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第十七部・クリスマスパーティー 編
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現在Chief Everyでは佑が広告塔として活動して、起用するモデルは外部から雇っている。
それでも「ブランドの顔になる専属モデルがほしい」という話は前々からしていて、新規部署として芸能部を立ち上げる計画が進んでいた。
だが今は準備段階で、人材募集をかけるにはまだ時期が早い。
(誰なのー!! リークした人!!)
香澄は内心絶叫し、顔に出ないように努めて冷静にビジネススマイルを浮かべた。
それを見透かしたのか、マネージャーはにっこりと人の喰えない笑みを浮かべる。
「私も噂の出所は聞き及んでおりません。ですが『もしも』の話で、『もし』本当の事でしたら、良いタイミングで御劔社長に清村の事をアピールして頂けたらと思います。清村は国内のガールズコレクションでも人気のモデルですし、二十代向けのファッション誌でも何度も表紙を飾る存在感があります。〝世界が選ぶ美しい顔100〟にも選ばれていますし、きっとChief Everyの良い広告塔になれると思っております」
五十代ほどのボブヘアのマネージャーは眼鏡の奥で目を細め、指先で名刺を摘まんだままの香澄の手に、名刺をしっかり握らせる。
「ファッション界には先見の明が必要だと思いますし、芸能界も同じ事が言えると思います。これから清村は間違いなく大ブレイクします。清村自身もChief Everyの服を好んで来ていますし、御劔社長が出された本をすべて買い、友人知人に勧めているほどです」
「……光栄です」
「Chief Everyはハイブランドも展開しています。もし清村がこれをきっかけに世界的なモデルになれるとしたら、お互いにwin―winな関係になれると思うのです」
そのあと、マネージャーはモデルの簡単な紹介や売りなどを話し、香澄は相槌を打つ。
「……御劔に伝えさせて頂きます」
香澄はマネージャーの売り込みが終わったあと、ビジネススマイルを浮かべて会釈した。
引き際を察したのか、マネージャーはそれ以上しつこくせず会話を終わらせてくれた。
香澄は台本を抱き、ドクッドクッと速まる鼓動を落ち着かせる。
(リークの事は佑さんに伝えないと。それで……モデルさんの事はどうやって伝えたらいいのかな。抜け駆けなんて嫌がりそうだし。でも、本当に実力のあるモデルさんで大ブレイクしてChief Everyの顔になってくれるなら……)
グルグルと考える香澄は番組が終わるまで悩み続け、観客の拍手を聞いてハッと我に返った。
「お疲れ様です」
佑に水を渡すと、彼は「ありがとう」と言ってミネラルウォーターを飲む。
その間、香澄は先ほどのマネージャーが迎えに行ったモデル――清村加恋をさり気なく見た。
モデルというだけあり、身長は百七十センチメートル近くありそうだ。
美脚が売りなだけあり、ミニスカートからスラリと伸びたカラータイツの脚が美しい。
顔の作りも可愛いと美人が混ざっている感じで、フランスのクォーターだそうだ。
肌は色白でロングヘアも見事な艶があり、バラエティ番組のトークも頭のいい切り返しで評判が良く、あちこちに呼ばれている。
四年制の大学に通い、趣味が読書な事もあり話題が豊富なのだとか。
語学力もあり、確かにこれからグローバルに活躍できる人材なのかもしれない。
「ん? どうかしたか?」
佑は香澄がよそを見ているのに気づき、視線の先を追う。
その時、清村とマネージャーがこちらに気づいて会釈してきた。
こちらも会釈し返し、香澄は少しモヤついた気持ちのまま楽屋に戻る。
それから帰社する支度をし、小金井が運転する車に乗り込んだ。
「さっき、清村さんのマネージャーと話をしていた? カメラが回っていない時にチラッと見たけど」
車の中で尋ねられ、香澄は正直に頷く。
「名刺を受け取りました。……その、芸能部の事が外部に漏れていたようで、それを耳に挟んだらしいマネージャーさんが、清村さんを宜しく……と」
リークの事を知り、佑は深い溜息をつく。
「年末だっていうのに、嫌な事を聞いたな」
「申し訳ございません」
「いや、赤松さんのせいじゃない」
佑は脚を組み、腕も組んでもう一度溜め息をつく。
「社内に嫌な雰囲気を出したまま年を越たくないが、先手を打たなければいけない。帰社したあと早急に手を回す。芸能部の件については、重役会議で話している事と、それ以下の社員に話している情報とで差がある。……だから、自ずと犯人は分かってくる」
佑はそう言って息をつき、パン、と手を叩いた。
それでも「ブランドの顔になる専属モデルがほしい」という話は前々からしていて、新規部署として芸能部を立ち上げる計画が進んでいた。
だが今は準備段階で、人材募集をかけるにはまだ時期が早い。
(誰なのー!! リークした人!!)
香澄は内心絶叫し、顔に出ないように努めて冷静にビジネススマイルを浮かべた。
それを見透かしたのか、マネージャーはにっこりと人の喰えない笑みを浮かべる。
「私も噂の出所は聞き及んでおりません。ですが『もしも』の話で、『もし』本当の事でしたら、良いタイミングで御劔社長に清村の事をアピールして頂けたらと思います。清村は国内のガールズコレクションでも人気のモデルですし、二十代向けのファッション誌でも何度も表紙を飾る存在感があります。〝世界が選ぶ美しい顔100〟にも選ばれていますし、きっとChief Everyの良い広告塔になれると思っております」
五十代ほどのボブヘアのマネージャーは眼鏡の奥で目を細め、指先で名刺を摘まんだままの香澄の手に、名刺をしっかり握らせる。
「ファッション界には先見の明が必要だと思いますし、芸能界も同じ事が言えると思います。これから清村は間違いなく大ブレイクします。清村自身もChief Everyの服を好んで来ていますし、御劔社長が出された本をすべて買い、友人知人に勧めているほどです」
「……光栄です」
「Chief Everyはハイブランドも展開しています。もし清村がこれをきっかけに世界的なモデルになれるとしたら、お互いにwin―winな関係になれると思うのです」
そのあと、マネージャーはモデルの簡単な紹介や売りなどを話し、香澄は相槌を打つ。
「……御劔に伝えさせて頂きます」
香澄はマネージャーの売り込みが終わったあと、ビジネススマイルを浮かべて会釈した。
引き際を察したのか、マネージャーはそれ以上しつこくせず会話を終わらせてくれた。
香澄は台本を抱き、ドクッドクッと速まる鼓動を落ち着かせる。
(リークの事は佑さんに伝えないと。それで……モデルさんの事はどうやって伝えたらいいのかな。抜け駆けなんて嫌がりそうだし。でも、本当に実力のあるモデルさんで大ブレイクしてChief Everyの顔になってくれるなら……)
グルグルと考える香澄は番組が終わるまで悩み続け、観客の拍手を聞いてハッと我に返った。
「お疲れ様です」
佑に水を渡すと、彼は「ありがとう」と言ってミネラルウォーターを飲む。
その間、香澄は先ほどのマネージャーが迎えに行ったモデル――清村加恋をさり気なく見た。
モデルというだけあり、身長は百七十センチメートル近くありそうだ。
美脚が売りなだけあり、ミニスカートからスラリと伸びたカラータイツの脚が美しい。
顔の作りも可愛いと美人が混ざっている感じで、フランスのクォーターだそうだ。
肌は色白でロングヘアも見事な艶があり、バラエティ番組のトークも頭のいい切り返しで評判が良く、あちこちに呼ばれている。
四年制の大学に通い、趣味が読書な事もあり話題が豊富なのだとか。
語学力もあり、確かにこれからグローバルに活躍できる人材なのかもしれない。
「ん? どうかしたか?」
佑は香澄がよそを見ているのに気づき、視線の先を追う。
その時、清村とマネージャーがこちらに気づいて会釈してきた。
こちらも会釈し返し、香澄は少しモヤついた気持ちのまま楽屋に戻る。
それから帰社する支度をし、小金井が運転する車に乗り込んだ。
「さっき、清村さんのマネージャーと話をしていた? カメラが回っていない時にチラッと見たけど」
車の中で尋ねられ、香澄は正直に頷く。
「名刺を受け取りました。……その、芸能部の事が外部に漏れていたようで、それを耳に挟んだらしいマネージャーさんが、清村さんを宜しく……と」
リークの事を知り、佑は深い溜息をつく。
「年末だっていうのに、嫌な事を聞いたな」
「申し訳ございません」
「いや、赤松さんのせいじゃない」
佑は脚を組み、腕も組んでもう一度溜め息をつく。
「社内に嫌な雰囲気を出したまま年を越たくないが、先手を打たなければいけない。帰社したあと早急に手を回す。芸能部の件については、重役会議で話している事と、それ以下の社員に話している情報とで差がある。……だから、自ずと犯人は分かってくる」
佑はそう言って息をつき、パン、と手を叩いた。
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