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第十六部・クリスマス 編

現在、目覚めた香澄

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「タスクはもう行きなよ。お前が怒るような事はもうしないから。カスミは大人しく寝かせておく。起きたあとも脅かさないよ」

「頼んだぞ」

 思っていたより双子が理解を示した事で、佑は安心したようだ。
 彼は溜め息をついて眉間を揉み、玄関に向かう。

「マティアス、何か飲むもんちょーだい。で、説明して」

 クラウスに言われ、マティアスは何度目かの説明をし始めた。



**



 そして現在。

 香澄はぼんやりとしたままソファに座り、マティアスが出してくれた水をたっぷり飲んだ。
 それから、さらにオレンジジュースをコクコクと飲む。

「カスミ、疲労とストレスで倒れたんだってさ。仕事復帰して、気持ちが張り詰めてたんじゃない?」

 アロイスに言われ、香澄は考えながらグラスをテーブルに置く。

「そう……なんでしょうか。割と調子はいいと思っていたんですが、……そう、なのかな」

 疲れていなかったと言えば疲れていない。

 けれど、復帰したばかりなので、ミスをしてはいけないとか、これ以上松井や河野に迷惑を掛けてはいけないと思っていた。

 香澄は自分の事を、あまりストレスを抱えない性格だと思っていた。

 佑といると美味しい物を食べられるし、何より毎日好きな人に甘えられる。
 運動も自宅のジムでできるので、運動不足でストレスが溜まる事もない。

(でも仕事が始まると、そうもいかないっていう事なのかな……)

「カスミはまじめな日本人代表だから、きっと知らないうちにストレス溜めてたんだよ。どう? 明日から僕らと一緒に遊ぶ事を仕事にしない?」

「もぉ、そうはいきませんって」

 クラウスの軽口に香澄は思わず笑い、微かに残る頭痛を宥めるように頭を押さえる。

「頭痛い? 頭痛薬飲む?」

 するとアロイスが提案し、香澄はもらおうか悩む。

「多分、タスクの事だから一緒に飲む胃薬も用意してあると思うけど……。あ! 何も食ってないもんね! 俺たちも腹減ったし、何か頼もうか!」

 クラウスがそう言い、パンと手で太腿を打つとすぐにスマホを見る。

「何食べたい? 俺たちは何でもいいけど。日本のデリバリーって何があんの?」

 そう言いながら、アロイスは「都内、デリバリー」と口しながら検索する。

「カスミってファストフードとか食べるの? 痩せてるから、そういうもん食べなさそう」

 クラウスに言われ、香澄はギクッと体を強張らせる。

(そ、そう言えば太って体重落とし切れてないままだった……! 気づいてないのかな)

「そんな事ありませんよ? ピザとかハンバーガーとか大好きです。前にお二人とデートした時も、イタリアンだったじゃないですか」

 大型モールに行った時の事を言うと、二人が「あー」と頷く。

「じゃあ、この店にしようか。URLをシェアするから、自分の食いたいの探して」

 クラウスが言ったあと、マティアスのスマホが震える。

「カスミには俺から送るね」

 アロイスが言ったあと、すぐ香澄のスマホがピコンと鳴り、同じサイトを開いた。

「どう? 食べられそう?」

「はい、大丈夫です。食欲がないとかはまったくないので」

「頼もしいね! カスミは美味そうに食べるから大好きだよ」

「あ、ありがとうございます……」

 赤面してお礼を言いつつも、香澄はさり気なく手でお腹を庇っていた。

「まずマルゲリータは食うでしょ? あと、カスミって確かナス好きだったしょ。あ、でもこれ辛いやつ? トウガラシマークがついてる」

「激辛じゃないなら食べられますよ?」

「よし、なら頼もうか。あと二枚」

「そんなに!?」

 一人一枚の計算になるので、香澄は思わず声を上げる。

「え、だって食うでしょ?」

「食うよ?」

「俺も大丈夫だ」

 クラウスが指差し確認をすると、アロイス、マティアスが頷く。

「じゃー決まりね。んで、この受賞ピザも頼んでみよっか。あと、マリナーラどう?」

「いいよー」

「俺は何でも構わない」

「わ、私も何でも食べます」

 クラウスがほぼ一人で決め、「じゃあ次はパスタいこう!」とページをスクロールする。

「僕、イカスミとペンネアラビアータは食べたいな。アロ、いいだろ?」

「いいよ。どうせ食べ物の趣味も一緒だし」

 さすが双子という感じで、ポンポンと決まっていく。
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