1,066 / 1,544
第十七部・クリスマスパーティー 編
クリスマスパーティー開始
しおりを挟む
「すまない、俺のせいだ」
香澄は犯人が誰で、どんな人なのか知らされていない。
ただ双子と蕎麦屋にいた時にチラッと〝女〟だと聞いていた。
なので漠然と、佑のディープなファンなのかな思っていた。
エミリアの事があったし、佑の隣にいて妬みを買わないほうがおかしい。
だから、何があってもある程度の覚悟はしていた。
「気にしないで。ちょっとの傷で済んだし、私は佑さんに怪我がなくて安心しているの」
婚約者として、秘書として、二重の意味で言うと、佑は視線を落とす。
彼の代わりに双子が言った。
「まー、アレだね。自社ビル内だからってぼやぼやしてたら、一般客や社員、来客を装って何があるか分かったもんじゃない」
「これからマティアスも日本に住むって言うしさ、本気でこいつに身の回り守ってもらえば? 正規の護衛じゃ出しゃばれないところも働いてくれると思うけど」
「それが仕事になるなら、異論はない」
マティアスもそう言ってくれるが、香澄は少し違うと感じた。
「……お気持ちはありがたいのですが、マティアスさんには日本で好きな事をしてほしいです。『負い目があるから』という理由で、守ってもらいたいと思いません」
言ってから、少し言い方がきつかったかな? とすぐに言い直す。
「確かに色々ありましたけど、贖罪の気持ちをいつまでも引きずってほしくないんです。好意や親切は受け取りたいですし、友達として仲良くしたいです。でも、以前の事があったからという理由での関係は、もうやめにしたいんです」
香澄はマティアスに向かって微笑みかけ、さらに言葉を足す。
「先日誘拐されかけて助けてくださったのも、今回犯人を追いかけてくださったのも、偶然でしたし助けて頂いて本当に感謝しています。でも私を守る事を仕事にしてほしくないです。マティアスさんは秘書のスキルがあるんでしょう? 他にも投資家としての顔もあります。せっかくの能力を私のお守りで潰してほしくないんです」
香澄は丁寧に自分の気持ちを伝える。
マティアスはその言葉を真摯に受け止め、頷いた。
「……承知した。必要以上に、『役に立たないと』と思っていたかもしれない。過剰なまでにカスミに干渉しようとするのはやめるが、側にいて適役だと思った時はこれからも助けさせてほしい。勿論、犯罪に巻き込まれそうな時は問答無用で助ける」
「はい。心強いです」
香澄はニコッと笑ってから、スモークサーモンとイクラ、クリームチーズがのったカナッペを口に運んだ。
「さて、そろそろ料理ができるかな? 俺たち味にうるさいし量食うけど、大丈夫だよな? タスク」
「ああ、そのために食材を大量に取り寄せたし、早い時間から斎藤さんに来てもらっている」
挑むようなアロイスの言葉に、なぜか佑が受けて立つという顔で返事をする。
思わず笑った香澄は、「はいっ」と挙手して「私もたっぷり食べます!」と宣誓した。
料理の準備がすべて終わったあと、照明を落としてキャンドルを灯し、全員で『きよしこの夜』を歌った。
香澄はスマホで歌詞を見て日本語で歌い、残る四人は英語だ。
こういう事をするのは小学生以来の気がし、楽しくて仕方がない。
イケメン四人に対し女性が自分一人だけというのは少し恥ずかしいので、ここに麻衣がいればいいのに……と思ってしまう。
「あー、イセエビんまいね!」
焼き伊勢海老にレモン汁をかけ、もっもっと食べているクラウスが唸り、アロイスが「タラバもいけるよ」と太い脚から身を綺麗に取り、もぐもぐと食べていく。
双子は見た目が綺麗な前菜はそこそこに、海鮮にがっついていた。
「お二人とも、海鮮お好きなんですね」
「いやー、札幌行ったでしょ? スシもんまいけど、カニとかウニとか美味くてさぁ」
「目覚めたよね」
「あ、それは嬉しいです。東京にも美味しい海鮮があると思いますけど、北海道の海鮮は美味しいと思うので」
「だよねぇ。カスミも海鮮好きならさ、今度こっち来たらムール貝の酒蒸しとかバケツ一杯喰えるから、んまいもんの旅しようよ」
「ドイツだと海鮮料理ってHeringsgerichte……ニシン料理ぐらいしかないんだよね。日本みたいに海に囲まれてないからさ、それほど目ざとい物がないっていうか」
「芋だな」
「そ! 芋!」
絶妙に合いの手を入れたマティアスの「芋」に、双子がゲラゲラ笑う。
香澄はエビクリームのフィットチーネを食べつつ、ニコニコして双子達の話を聞いていた。
ちなみに佑は、ホスト役として大きなチキンを切り分けている。
香澄は犯人が誰で、どんな人なのか知らされていない。
ただ双子と蕎麦屋にいた時にチラッと〝女〟だと聞いていた。
なので漠然と、佑のディープなファンなのかな思っていた。
エミリアの事があったし、佑の隣にいて妬みを買わないほうがおかしい。
だから、何があってもある程度の覚悟はしていた。
「気にしないで。ちょっとの傷で済んだし、私は佑さんに怪我がなくて安心しているの」
婚約者として、秘書として、二重の意味で言うと、佑は視線を落とす。
彼の代わりに双子が言った。
「まー、アレだね。自社ビル内だからってぼやぼやしてたら、一般客や社員、来客を装って何があるか分かったもんじゃない」
「これからマティアスも日本に住むって言うしさ、本気でこいつに身の回り守ってもらえば? 正規の護衛じゃ出しゃばれないところも働いてくれると思うけど」
「それが仕事になるなら、異論はない」
マティアスもそう言ってくれるが、香澄は少し違うと感じた。
「……お気持ちはありがたいのですが、マティアスさんには日本で好きな事をしてほしいです。『負い目があるから』という理由で、守ってもらいたいと思いません」
言ってから、少し言い方がきつかったかな? とすぐに言い直す。
「確かに色々ありましたけど、贖罪の気持ちをいつまでも引きずってほしくないんです。好意や親切は受け取りたいですし、友達として仲良くしたいです。でも、以前の事があったからという理由での関係は、もうやめにしたいんです」
香澄はマティアスに向かって微笑みかけ、さらに言葉を足す。
「先日誘拐されかけて助けてくださったのも、今回犯人を追いかけてくださったのも、偶然でしたし助けて頂いて本当に感謝しています。でも私を守る事を仕事にしてほしくないです。マティアスさんは秘書のスキルがあるんでしょう? 他にも投資家としての顔もあります。せっかくの能力を私のお守りで潰してほしくないんです」
香澄は丁寧に自分の気持ちを伝える。
マティアスはその言葉を真摯に受け止め、頷いた。
「……承知した。必要以上に、『役に立たないと』と思っていたかもしれない。過剰なまでにカスミに干渉しようとするのはやめるが、側にいて適役だと思った時はこれからも助けさせてほしい。勿論、犯罪に巻き込まれそうな時は問答無用で助ける」
「はい。心強いです」
香澄はニコッと笑ってから、スモークサーモンとイクラ、クリームチーズがのったカナッペを口に運んだ。
「さて、そろそろ料理ができるかな? 俺たち味にうるさいし量食うけど、大丈夫だよな? タスク」
「ああ、そのために食材を大量に取り寄せたし、早い時間から斎藤さんに来てもらっている」
挑むようなアロイスの言葉に、なぜか佑が受けて立つという顔で返事をする。
思わず笑った香澄は、「はいっ」と挙手して「私もたっぷり食べます!」と宣誓した。
料理の準備がすべて終わったあと、照明を落としてキャンドルを灯し、全員で『きよしこの夜』を歌った。
香澄はスマホで歌詞を見て日本語で歌い、残る四人は英語だ。
こういう事をするのは小学生以来の気がし、楽しくて仕方がない。
イケメン四人に対し女性が自分一人だけというのは少し恥ずかしいので、ここに麻衣がいればいいのに……と思ってしまう。
「あー、イセエビんまいね!」
焼き伊勢海老にレモン汁をかけ、もっもっと食べているクラウスが唸り、アロイスが「タラバもいけるよ」と太い脚から身を綺麗に取り、もぐもぐと食べていく。
双子は見た目が綺麗な前菜はそこそこに、海鮮にがっついていた。
「お二人とも、海鮮お好きなんですね」
「いやー、札幌行ったでしょ? スシもんまいけど、カニとかウニとか美味くてさぁ」
「目覚めたよね」
「あ、それは嬉しいです。東京にも美味しい海鮮があると思いますけど、北海道の海鮮は美味しいと思うので」
「だよねぇ。カスミも海鮮好きならさ、今度こっち来たらムール貝の酒蒸しとかバケツ一杯喰えるから、んまいもんの旅しようよ」
「ドイツだと海鮮料理ってHeringsgerichte……ニシン料理ぐらいしかないんだよね。日本みたいに海に囲まれてないからさ、それほど目ざとい物がないっていうか」
「芋だな」
「そ! 芋!」
絶妙に合いの手を入れたマティアスの「芋」に、双子がゲラゲラ笑う。
香澄はエビクリームのフィットチーネを食べつつ、ニコニコして双子達の話を聞いていた。
ちなみに佑は、ホスト役として大きなチキンを切り分けている。
12
お気に入りに追加
2,509
あなたにおすすめの小説
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜
湊未来
恋愛
「ねぇ、本当に陰キャの童貞だって信じてたの?経験豊富なお姉さん………」
30歳の誕生日当日、彼氏に呼び出された先は高級ホテルのレストラン。胸を高鳴らせ向かった先で見たものは、可愛らしいワンピースを着た女と腕を組み、こちらを見据える彼の姿だった。
一方的に別れを告げられ、ヤケ酒目的で向かったBAR。
「ねぇ。酔っちゃったの………
………ふふふ…貴方に酔っちゃったみたい」
一夜のアバンチュールの筈だった。
運命とは時に残酷で甘い………
羊の皮を被った年下オオカミ君×三十路崖っぷち女の恋愛攻防戦。
覗いて行きませんか?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
・R18の話には※をつけます。
・女性が男性を襲うシーンが初回にあります。苦手な方はご注意を。
・裏テーマは『クズ男愛に目覚める』です。年上の女性に振り回されながら、愛を自覚し、更生するクズ男をゆるっく書けたらいいなぁ〜と。
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
若妻シリーズ
笹椰かな
恋愛
とある事情により中年男性・飛龍(ひりゅう)の妻となった18歳の愛実(めぐみ)。
気の進まない結婚だったが、優しく接してくれる夫に愛実の気持ちは傾いていく。これはそんな二人の夜(または昼)の営みの話。
乳首責め/クリ責め/潮吹き
※表紙の作成/かんたん表紙メーカー様
※使用画像/SplitShire様
【R18】鬼上司は今日も私に甘くない
白波瀬 綾音
恋愛
見た目も中身も怖くて、仕事にストイックなハイスペ上司、高濱暁人(35)の右腕として働く私、鈴木梨沙(28)。接待で終電を逃した日から秘密の関係が始まる───。
逆ハーレムのチームで刺激的な日々を過ごすオフィスラブストーリー
法人営業部メンバー
鈴木梨沙:28歳
高濱暁人:35歳、法人営業部部長
相良くん:25歳、唯一の年下くん
久野さん:29歳、一個上の優しい先輩
藍沢さん:31歳、チーフ
武田さん:36歳、課長
加藤さん:30歳、法人営業部事務
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる