1,062 / 1,536
第十七部・クリスマスパーティー 編
クリスマスの妖精
しおりを挟む
「いやぁ、女の子のこのルーズっぽい髪っていいよねぇ。隙のあるうなじってかぶりつきたくなる」
「ふぁっ!」
そう言ったクラウスにうなじをくすぐられ、香澄は肩を跳ねさせてくすぐったがる。
「クラウス、Warte」
いきなりマティアスがドイツ語の犬用コマンドを出し、クラウスが「だーかーらー!」と彼を振り向く。
「タスクもだけどさ、僕らに犬用コマンド使うのやめてよねー」
嫌がりつつも、その顔は笑っているので彼の本音が分からない。
その間、アロイスは香澄の目蓋にアイプライマーを塗りハイライトとコンシーラーで目元のくすみを飛ばしてから、パウダーで押さえる。
「下地のあとにパウダーしておくと、マスカラが落ちにくいよ」
そしてビューラーで睫毛を上げ、「クリスマス用」と赤みがかったブラウンやゴールドのアイシャドウでグラデーションを作っていく。
「このグリッター可愛いし使おうか」
そう言って偏光パールのグリッターを、目蓋の中央と下目蓋にトントンとつけていく。
「ん、可愛いね。クリスマスの妖精みたいだ」
アロイスは素のまま口説く様子もなく呟き、香澄のメイクを続ける。
「マスカラつけるから、ちょっと半眼気味になって」
「はい」
言われたとおり伏し目になると、アロイスはマスカラ下地を付けた後に、ボルドーのカラーマスカラをつけ、仕上げに金色のラメマスカラを睫毛に絡める。
それからノーズシャドウ、アイブロウで眉毛を描いたあと、やはりボルドーのアイブロウマスカラで眉毛を赤っぽく仕上げていく。
「さて、仕上げにリップを美味しそうな色にしよっか。俺好みのグラデリップにするよ」
「グラデ……ーションリップ?」
きょとんとする香澄の目の前でリップやリップティントの色を確認しつつ、アロイスが返事をする。
「そ。仕組みは簡単なワケ。コンシーラーでさっき輪郭消したでしょ? 薄い色のティントを全体に塗って、あとから同系色かつ色の濃いのを中心にポンポン置くんだ。で、指とか筆でぼかしたら終わり。クラ、何系統がいいと思う?」
香澄に答え、アロイスは弟に意見を尋ねる。
「んー、目元とかにボルドー使ったから、薄めの色のがいいんでない? 僕は個人的にチェリーレッドみたいな美味しそうな色が好きだけど。今使うにはちょっと濃いかな?」
「あー、俺もその色味好き。強い女の場合、ダークカラーのリップも似合ってて好きだけど。ヌードカラーのナチュラル感もいいよね。まー、今のカスミの場合、可愛い系だよね。透明感重視……と」
言いながら、アロイスは沢山リップの入った引き出しを確認する。
「この仕上がり見たら、タスク怒るぞ。たっのしみ」
くくく、と笑っている双子を見ていると、何とも言えない気持ちになる。
「お二人とも、佑さんに怒られるの好きなんですか?」
そう言った途端、双子がバッと香澄を見て物凄い顔をした。
「まさか! そんな趣味ないよ!」
「そうそう! 嫌がらせをするのが楽しいだけでさ!」
(まったくもう……)
呆れている香澄の目の前でリップカラーが決まったらしく、アロイスが香澄に指示を出してくる。
「カスミ、ちょっと唇を半開きにしてみて。そうそう」
言われた通り少し唇を開くと、リップブラシを使ってアロイスが先にリッププランパーを塗り、「んってして」とティッシュオフさせてくる。
それから、リップティントを唇に重ねてきた。
塗られるまま鏡を見ていると、リップカラーはプルンとしたピンクだ。
「リップティントとかグロス、オイルとか、チップタイプになっていると直接唇につけがちだけど、唾液がついて雑菌沸きやすくなるから、なるべくリップブラシを使うといいよ」
言われて香澄はギクッとする。
確かにそのまま使っている美容オイルは、チップの部分が少し匂うような気がして気になっていたのだ。
「化粧品も消費期限があるからねー。まぁ、こんだけ取りそろえておきながら、全部数か月以内に使うとか無理ゲーだけど。コスメって見た目変わんないように思えるけど、皮脂のついたブラシとかつけてると、そっから雑菌広がってくからね。ブラシもマメに洗わないと」
メイクブラシは専用のクリーナーで定期的に洗っているので、一応そこはクリアだと香澄は思った。
だが今は口を開いていて、クラウスに何か返事ができる状況ではない。
「カスミ、唇閉じないでね」
リップティントを塗り終えたアロイスは、唇の内側に塗るワントーン濃い色のリップを取りだし、ティッシュで軽く拭いたリップブラシで塗ってくる。
(はずかし……)
すぐ目の前にイケメンがいて、唇を見られているのは非常に恥ずかしい。
一生懸命呼吸を抑えているものの、アロイスとは言えイケメンの手に自分の吐息や鼻息がかかっていると思うと、恥ずかしくてのたうち回りたくなる。
「ふぁっ!」
そう言ったクラウスにうなじをくすぐられ、香澄は肩を跳ねさせてくすぐったがる。
「クラウス、Warte」
いきなりマティアスがドイツ語の犬用コマンドを出し、クラウスが「だーかーらー!」と彼を振り向く。
「タスクもだけどさ、僕らに犬用コマンド使うのやめてよねー」
嫌がりつつも、その顔は笑っているので彼の本音が分からない。
その間、アロイスは香澄の目蓋にアイプライマーを塗りハイライトとコンシーラーで目元のくすみを飛ばしてから、パウダーで押さえる。
「下地のあとにパウダーしておくと、マスカラが落ちにくいよ」
そしてビューラーで睫毛を上げ、「クリスマス用」と赤みがかったブラウンやゴールドのアイシャドウでグラデーションを作っていく。
「このグリッター可愛いし使おうか」
そう言って偏光パールのグリッターを、目蓋の中央と下目蓋にトントンとつけていく。
「ん、可愛いね。クリスマスの妖精みたいだ」
アロイスは素のまま口説く様子もなく呟き、香澄のメイクを続ける。
「マスカラつけるから、ちょっと半眼気味になって」
「はい」
言われたとおり伏し目になると、アロイスはマスカラ下地を付けた後に、ボルドーのカラーマスカラをつけ、仕上げに金色のラメマスカラを睫毛に絡める。
それからノーズシャドウ、アイブロウで眉毛を描いたあと、やはりボルドーのアイブロウマスカラで眉毛を赤っぽく仕上げていく。
「さて、仕上げにリップを美味しそうな色にしよっか。俺好みのグラデリップにするよ」
「グラデ……ーションリップ?」
きょとんとする香澄の目の前でリップやリップティントの色を確認しつつ、アロイスが返事をする。
「そ。仕組みは簡単なワケ。コンシーラーでさっき輪郭消したでしょ? 薄い色のティントを全体に塗って、あとから同系色かつ色の濃いのを中心にポンポン置くんだ。で、指とか筆でぼかしたら終わり。クラ、何系統がいいと思う?」
香澄に答え、アロイスは弟に意見を尋ねる。
「んー、目元とかにボルドー使ったから、薄めの色のがいいんでない? 僕は個人的にチェリーレッドみたいな美味しそうな色が好きだけど。今使うにはちょっと濃いかな?」
「あー、俺もその色味好き。強い女の場合、ダークカラーのリップも似合ってて好きだけど。ヌードカラーのナチュラル感もいいよね。まー、今のカスミの場合、可愛い系だよね。透明感重視……と」
言いながら、アロイスは沢山リップの入った引き出しを確認する。
「この仕上がり見たら、タスク怒るぞ。たっのしみ」
くくく、と笑っている双子を見ていると、何とも言えない気持ちになる。
「お二人とも、佑さんに怒られるの好きなんですか?」
そう言った途端、双子がバッと香澄を見て物凄い顔をした。
「まさか! そんな趣味ないよ!」
「そうそう! 嫌がらせをするのが楽しいだけでさ!」
(まったくもう……)
呆れている香澄の目の前でリップカラーが決まったらしく、アロイスが香澄に指示を出してくる。
「カスミ、ちょっと唇を半開きにしてみて。そうそう」
言われた通り少し唇を開くと、リップブラシを使ってアロイスが先にリッププランパーを塗り、「んってして」とティッシュオフさせてくる。
それから、リップティントを唇に重ねてきた。
塗られるまま鏡を見ていると、リップカラーはプルンとしたピンクだ。
「リップティントとかグロス、オイルとか、チップタイプになっていると直接唇につけがちだけど、唾液がついて雑菌沸きやすくなるから、なるべくリップブラシを使うといいよ」
言われて香澄はギクッとする。
確かにそのまま使っている美容オイルは、チップの部分が少し匂うような気がして気になっていたのだ。
「化粧品も消費期限があるからねー。まぁ、こんだけ取りそろえておきながら、全部数か月以内に使うとか無理ゲーだけど。コスメって見た目変わんないように思えるけど、皮脂のついたブラシとかつけてると、そっから雑菌広がってくからね。ブラシもマメに洗わないと」
メイクブラシは専用のクリーナーで定期的に洗っているので、一応そこはクリアだと香澄は思った。
だが今は口を開いていて、クラウスに何か返事ができる状況ではない。
「カスミ、唇閉じないでね」
リップティントを塗り終えたアロイスは、唇の内側に塗るワントーン濃い色のリップを取りだし、ティッシュで軽く拭いたリップブラシで塗ってくる。
(はずかし……)
すぐ目の前にイケメンがいて、唇を見られているのは非常に恥ずかしい。
一生懸命呼吸を抑えているものの、アロイスとは言えイケメンの手に自分の吐息や鼻息がかかっていると思うと、恥ずかしくてのたうち回りたくなる。
11
お気に入りに追加
2,501
あなたにおすすめの小説
【R18】鬼上司は今日も私に甘くない
白波瀬 綾音
恋愛
見た目も中身も怖くて、仕事にストイックなハイスペ上司、高濱暁人(35)の右腕として働く私、鈴木梨沙(28)。接待で終電を逃した日から秘密の関係が始まる───。
逆ハーレムのチームで刺激的な日々を過ごすオフィスラブストーリー
法人営業部メンバー
鈴木梨沙:28歳
高濱暁人:35歳、法人営業部部長
相良くん:25歳、唯一の年下くん
久野さん:29歳、一個上の優しい先輩
藍沢さん:31歳、チーフ
武田さん:36歳、課長
加藤さん:30歳、法人営業部事務
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
隠れ御曹司の愛に絡めとられて
海棠桔梗
恋愛
目が覚めたら、名前が何だったかさっぱり覚えていない男とベッドを共にしていた――
彼氏に浮気されて更になぜか自分の方が振られて「もう男なんていらない!」って思ってた矢先、強引に参加させられた合コンで出会った、やたら綺麗な顔の男。
古い雑居ビルの一室に住んでるくせに、持ってる腕時計は超高級品。
仕事は飲食店勤務――って、もしかしてホスト!?
チャラい男はお断り!
けれども彼の作る料理はどれも絶品で……
超大手商社 秘書課勤務
野村 亜矢(のむら あや)
29歳
特技:迷子
×
飲食店勤務(ホスト?)
名も知らぬ男
24歳
特技:家事?
「方向音痴・家事音痴の女」は「チャラいけれど家事は完璧な男」の愛に絡め取られて
もう逃げられない――
不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました
入海月子
恋愛
有本瑞希
仕事に燃える設計士 27歳
×
黒瀬諒
飄々として軽い一級建築士 35歳
女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。
彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。
ある日、同僚のミスが発覚して――。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
私の婚活事情〜副社長の策に嵌まるまで〜
みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
身長172センチ。
高身長であること以外はいたって平凡なアラサーOLの佐伯花音。
婚活アプリに登録し、積極的に動いているのに中々上手く行かない。
名前からしてもっと可愛らしい人かと…ってどういうこと? そんな人こっちから願い下げ。
−−−でもだからってこんなハイスペ男子も求めてないっ!!
イケメン副社長に振り回される毎日…気が付いたときには既に副社長の手の内にいた。
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※完結済み、手直ししながら随時upしていきます
※サムネにAI生成画像を使用しています
お兄ちゃんはお医者さん!?
すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。
如月 陽菜(きさらぎ ひな)
病院が苦手。
如月 陽菜の主治医。25歳。
高橋 翔平(たかはし しょうへい)
内科医の医師。
※このお話に出てくるものは
現実とは何の関係もございません。
※治療法、病名など
ほぼ知識なしで書かせて頂きました。
お楽しみください♪♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる