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第十五部・針山夫婦 編
美鈴からのプレゼント
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「私たち、今まで佑くんに近付く女には厳しかったけど、佑くんが選んだ女の子は別なの。駄目女ホイホイではあるけど、あれだけ痛い目を見たあとなら、見極める目は持ってると思うしね」
「そうそう。前カノもしっかりした子だ――いてぇっ」
出雲が前カノについて話し始めた時、美鈴が思いきり出雲の脛を蹴った。
「あんた、本当に空気読まないわね。香澄ちゃんがいるのに前カノを褒めるとかって何事? お前の頭に入っているモノはスポンジか!」
「スポンジってなぁ」
出雲が脛を押さえて表情を歪める傍ら、佑は〝スポンジ〟がヒットしたらしく、香澄の肩に顔を伏せて震え始めた。
「壊れた人感センサーでもいいわよ」
ダメ押しのように言ったセリフに、佑はさらに笑う。
香澄も笑いつつ、彼が人前でこんなに笑うのを見て「珍しいな」と思った。
そして二人に感謝する。
「今日、お目にかかれて良かったです。社長として、恋人としての佑さんは知っていましたが、お友達の前での佑さんは知りませんでした。お二人に愛されているんだなぁって思えましたし、気を許した雰囲気の彼を見られたのも大収穫です」
そう言った香澄を、出雲と美鈴は微笑ましく見る。
「ほんとーにいい子ね、香澄ちゃん」
「そうそう。今までこいつの周りにいた女は男友達にも妬いてたよなぁ。本当に香澄ちゃんみたいな、まともな子を選んで良かった」
相当鈍いのか、出雲がまた失言をする。
そんな夫を、美鈴が笑顔のまま全力でどついた。
「いでっ!」
「あのっ、いいんです。私、大体聞いていますから」
「え? やだ。佑くん香澄ちゃんに昔の事を話したの?」
途端に眉を顰める美鈴に、佑は説明する。
「隠し通す選択もあったけど、香澄に聞く覚悟があるというなら、話してもいいと思ったんだ」
「ふーん……」
美鈴はスラリとした脚を組み替え、香澄を見つめる。
「印象に似合わずしっかりしてるのね」
「いえ、すっごい気にしちゃう性格です。落ち着いてもないですし。……でも好きな人なら、マイナスな部分もまるっと受け入れたいな……と思っています」
「はぁ、できた子だなぁ。美鈴、お前も俺の事を受け入れろよ」
「どの口が言うか」
また言い合いをする二人を見て、佑が耳打ちをしてきた。
「ああ見えて、出雲は美鈴さんが側にいないと眠れないタチなんだ」
「すごい愛妻家……」
香澄が目を見開いた時、出雲が半眼になって口を挟んできた。
「佑? 何か余計な事を言ったな?」
「いいや?」
勝ち誇ったように微笑む佑を見て全員で笑ったあと、美鈴が「そうだ」と立ち上がった。
そしてリビングのチェストに置いてあった小さな手提げ袋を持ってきた。
「はい、香澄ちゃん。私からの誕生日プレゼント」
「ありがとうございます」
「開けてみて」
「はい」
紙袋は軽く、中から箱が出てくる。
蓋を開けると綿が敷き詰められた上に、小さなビニール袋に入ったイヤリングがツーセット入っていた。
「わぁ……可愛い。ハンドメイドですか?」
「そう。私のお気に入りの作家さんなの」
さすが女性なだけあり、目の付け所が違う。
佑が贈ってくるジュエリーと違って、気軽に受け取れる。
札幌の大角梅坂屋でも時々ハンドメイドの催事をしていて、それらの作品を見るのが好きだった。
手作業で作っているので決して安くはないけれど、その分人と被る事が少ないので、特別な物を身につけている気持ちになれる。
「綺麗でしょ。揺れる系はつけていて気分がアガるわよね」
「とても繊細な作りですね。綺麗……」
耳元からシャラリと花が咲き零れるイヤリングは、華やかで美しい。
一つは青紫系の花で、もう一つはピンク系の桜だ。
香澄はいまつけているイヤリングを外し、桜モチーフの物を耳につけてみた。
「佑さん、どう?」
耳元の髪を掻き上げて微笑むと、佑が微妙な顔をして褒めてくる。
「そうそう。前カノもしっかりした子だ――いてぇっ」
出雲が前カノについて話し始めた時、美鈴が思いきり出雲の脛を蹴った。
「あんた、本当に空気読まないわね。香澄ちゃんがいるのに前カノを褒めるとかって何事? お前の頭に入っているモノはスポンジか!」
「スポンジってなぁ」
出雲が脛を押さえて表情を歪める傍ら、佑は〝スポンジ〟がヒットしたらしく、香澄の肩に顔を伏せて震え始めた。
「壊れた人感センサーでもいいわよ」
ダメ押しのように言ったセリフに、佑はさらに笑う。
香澄も笑いつつ、彼が人前でこんなに笑うのを見て「珍しいな」と思った。
そして二人に感謝する。
「今日、お目にかかれて良かったです。社長として、恋人としての佑さんは知っていましたが、お友達の前での佑さんは知りませんでした。お二人に愛されているんだなぁって思えましたし、気を許した雰囲気の彼を見られたのも大収穫です」
そう言った香澄を、出雲と美鈴は微笑ましく見る。
「ほんとーにいい子ね、香澄ちゃん」
「そうそう。今までこいつの周りにいた女は男友達にも妬いてたよなぁ。本当に香澄ちゃんみたいな、まともな子を選んで良かった」
相当鈍いのか、出雲がまた失言をする。
そんな夫を、美鈴が笑顔のまま全力でどついた。
「いでっ!」
「あのっ、いいんです。私、大体聞いていますから」
「え? やだ。佑くん香澄ちゃんに昔の事を話したの?」
途端に眉を顰める美鈴に、佑は説明する。
「隠し通す選択もあったけど、香澄に聞く覚悟があるというなら、話してもいいと思ったんだ」
「ふーん……」
美鈴はスラリとした脚を組み替え、香澄を見つめる。
「印象に似合わずしっかりしてるのね」
「いえ、すっごい気にしちゃう性格です。落ち着いてもないですし。……でも好きな人なら、マイナスな部分もまるっと受け入れたいな……と思っています」
「はぁ、できた子だなぁ。美鈴、お前も俺の事を受け入れろよ」
「どの口が言うか」
また言い合いをする二人を見て、佑が耳打ちをしてきた。
「ああ見えて、出雲は美鈴さんが側にいないと眠れないタチなんだ」
「すごい愛妻家……」
香澄が目を見開いた時、出雲が半眼になって口を挟んできた。
「佑? 何か余計な事を言ったな?」
「いいや?」
勝ち誇ったように微笑む佑を見て全員で笑ったあと、美鈴が「そうだ」と立ち上がった。
そしてリビングのチェストに置いてあった小さな手提げ袋を持ってきた。
「はい、香澄ちゃん。私からの誕生日プレゼント」
「ありがとうございます」
「開けてみて」
「はい」
紙袋は軽く、中から箱が出てくる。
蓋を開けると綿が敷き詰められた上に、小さなビニール袋に入ったイヤリングがツーセット入っていた。
「わぁ……可愛い。ハンドメイドですか?」
「そう。私のお気に入りの作家さんなの」
さすが女性なだけあり、目の付け所が違う。
佑が贈ってくるジュエリーと違って、気軽に受け取れる。
札幌の大角梅坂屋でも時々ハンドメイドの催事をしていて、それらの作品を見るのが好きだった。
手作業で作っているので決して安くはないけれど、その分人と被る事が少ないので、特別な物を身につけている気持ちになれる。
「綺麗でしょ。揺れる系はつけていて気分がアガるわよね」
「とても繊細な作りですね。綺麗……」
耳元からシャラリと花が咲き零れるイヤリングは、華やかで美しい。
一つは青紫系の花で、もう一つはピンク系の桜だ。
香澄はいまつけているイヤリングを外し、桜モチーフの物を耳につけてみた。
「佑さん、どう?」
耳元の髪を掻き上げて微笑むと、佑が微妙な顔をして褒めてくる。
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