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第十七部・クリスマスパーティー 編

デート前提の出勤

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「明日、ランチが終わったあと、就業時間まで香澄とホテルに籠もる」

 小声で言われた言葉を、香澄はゆっくり咀嚼していく。

(ホテルに……籠もる?)

 目をまん丸にして佑を見上げると、彼は両手で香澄の耳たぶをきゅっと摘まんだ。

「二週間禁欲できない訳じゃない。これがもし香澄が帰省していたとかなら、ちゃんと待てる。でも今は香澄が側にいてくれるだろ? それなのに何もできないだろ? 正直、つらい」

 雄の熱気を間近に感じ、香澄は無言で赤面する。

「だから、明日の午後はそのつもりでいて」

 ゆるりと頭を撫でられ、頷きたい――けれど、理性を働かせた。

「でも、松井さんたちには何て……」

「俺からもう話はしてある」

「えっ……!?」

 また目をまん丸にしてバッと顔を上げると、佑は安心させるように微笑んだ。

「ホテルに行くため、とは言ってないよ。『所用のため』と誤魔化してある」

「そ、そんなの……。百パーバレてるじゃない……」

 うう、と俯く香澄の頭に、トン、と佑が額をつける。

「二人とも察してくれるさ。うちにあいつらが来ている事も分かっているし、俺がどういう状況なのかも分かっている。優秀な秘書なら察しているはずだよ」

「……ワ、ワンマン社長……」

 せめてもの抵抗を……と力なく佑を睨むと、彼はクツクツと喉で笑って香澄の頬にキスをした。

「そうだよ。大切なもののためなら、何でもする悪い社長だ。賢い第二秘書なら、自分が何をすれば社長が満足するか分かっているよな?」

「う、うー……。お、お仕事……」

「明日の午後は社長室の整理でもしようかと思ったけど、それほど散らかしていない。だから、……赤松さん、同行してくれる?」

「…………はい……」

 ほぼやる事がないと言われると、逆らいようがなくなる。

「じゃあ、明日の下着は白で」

 ボソッと耳元で囁いたあと、佑は香澄の頭をポンポンと撫でて自分の部屋に入ってしまった。

(……どうしよう……。改めてエッチする約束すると……て、照れる……)

 自室に入った香澄は、プレゼントの整理をしつつ、明日の事を考えて早くも赤面する。

(最近ずっとお預けで……。いや、手とかで達かせてもらってたけど、やっぱり佑さんがほしかった訳で……)

 気が付くと香澄は、下着の入っている引き出しを見ていた。

(白って言っても色々種類があるんだけど……。あんまり攻めすぎたのは良くないのかな。攻めすぎて『エッチな事をしてほしいって思ってる』って思われるのも恥ずかしいし……。いや、してほしいけど……)

 下着は色分けされてあり、香澄は白いパンティを広げては畳み、広げては畳み……を繰り返している。
 十分ほど悩んだあと、香澄はクローゼットを開けて服について悩みだす。

(ランチ会食があるし、あまり私服っぽい服は着られないな。うーん、可愛い服でデートしたいのに……。でも仕事だから仕方ない)

 香澄は悶々と悩みながら、仕事でもデートでも通用しそうな服を探し始める。



 結局、明日の支度を終えて風呂に入り、佑と同じベッドに潜り込んだ頃には、深夜を過ぎていた。



**



 翌日、出勤する時、どことなく変な気持ちだった。

 出社するために一緒に車に乗っているのに、午後にはホテルで愛し合う予定だ。

(爛れてる……。昼ドラみたい……)

 約束されたイチャイチャがあるからこそ、香澄は変に緊張していた。

 佑からもらった腕時計にチラッと視線を走らせると、時刻は八時半過ぎ。
 渋滞を見越した上で始業に間に合う時間だ。

 運転席には小金井、助手席には松井。

 いつもの面々といつもの出勤なのに、あと四時間後にはホテルにいる。

(やばい……。緊張する……)

 もじ……と身じろぎすると、繊細なレースのパンティがお尻に食い込んだ気がした。

 チラッと左側を盗み見しても、佑はいつも通りタブレット端末に目を落としているだけだ。

 何度見ても完璧と思える美しい横顔を見て、知らずと香澄は見とれていた。

(鼻高い……。睫毛長い……。髪の毛が日差しを浴びて茶色く光ってる。目もいつもより明るい色になってる……)

 気が付けば、香澄はじぃっと佑を観察していた。

 さすがに佑も視線に気づき、「ん?」とこちらを見て微笑んでくる。
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