【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

文字の大きさ
上 下
955 / 1,559
第十五部・針山夫婦 編

ママの先輩として

しおりを挟む
「やだぁ! めっちゃ香澄ちゃんと話合う! しかも可愛い! 佑くん、この子ちょうだい!」

「あげませんよ」

 ご機嫌になった美鈴に、佑が冷静に突っ込む。
 そんな二人のやり取りはいつもの事なのか、出雲がのんびりと声を掛ける。

「これから飯の用意するから、ちょっと待っててくれ。佑はハイボールでいいか?」

「ああ」

 キッチンには料理人が二人いて、食事を用意してくれているところだ。

「香澄ちゃんは好きな酒ある? 食前酒にシャンパンやシードルどう?」

「あ、頂きます」

 反射的に頷いたあと、佑がつけ加えた。

「香澄はあまり辛いのは得意じゃない。甘めを頼む」

「りょーかい」

 出雲はピ、と指でサインを送りつつ、カロンと舌を鳴らす。
 そのままダイニングにあるバーカウンターに向かい、佑のハイボールなどを作り始めた。

 夫を見守りながら、腕を組んだ美鈴が言う。

「あいつ、ちょっと留学したからって、いちいちキザっぽいのよね」

 妻の言葉を聞き、出雲が笑いながらあ「聞こえてるぞ」と言う。

「美鈴さん、りらちゃんは?」

 佑の問いに、美鈴が微笑んだ。

「さっきおっぱいあげて、いま寝てるところ。爆睡してるからちょっと顔見せてあげる」

 そう言って彼女はちょいちょいと手招きをし、リビングの奥にあるベビーベッドに歩み寄る。
 子供を見られると知り、香澄はワクワクする。

「りらちゃんって言うんですか? 女の子?」

「そうなの。私たちの出会いはお見合いなんだけど、『結婚するか』って思ったの、札幌に旅行に行った時だったの」

「え? 札幌?」

 思わぬところで地元が出て、香澄は目を瞬かせる。

「丁度ライラックまつりの時期でね、カラッと晴れていて暑すぎもなく、すっごい気持ち良かったわ。広々とした所をドライブして、最後に札幌市内を見てライラックがとても綺麗でいいなーって思ったのね。……で、女の子が生まれたら、リラっていう名前になったらロマンチックかなーって思った」

 ベビーベッドの中では赤ん坊がすうすうと寝ていて、その無垢な寝顔に思わず胸の奥がキュッとなる。

「……可愛い……。りらちゃん。初めまして」

 小さな声で呼びかけると、りらの口元がムズムズと動く。
 思わず佑を見ると、彼も微笑んでいた。

「佑ー、ハイボール」
「ああ」

 バーカウンターから出雲が呼び、佑が応じる。
 香澄は美鈴とりらを覗き込み、作り物のように小さな手に感嘆の溜め息を漏らす。

「あの……美鈴さん」

「ん?」

 小さな声で話し掛けると、美鈴も同じぐらいの声で反応してくれる。

「その……もし良かったら、いつになるか分からないですが、ママの先輩として、何か教えてもらえたら嬉しいです」

 将来出産した時の事を匂わせると、美鈴がにっこりと笑った。

「勿論! その頃には二人目も産んでる予定だから、がっつり頼って!」

 美鈴はガシッと肩を組み、耳元でボソボソと返事をしてくる。

 佑から話を聞いていた時は「気が合うかな?」と心配になっていたが、実際こうして話してみると、うまが合い話しやすい。

「なんだか美鈴さん、お姉さんみたいで話しやすいです。頼りにしちゃいますね」

 そう言うと、彼女はクシャッと笑った。

「私、今年三十歳になったし、香澄ちゃんよりお姉さんよ。いつでも頼って。あと、お互い予定があったら女子会もしよ。香澄ちゃんに教えたい、いい雰囲気のカフェやレストランがあるの」

「はい!」

 誘いを受け、香澄は嬉しくなって頷く。

「ママ友はいるけど、皆〝お嬢様〟っていう感じで息が詰まるのよね。私、スポーツカーや馬を乗り回すタイプなの。習い事も叩き込まれたけど、着物を着て大人しくしているのが性に合わなくて」

「う、馬?」

 思わず声に出した香澄に、美鈴はにっこり笑う。

「そう、馬。普段は馬場に預けてお世話を頼んでいるんだけど、週末になると乗りに行くわね。今度香澄ちゃんも連れてってあげる。気持ちいいわよ」

「ありがとうございます。馬ってこの人生でノータッチでして」

「でしょー」

 美鈴はりらの側を離れ、ソファに向かう。
しおりを挟む
感想 560

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

オオカミ課長は、部下のウサギちゃんを溺愛したくてたまらない

若松だんご
恋愛
 ――俺には、将来を誓った相手がいるんです。  お昼休み。通りがかった一階ロビーで繰り広げられてた修羅場。あ~課長だあ~、大変だな~、女性の方、とっても美人だな~、ぐらいで通り過ぎようと思ってたのに。  ――この人です! この人と結婚を前提につき合ってるんです。  ほげええっ!?  ちょっ、ちょっと待ってください、課長!  あたしと課長って、ただの上司と部下ですよねっ!? いつから本人の了承もなく、そういう関係になったんですかっ!? あたし、おっそろしいオオカミ課長とそんな未来は予定しておりませんがっ!?  課長が、専務の令嬢とのおつき合いを断るネタにされてしまったあたし。それだけでも大変なのに、あたしの住むアパートの部屋が、上の住人の失態で水浸しになって引っ越しを余儀なくされて。  ――俺のところに来い。  オオカミ課長に、強引に同居させられた。  ――この方が、恋人らしいだろ。  うん。そうなんだけど。そうなんですけど。  気分は、オオカミの巣穴に連れ込まれたウサギ。  イケメンだけどおっかないオオカミ課長と、どんくさくって天然の部下ウサギ。  (仮)の恋人なのに、どうやらオオカミ課長は、ウサギをかまいたくてしかたないようで――???  すれ違いと勘違いと溺愛がすぎる二人の物語。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...