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第十七部・クリスマスパーティー 編

また、そのうち ☆

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「香澄の肌、甘くて美味しいよ。とてもいい香りがする」

「ゃ……っ、あ……っ」

 耳元で囁いてくる佑の声が、艶っぽい。

 この世のどの声より、佑の声が好きだ。
 低くて艶やかで、情事の時は熱ですこし掠れる声。

 その声が耳朶を震わせただけで、香澄はジクン……と子宮が疼くのを感じていた。

「た……、すく、……さ、ん……」

 小さな声で彼の名を呼ぶと、顔を上げた佑が「ん?」と目を細め微笑んだ。

 その幸せそうな笑顔を見ると、もう何も言えなくなる。
 香澄は口内に溜まった唾液をゴクッと嚥下し、潤んだ目で佑を見つめ返す。

「……可愛い」

 佑は独白するように呟き、香澄に覆い被さってキスをしてきた。

 柔らかな唇で、何度も唇をついばまれる。

 ちゅっちゅっとリップ音がし、唇のあわいを舐められて香澄の唇は自然と開いていく。

 そこにヌルリと佑の舌が滑り込み、香澄は興奮しきったまま彼を受け入れた。
 ぬちゅ、ぐちゅ、と舌が絡まり、その滑らかな感触に意識が攪拌されていく。

 口内を蹂躙されただけで、体全体を佑に支配された気がした。

「ぁ……、あ、……ふ、――――ん、――ン」

 香澄も懸命に佑の舌を舐め返し、太腿でしっかりと佑の胴を挟む。

 ドクッドクッと胸が高鳴り、頭の中が佑で一杯になる。

 その時――、

「カスミー?」

 階下から双子の声が聞こえ、香澄はビクッと大きく体を跳ねさせた。

「……ちっ」

 佑は舌打ちをし、忌々しげに溜め息をつく。

「……また、そのうち」

 佑は香澄の額にキスをし、仕方がないというように微笑んだ。

「ん……。うん……」

 香澄はドキドキと高鳴る胸を押さえ、ササッと乱れた着衣を整えた。
 ブラジャーを付け直している間、佑はベストやシャツを脱いでハンガーに掛ける。

「……そう言えば、あいつら少しきちんとした格好をしていたな」

 彼は思い出したように呟いて、自分のウォークインクローゼットに向かった。

 香澄は鏡で服の乱れがないか確認し、先に下におりるべきか悩んでから、佑を待つ事にした。

 やがて佑はターコイズブルーのシャツにチャコールグレーのベスト、イエローみの強いゴールドのネクタイを締めて部屋に戻ってきた。

 ズボンは黒いテーパードパンツで、どこかイタリア男性を思わせるコーディネートがしゃれている。

「お待たせ。下に行こうか」

「うん」

(何て思われてるかな……。恥ずかしい)

 言い訳を必死に考えて纏めきれないまま、一階に着いてしまった。

「随分時間が掛かったね?」

 リビングの入り口では、双子が狛犬のように立って、ニヤニヤとチェシャ猫のように笑っている。

「そ……その……」

「ちょっとマーキングをしてた」

 言い淀む香澄とは対照的に、佑はサラリととんでもない事を言い、キッチンにいる斎藤たちに挨拶をしに行った。

「えっ? えうぅ、うっ、……そのっ、あのっ」

 香澄は佑が落とした爆弾をどう回収したものかとうろたえるが、双子は顔を見合わせて呆れたように笑うだけだ。

 誤魔化せないまま、香澄もキッチンの様子を見にいった。

 キッチンではオードブルはすでにできあがり、メインのチキンもオーブンで焼いている。

 香ばしい匂いが鼻腔に届くなか、パティシエがクリスマスケーキの準備を進め、アシスタントはパスタ類を茹でてソースを作っている。

 飲み物は地下のワインセラーに入っている物を出すようだ。

 テーブルの上には赤白数本のワインがあり、シャンパンもある。
 冷却が必要なボトルは、ワインクーラーに入れられていた。

 アロイスが、キッチンにいる佑に話しかける。

「タスクおかえり。お前とクリスマス過ごすの、久しぶりでない?」

「……確かに。そっちに入り浸っていた頃以降かもしれない」

 佑はキッチンを確認したあと、香澄を伴ってリビングのソファに座る。
 そして気遣わしげに尋ねてきた。

「香澄、背中の傷は大丈夫か?」

「え? うん。平気、平気」

 動くとピリッと痛む程度だが、大した傷ではない。

 香澄のグラスにシャンパンを注いだ佑は、溜め息をつく。

 そして謝罪した。
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