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第十四部・東京日常 編
初期Chief Everyのメンバー
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「もっと自分を大切にしてほしいな。どうしてそうなったの?」
「……理由というか……。根幹に関わる部分を話すと、香澄は気を悪くすると思う」
それだけですぐに察した。
「元カノ関係?」
「……ああ」
「いいよ。今は私が彼女だもの。どんな理由があったか理解して、佑さんを支えたい。元カノの影響も含めて、今の佑さんを愛せるのは私の特権だと思っているから」
以前札幌に帰省した時は、過去に週刊誌に書かれたモデルとの話を聞いて、嫉妬してしまった。
だがあれから色々あったし、彼がモテすぎる人だと自分でも十分理解した。
佑から進んで言わないだけで、本当は何人と付き合っていたか分からない。
彼は香澄を尊重してくれていて、元カノと比べたり、わざわざ話題に出したりしない。
それが今の香澄の自信に繋がっていた。
もう未練がないと分かるからこそ、今度こそ彼の過去をすべて受け入れたいと思った。
「話して? 佑さんを理解するために聞きたい」
香澄は正面から佑を見つめ、優しくキスをした。
「……ありがとう」
佑は苦笑いし、二十五歳の時にあった事を語り始めた。
**
Chief Everyの初期オフィスは、ビルのワンフロアを借りた状態から始まった。
そしてたった三年で、自社ビルの建設をするほど、彼の商売は順調だった。
都内の一等地に巨大な自社ビルを建てる時点で、一千億円以上の費用がかかる。
実行するためにアドラーから融資してもらえたのは、家庭環境に恵まれていたといっていい。
だが、ただ孫だから甘やかして金を貸してもらった訳ではない。
事業計画書を提出し、しっかりした経営プランをプレゼンして、「十分やっていける」と辣腕の経営者に認められたからこそだ。
いくら孫が可愛くても、アドラーは倒産する恐れのある計画に金をださない。
自社ビル建設を計画しだした頃には、佑の人脈はかなりのものになっていた。
本当はパーティーはあまり好きではないが、双子に嫌というほど連れて行かれたのもあり、表向き社交的に振る舞うのは得意になった。
とにかく大勢の人に会い、名刺を渡して自分を売り込み、自社ビルの商業施設に出店してほしい企業への依頼もした。
国内で事業を展開していく前には、すでに欧米で「アドラーの孫」として知られていた。
海外では年功序列が重んじられていないのもあり、あちらで知り合った経営者、有名人には、「君の考え方やビジネスビジョンは面白いね」と評価されていた。
ビジネスパートナーになる真澄とは、高校以来の親友だ。
CEPのメインデザイナーとなる朔や、彼らの友人でありChief Everyのメインデザイナーになる人たちとは、国内のファッションショーで出会った。
佑がアパレルの道に向かうつもりだと知っていたアドラーは、ファッションウィークへの招待状がくるたびに孫を誘っていた。
祖父を頼るのは情けない気持ちもあるが、自分でガンガン稼げるようになるまでは〝投資〟を受けていると考えるようにした。
日本で行われるコレクションにも頻繁に行くようになり、デザイナーやモデルたちと知り合った。
eホーム御劔として不動産事業を展開するのは、Chief Everyが軌道に乗り、CEPの知名度も上がったあとだった。
かつての恋人、朝丘美智瑠が入社したのは、Chief Everyがまだビルのフロアを借りていた頃だ。
彼女は、都内のお嬢様大学を卒業した。
祖父母が熱海にある老舗旅館を経営していて、身なりやマナーなどもきちんとした人だった。
習い事の一環として茶道や華道を嗜んでいたのもあり、周囲からはお嬢様と認識されていたようだ。
佑が仕事に熱中していると、細やかなところに気を配ってくれた。
やがて「社長のお世話は朝丘さんに任せておけば大丈夫」と言われるほどになった。
当時の佑は、仕事が忙しくて恋愛を楽しむ気持ちになれないでいた。
学生時代からずっと、華やかな双子や優れた兄たちを見て過ごし、「自分も早く一人前にならなければ」と思っていた。
祖父があのクラウザー社の会長なのもあり、佑の目標はとても高い場所に位置づけられていた。
そんな折り、忘年会のあとに美智瑠を家まで送る途中で、彼女から告白された。
「……理由というか……。根幹に関わる部分を話すと、香澄は気を悪くすると思う」
それだけですぐに察した。
「元カノ関係?」
「……ああ」
「いいよ。今は私が彼女だもの。どんな理由があったか理解して、佑さんを支えたい。元カノの影響も含めて、今の佑さんを愛せるのは私の特権だと思っているから」
以前札幌に帰省した時は、過去に週刊誌に書かれたモデルとの話を聞いて、嫉妬してしまった。
だがあれから色々あったし、彼がモテすぎる人だと自分でも十分理解した。
佑から進んで言わないだけで、本当は何人と付き合っていたか分からない。
彼は香澄を尊重してくれていて、元カノと比べたり、わざわざ話題に出したりしない。
それが今の香澄の自信に繋がっていた。
もう未練がないと分かるからこそ、今度こそ彼の過去をすべて受け入れたいと思った。
「話して? 佑さんを理解するために聞きたい」
香澄は正面から佑を見つめ、優しくキスをした。
「……ありがとう」
佑は苦笑いし、二十五歳の時にあった事を語り始めた。
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Chief Everyの初期オフィスは、ビルのワンフロアを借りた状態から始まった。
そしてたった三年で、自社ビルの建設をするほど、彼の商売は順調だった。
都内の一等地に巨大な自社ビルを建てる時点で、一千億円以上の費用がかかる。
実行するためにアドラーから融資してもらえたのは、家庭環境に恵まれていたといっていい。
だが、ただ孫だから甘やかして金を貸してもらった訳ではない。
事業計画書を提出し、しっかりした経営プランをプレゼンして、「十分やっていける」と辣腕の経営者に認められたからこそだ。
いくら孫が可愛くても、アドラーは倒産する恐れのある計画に金をださない。
自社ビル建設を計画しだした頃には、佑の人脈はかなりのものになっていた。
本当はパーティーはあまり好きではないが、双子に嫌というほど連れて行かれたのもあり、表向き社交的に振る舞うのは得意になった。
とにかく大勢の人に会い、名刺を渡して自分を売り込み、自社ビルの商業施設に出店してほしい企業への依頼もした。
国内で事業を展開していく前には、すでに欧米で「アドラーの孫」として知られていた。
海外では年功序列が重んじられていないのもあり、あちらで知り合った経営者、有名人には、「君の考え方やビジネスビジョンは面白いね」と評価されていた。
ビジネスパートナーになる真澄とは、高校以来の親友だ。
CEPのメインデザイナーとなる朔や、彼らの友人でありChief Everyのメインデザイナーになる人たちとは、国内のファッションショーで出会った。
佑がアパレルの道に向かうつもりだと知っていたアドラーは、ファッションウィークへの招待状がくるたびに孫を誘っていた。
祖父を頼るのは情けない気持ちもあるが、自分でガンガン稼げるようになるまでは〝投資〟を受けていると考えるようにした。
日本で行われるコレクションにも頻繁に行くようになり、デザイナーやモデルたちと知り合った。
eホーム御劔として不動産事業を展開するのは、Chief Everyが軌道に乗り、CEPの知名度も上がったあとだった。
かつての恋人、朝丘美智瑠が入社したのは、Chief Everyがまだビルのフロアを借りていた頃だ。
彼女は、都内のお嬢様大学を卒業した。
祖父母が熱海にある老舗旅館を経営していて、身なりやマナーなどもきちんとした人だった。
習い事の一環として茶道や華道を嗜んでいたのもあり、周囲からはお嬢様と認識されていたようだ。
佑が仕事に熱中していると、細やかなところに気を配ってくれた。
やがて「社長のお世話は朝丘さんに任せておけば大丈夫」と言われるほどになった。
当時の佑は、仕事が忙しくて恋愛を楽しむ気持ちになれないでいた。
学生時代からずっと、華やかな双子や優れた兄たちを見て過ごし、「自分も早く一人前にならなければ」と思っていた。
祖父があのクラウザー社の会長なのもあり、佑の目標はとても高い場所に位置づけられていた。
そんな折り、忘年会のあとに美智瑠を家まで送る途中で、彼女から告白された。
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