上 下
887 / 1,550
第十四部・東京日常 編

くしゃみ ☆

しおりを挟む
「……俺の扱いが軽くなってきたな」

「だって一年も一緒にいれば、佑さんが見た目ほどスマートイケメンじゃないのは分かるもん。そういう人には相応の扱いをします」

「スマートじゃないか?」

「思っていたよりずっと変態だし、私に対して考え方が偏ってるし、色々こじらせてると思う」

「…………」

 素直に言うと、地味に効いたのか佑は黙ってしまった。

「そういう所、ひっくるめて好きだけどね」

 よしよしと、佑の頭を撫でて額にキスをすると、彼は諦めたように笑った。

「面倒臭い男の機嫌を直すには、婚約者の慰めが必要だから、一緒に風呂に入ってくれないかな?」

「いいですよ」

 わざとらしい言い方をして二人でクスッと笑う。

 そのあと、支度をしてバスルームに向かった。



**




 体と髪を洗ってジェットバスに入った二人は、窓から東京の夜景を見下ろしながら、濃厚なキスを交わす。

「ん……、んぅ」

 佑の手が滑らかな香澄の肌を這い、背中やお尻をすべすべと撫でる。

 香澄はキスをしながら佑の胸板に体を押しつけ、ぷくんと勃起した乳首を擦りつけていた。

 佑は乳首で感じないが、香澄が胸をすり寄せ乳首同士を擦れさせると、気持ちよさそうな反応をする。

 以前なら恥ずかしくて積極的になれなかった。

 だが一年経った今は、大好きな人と一緒に気持ち良くなるため、ある程度積極的になれていた。

「香澄……、舌出して」

「ん……ぁ」

 小さく口を開けると、佑が舌に指を置いてヌルヌルと撫でてきた。

「ん、……く」

 思わず舌を引っ込めて唾を飲み込むと、まだ口内にある佑の指が、香澄の前歯の裏側をたどってきた。

「ふぁあ……っ、あ、……ぁん……んんー、ぅ」

 香澄はゾクゾクッと腰を震えさせ、佑にしがみつく。

 トロンとした目で佑を見つめると、彼は悠然と微笑んで香澄の口内を掻き混ぜ続ける。

「んむぅ」

 香澄は力の入らない目で佑を睨み、彼の指をチュッとしゃぶった。
 するとフェラチオのように指を出し入れされ、さらに体が火照らせる。

 んくっと唾を飲み込むと、佑が指を引き抜いてその指をしゃぶった。

「や……だ、もう……。変態……」

 香澄は佑の胸板を軽く叩き、抗議を示す。

 佑は微笑んで何か言いかけたが、サッと横を向いて手で口元を覆い、くしゃみをした。

 鼻を啜った彼は、困惑した顔で小さく首を傾げた。

「噂されてる?」

 くしゃみと言えばな事を言ってみたが、佑は難しい顔をして「もしかして……」と呟く。

「今日会食した人が風邪を引いていたんだ。勿論、正面からくしゃみや咳をかけられる事はなかったけど、……個室にいたからうつったかな」

「大変、しっかり温まらないと。……あれ? 体を温めるで合ってる?」

「大丈夫、大丈夫」

 風邪の対応で首を傾げていた香澄に、佑は軽い調子で言う。
 けれど香澄は真面目な顔で首を横に振った。

「駄目。佑さんは社長さんなの。ちょっとの風邪でも甘く見ちゃいけないんだから」

「じゃあ、香澄が温めてくれるか? ……こことか」

 そう言って佑は香澄の手を握り、勃ち上がっている屹立を触らせる。
 香澄は手の中に硬く漲ったモノを感じ、赤面して佑を睨んだ。

「……そういうの、よくないと思います。社長」

 まじめな話をしているのにふざけられたし、おまけにセクハラっぽい。

 むー、と彼を睨むが、香澄は無意識に彼の亀頭を撫で、ゆるゆると手で竿をさすってしまう。

「うちの女性秘書なら、看病のためにどんな事でもしてくれると思っていたけど」

「女性秘書にそういうのを求めるの、よくないです」

 香澄はふくれっ面のまま手を動かし、我ながら言葉と行動が伴っていない。

「ごめん。訴えないでくれ」

 佑は軽く笑ったあと、ちゅっとキスをして、冗談の終わりを示す。
 了解した香澄は小さく笑ったあと、心配そうな表情で言った。

「でも本当に今日は温かくして寝てね。エッチも駄目。治ったらしてもいいけど、それまでは禁止」

「そんな手で俺を煽ってるのに、生殺しにするのか」

 香澄はまだ屹立に触れていたので、余計に佑は恨みがましい目で見てくる。

「えーと……これは……」

 さすがに気まずくなった香澄は、そっと手を離した。

 けれど二人の体の間にはガチガチに強張ったモノがあり、誤魔化しようがない。
しおりを挟む
感想 556

あなたにおすすめの小説

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

上司は初恋の幼馴染です~社内での秘め事は控えめに~

けもこ
恋愛
高辻綾香はホテルグループの秘書課で働いている。先輩の退職に伴って、その後の仕事を引き継ぎ、専務秘書となったが、その専務は自分の幼馴染だった。 秘めた思いを抱えながら、オフィスで毎日ドキドキしながら過ごしていると、彼がアメリカ時代に一緒に暮らしていたという女性が現れ、心中は穏やかではない。 グイグイと距離を縮めようとする幼馴染に自分の思いをどうしていいかわからない日々。 初恋こじらせオフィスラブ

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~

椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」 私を脅して、別れを決断させた彼の両親。 彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。 私とは住む世界が違った…… 別れを命じられ、私の恋が終わった。 叶わない身分差の恋だったはずが―― ※R-15くらいなので※マークはありません。 ※視点切り替えあり。 ※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~

雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」 夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。 そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。 全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。 だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。 車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。 あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

『逃れられない淫らな三角関係』番外編 ヘルプラインを活用せよ!

臣桜
恋愛
『逃れられない淫らな三角関係』の番外編です。 やりとりのある特定の読者さまに向けた番外編(小冊子)です。 他にも色々あるのですが、差し障りのなさそうなものなので公開します。 (他の番外編は、リアルブランド名とかを出してしまっている配慮していないものなので、ここに載せるかは検討中)

処理中です...