選択肢に噴きだす。
「あぁ~、桃のいい香りがする。強めの桃だな」
「まるでどこかで風呂に入って、つけ直したみたい」
双子がわざとらしく言ってくる。
「キッ! ききき、気のせい! です!」
ドキッとしたあまり声が上ずったが、あとのまつりだ。
「はぁ~? 僕らは大人しく留守番してたのに、まさかラブホで休憩してた?」
「ラブホじゃないです! ……っ!」
墓穴を掘り、香澄は真っ青になった。
「語るに落ちたな」
ハッと双子が鼻で笑い、香澄を両側から捕まえたままズルズルとリビングに連行していく。
「へぇ? じゃあシティホテル?」
香澄はリビングのソファに座らされる。
その両側に双子がみちっと隙間なく座った。
「ち、……チガイマス……」
「へーぇ? 何が違うの? 俺たちまだ何も言ってないんだけど? 休憩ったら休むコトでしょ? 俺たちまだ日本語カンペキじゃないし~」
白々しい事を言い、双子はニヤニヤと意地悪に笑う。
(ひぃぃぃ……! 怖い! 怖い!)
その時、マティアスが声を掛けてきた。
「あまりいじめるなよ。亀をいじめてた子供たちは竜宮城にいけなかったんだから」
(それ浦島太郎! どこから仕入れたの!)
相変わらず訳の分からない突っ込みに、香澄は内心突っ込み返す。
「カスミ? 今日はちゃんと働いてた?」
アロイスに顎を摘ままれ、上を向かされる。
「は……働いて……マシタ」
「じゃあなんで目を逸らすの?」
笑いを含んだ声で尋ねられ、タラタラと冷や汗が背中に流れそうだ。
香澄はキュッと唇をすぼめ、見開いた目を斜め上に向けたまま固まる。
「あはは! 変な顔! カスミは何をしても可愛いんだけどさ」
笑いながらアロイスは香澄の顎を解放し、少し離れて座り直す。
「俺たちがいてイチャイチャできないのも分かるけど、俺たちもイチャつく相手がいないんだからね?」
ポンポンと頭を撫でられ、香澄はすべて見透かされている恥ずかしさに赤面して俯いた。
「あー、僕ら随分ゴブサタだよね。っていうかマティアスなんてあいつ、どこで何やってんだか」
キッチンで斎藤のアシスタントをしているマティアスを見て、クラウスが呆れたように言う。
(そう言えば、マティアスさんって女性と付き合ってるイメージないな。今まで彼女とかいたのかな。聞いたら失礼かな?)
そこに佑が現れて、大きな溜め息をついた。
「何やってるんだ、お前ら。散れ」
シッシッと手で双子を追い払う佑を見て、双子は不服そうに唇を突き出す。
その姿を見て、マティアスが「タロウ・ウラシマ」と呟いていたのを誰も知らない。
**
あっという間に二十七日になり、仕事納めになった。
この日は全員で大掃除だ。
実店舗では二日の初売りや福袋があり、ショップ店員いわく「地獄を見る」らしい。
香澄たちがせっせと大掃除をしている間も、今もTMタワー内にあるChief Every本店では店員たちが忙しく働いているのだろう。
だが給料はきちんと支払われているし年末手当もでるので、「苦労しているのに安月給で……」という不満はないようだ。
「赤松さん、ご機嫌ですね」
雑巾掛けをしていると松井が話し掛けてきて、「えっ?」と彼を見る。
「そんな……ダダ漏れでした?」
「今朝にお会いした時から、顔の締まりはないなと思っていました」
河野が口を挟み、思わず香澄はじわぁ……と頬を赤くする。
「今日で仕事納めですしね。お気持ちは分かりますよ」
「それもそうなんですけど、今日の夜に親友が札幌から来てくれるんです。十月ぶりに会えるので、嬉しくって……」
「あぁ、それは嬉しいですね。心置きなくお話して楽しい時間をお過ごしください」
「ありがとうございます、松井さん」
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