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第十七部・クリスマスパーティー 編
心からの誓い
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心臓はバクバクとうるさく鳴り、〝あの時〟の恐怖が蘇ろうとしていた。
けれど佑は香澄を不安がらせないように、懸命に微笑んで両手を広げた。
「おいで。俺だけのメイドを抱き締めさせてくれ」
そう言うと香澄は少し安心した顔になり、微笑んでベッドの上に膝を乗り上げ、ぱふっと抱きついてきた。
鼻腔に入り込む桃の香りを吸い込み、佑はゆっくり細い息を震わせながら吐いていく。
(大丈夫だ。香澄はいま俺の腕の中にいる。ここは日本で、季節は冬で、香澄と二人きりでホテルにいる)
動転した自分に対し、もう一人の佑がゆっくり語りかける。
「……佑さん? 心臓がドキドキしてるよ? 大丈夫?」
香澄が大きな目をきょとんとさせ、心配げに佑を見上げている。
(……ああ、可愛いな)
優しく彼女の頭を撫でると、香澄は目を細めて気持ちよさそうな顔をした。
「香澄のメイドが可愛くて、胸が苦しくなったんだ」
「んふふ、ホントに大げさだよ、もぉ……」
香澄は佑の胸板にぐりぐりと顔を押しつけてくる。
無自覚に佑に愛される行動や言動を知っている彼女は、まさしく佑だけの愛玩動物――ならぬ大切なうさぎだ。
――守るんだ。
愛しさのあまり目の奥を熱くさせ、佑は自分自身に誓う。
――もう絶対に、香澄をあんな目に遭わせない。
――覚えていなくても、記憶にないということが香澄の恐怖を表している。
――絶対に、守り抜く。
香澄を抱き締めたまま腕に力を込めていたからか、香澄が少し不安そうに顔を覗き込んできた。
「……大丈夫?」
「ん、大丈夫だよ」
気遣ってくれる香澄に微笑みかけ、佑はいい匂いの婚約者の頬にキスをする。
じっ……と見つめてくる香澄は、間違いなく可愛い。
髪の毛は相変わらずまっすぐで、触るととても気持ちいい。
産毛のない頬はふんわりと柔らかく、そこに影を落とす睫毛やキラキラとした目も、すべてが好きだ。
佑はぷっくりした唇を親指でなぞり、大切そうに口づける。
「好きだよ」
まずこの言葉が口を突いて出て、「違う」と心の中で首を振る。
もう一度口づけ、今度はちゃんと香澄に届くように、彼女の耳元で囁いた。
「誰よりも、一番に愛してるよ」
囁いたのがくすぐったかったのか、香澄は少し肩をすくめてからクシャッと笑う。
「私も好きだよ。……ぁ、……あい、……してる」
恥ずかしそうに言う香澄が愛しくて、佑は笑み崩れるともう一度彼女を抱き締めた。
細い首筋に顔を埋め、香澄の香りを吸い込む。
両腕にしっかりとその存在と肉体を確かめ、佑は自分の鼓動が大分落ち着いているのを自覚した。
「俺はこれから先、一生かけて香澄を幸せにすると約束するよ」
心からの誓いを口にすると、香澄はまた笑う。
「もう、結婚式はまだ先だよ」
無邪気なその笑顔がとても愛しくて――、佑はこみ上げた涙を瞬きして誤魔化した。
「俺は今すぐ結婚してもいい」
佑はちゅっと香澄の唇にキスをしてから、左手の薬指にあるペアリングを示した。
すると香澄は自分の指に同じリングが嵌まっているのを見て、嬉しそうに笑う。
その姿が堪らなく愛しく、佑はまた香澄を抱き締めて口づけていた。
――あぁ、幸せだ。
――幸せなんだ。
――だからもう神様、俺から香澄を取り上げないでくれ。
誰にともなく祈り、佑は目を閉じて深く愛する人の香りを吸い込んだ。
(佑さん、喜んでくれるだろうな。『ご奉仕します』なんて言ったら、絶対喜びそう)
香澄はそう思ってベッドルームに入ったのだが、佑の強張った顔を見て自分が間違えた事を察した。
(え……? なに……? メイド、嫌いだった?)
特定のコスプレが嫌いというには、佑の顔は青ざめていて、ただ嫌いというよりもっと深刻なものを窺わせる。
(でも……。前にコスプレについて話していた時は、まったくそんなこと言わなかったし……)
混乱した香澄は、太腿の中ほどまでしかないミニスカートをギュッと引っ張る。
「……違う、そうじゃない……。…………可愛いよ。……ちょっと、待って。感動してるだけだから」
ぎこちなく言う佑は〝感動している〟状態ではない。
けれど佑は香澄を不安がらせないように、懸命に微笑んで両手を広げた。
「おいで。俺だけのメイドを抱き締めさせてくれ」
そう言うと香澄は少し安心した顔になり、微笑んでベッドの上に膝を乗り上げ、ぱふっと抱きついてきた。
鼻腔に入り込む桃の香りを吸い込み、佑はゆっくり細い息を震わせながら吐いていく。
(大丈夫だ。香澄はいま俺の腕の中にいる。ここは日本で、季節は冬で、香澄と二人きりでホテルにいる)
動転した自分に対し、もう一人の佑がゆっくり語りかける。
「……佑さん? 心臓がドキドキしてるよ? 大丈夫?」
香澄が大きな目をきょとんとさせ、心配げに佑を見上げている。
(……ああ、可愛いな)
優しく彼女の頭を撫でると、香澄は目を細めて気持ちよさそうな顔をした。
「香澄のメイドが可愛くて、胸が苦しくなったんだ」
「んふふ、ホントに大げさだよ、もぉ……」
香澄は佑の胸板にぐりぐりと顔を押しつけてくる。
無自覚に佑に愛される行動や言動を知っている彼女は、まさしく佑だけの愛玩動物――ならぬ大切なうさぎだ。
――守るんだ。
愛しさのあまり目の奥を熱くさせ、佑は自分自身に誓う。
――もう絶対に、香澄をあんな目に遭わせない。
――覚えていなくても、記憶にないということが香澄の恐怖を表している。
――絶対に、守り抜く。
香澄を抱き締めたまま腕に力を込めていたからか、香澄が少し不安そうに顔を覗き込んできた。
「……大丈夫?」
「ん、大丈夫だよ」
気遣ってくれる香澄に微笑みかけ、佑はいい匂いの婚約者の頬にキスをする。
じっ……と見つめてくる香澄は、間違いなく可愛い。
髪の毛は相変わらずまっすぐで、触るととても気持ちいい。
産毛のない頬はふんわりと柔らかく、そこに影を落とす睫毛やキラキラとした目も、すべてが好きだ。
佑はぷっくりした唇を親指でなぞり、大切そうに口づける。
「好きだよ」
まずこの言葉が口を突いて出て、「違う」と心の中で首を振る。
もう一度口づけ、今度はちゃんと香澄に届くように、彼女の耳元で囁いた。
「誰よりも、一番に愛してるよ」
囁いたのがくすぐったかったのか、香澄は少し肩をすくめてからクシャッと笑う。
「私も好きだよ。……ぁ、……あい、……してる」
恥ずかしそうに言う香澄が愛しくて、佑は笑み崩れるともう一度彼女を抱き締めた。
細い首筋に顔を埋め、香澄の香りを吸い込む。
両腕にしっかりとその存在と肉体を確かめ、佑は自分の鼓動が大分落ち着いているのを自覚した。
「俺はこれから先、一生かけて香澄を幸せにすると約束するよ」
心からの誓いを口にすると、香澄はまた笑う。
「もう、結婚式はまだ先だよ」
無邪気なその笑顔がとても愛しくて――、佑はこみ上げた涙を瞬きして誤魔化した。
「俺は今すぐ結婚してもいい」
佑はちゅっと香澄の唇にキスをしてから、左手の薬指にあるペアリングを示した。
すると香澄は自分の指に同じリングが嵌まっているのを見て、嬉しそうに笑う。
その姿が堪らなく愛しく、佑はまた香澄を抱き締めて口づけていた。
――あぁ、幸せだ。
――幸せなんだ。
――だからもう神様、俺から香澄を取り上げないでくれ。
誰にともなく祈り、佑は目を閉じて深く愛する人の香りを吸い込んだ。
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(え……? なに……? メイド、嫌いだった?)
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(でも……。前にコスプレについて話していた時は、まったくそんなこと言わなかったし……)
混乱した香澄は、太腿の中ほどまでしかないミニスカートをギュッと引っ張る。
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