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第十七部・クリスマスパーティー 編

酔っ払い

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「そうだ。さっき言ってた『香澄が喜びそうな物』だけど」

 身支度を調えた佑はキッチンに向かう。
 そして冷蔵庫から小さめの瓶を取りだしてキッチン台に置いた。

「なぁに? これ」

 瓶を見ると、どうやら果実酒らしい。
 ラベルにはブドウの絵が描かれてあり、アルコール分は六%だ。

「濃厚なジュースみたいな酒だ。香澄、こういうの好きだったなと思って。ブドウの他にも一揃え用意してもらった」

 そう言って開けられた冷蔵庫の中には、桃やみかん、リンゴに梨……など様々な種類がある。

「わぁ、沢山ある」

「好きに飲んでいいよ。一本程度なら、帰るまで酔いも醒めるだろ」

「えっと……。じゃ、じゃあブドウにしよっかな」

「だと思った」

 破顔した佑は香澄の頭を撫で、自分も白ワインのミニボトルを冷蔵庫から出す。

「昼間のお酒ってワルイコト感が強いね?」

「確かに。でもバレなければ大丈夫だ」

 佑は経営者と思えない事を言い、ニヤッと笑う。
 リビングに行って酒をグラスに注ぎ合い、乾杯する。

「ん、おいし」

 濃厚なブドウの味がし、甘いのでジュースのようだ。
 けれどアルコールはしっかり入っているので、調子に乗ると悪酔いしてしまいそうだ。

「一階のラウンジカフェのケーキなら、何でも持って来てくれると思うけど」

 佑が部屋に置いてあるメニューを持って来て、香澄に見せる。

「アフターヌーンティーもあるけど、頼むか?」

「うーん……。魅力的だけど、紅茶の他にたくさん食べる物があるでしょう? さっきも言ったけど、お腹一杯になったら困るし。ケーキ単品でいいよ」

 そう言ってメニューを見て、沢山種類が書かれてある中から無難そうな茶葉を選ぶ。

「アールグレイにしようかな。ダージリンと並んで一番よく聞く名前の気がするし」

「分かった。ケーキはどうしようか?」

「うーん……。ケーキのメニューは書いてないっぽいね? 本日のカットケーキって言っても見ないと分からないし」

「電話で聞いてみようか」

「うん」

 そう言うと佑はすぐにコンシェルジュに電話をし、今日ラウンジカフェに置いているケーキを確認してくれる。
 全種類を教えてもらってから、定番のショートケーキに決めた。

「このお酒すごいね? 果汁が八十%だって。本当にジュースみたい」

「香澄は甘くて果物系が好きだから、これは好きだなって思って手配しておいたんだ」

「ん、ありがとう」

 ちみちみとブドウのジュースを飲んでいたが、アルコールが六%なのですぐ頭がポーッとしてしまう。

「美味いか?」

「うまい」

 いつものように半分ふざけて佑の口まねをし、少しご機嫌になった香澄は、佑にくっついて彼の腕を抱いた。

「ん?」

 ポンポンと佑が頭を撫でてきて、香澄はニヤニヤしたまま彼の肩に顔をすり寄せる。

「……えへへ。……好き」

「ん。俺も好きだよ」

 佑が顔を傾け、ちゅっと唇にキスをしてきた。
 フワッとワインの味がし、それが余計に特別なキスに思える。

「んーっ」

 嬉しくなった香澄は、佑の腕にぐりぐりと顔を押しつけ、足をバタバタさせる。

「まだグラスの半分も飲んでないよ。酔うの早いんじゃないか? 可愛いけど」

「酔ってないよ。ちょっとイチャイチャしてるだけ」

 香澄は、はふ……と息をつき、腕を伸ばしてグラスを取り、くぴくぴと飲む。

「紅茶とケーキが終わったら、ベッドで大人しく寝るコースだな?」

「ふふー。佑さんが大人しく寝かせてくれない癖に」

 少し言い返すと、佑は「お?」という顔をしてから破顔し、香澄の鼻をつまんできた。

「この酔っ払いが。言ったな? でも、あとに響くぐらいすると、あとであいつらが煩いからしないよ」

「本音は?」

「…………すっごいしたいけど」

 それを聞いて、香澄はケラケラと笑う。

「あんまり俺を誘惑するなよ? 悪いうさぎだな」

 佑は香澄の頭を撫でてから額にキスをし、優しく微笑む。

 そのあと少ししてから、ワゴンを押したフロアコンシェルジュがやってきて、テーブルにケーキを置き、二人分の紅茶を淹れてくれた。
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