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第十四部・東京日常 編

友達からのプレゼント

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 もらったプレゼントを一度家に置き、成瀬たちへの土産を持っていくために、香澄は早めに場を辞した。

 白金台の家まで帰ろうとして、公共機関を使うと時間が掛かると気づいた。

(タクシーを使ったほうが、お二人にに迷惑をかけないだろうな)

 そう思い、二人と同乗して御劔邸まで戻った。

「またホテルに戻る時、連絡します」

 そう言って久住と佐野には、離れで待機してもらう事にした。

 母屋に入ろうとすると、離れから円山から出てきて「お荷物が届いています」と言われる。

(誰からだろう?)

 確認すると、麻衣をはじめ、学生時代の友人から誕生日プレゼントが届いていた。

 英語の宛名があるのは、ドイツからだ。
 だが想像以上に荷物が多く、よくよく見てみるとイタリアからも荷物が届いていた。

「わぁ……! 沢山」

 思っていた以上の人にお祝いしてもらい、ありがたいやら申し訳ないやらだ。

「台車がありますから、母屋まで運びます」

「ありがとうございます」

 円山が倉庫から台車をだし、香澄宛の荷物を載せて母屋まで運んでくれる。
 玄関までついて鍵を開けると、リビングまで荷物を置いてくれた。

「どうもありがとうございます」

「いいえ」

 円山に頭を下げたあと、香澄はリビングで開封の儀に取り掛かる。
 引き出しからカッターを出し、まず麻衣の荷物から開けた。

「おお」

 出てきたのはデパコス売り場でおなじみのコスメだ。
 薄ピンクの可愛らしい紙袋を開けると、秋を意識したボルドーのアイシャドウパレットと、ヘアマスクが入っていた。

「可愛い。ありがとう、麻衣。で、こっちは?」

 別に黒い紙袋があり、香澄はそれをカサカサと開く。
 薄紙の中から出て来たのは、明らかに下着のテロリとした生地だ。

 ぴらん、と目の前にかざすと……。

「おぱんつ」

 手にあるのは、黒地にフューシャピンクのリボンがついたパンティで、しかも大事な部分に布がないオープンクロッチショーツだ。

「……もぉぉぉ……」

 きっとこの場に麻衣がいたら、ゲラゲラと笑い転げているだろう。
 麻衣は昔から、セクシーな物をジョークグッズとしてプレゼントする癖があった。

「……まぁ、ありがたくもらっておくけど……」

 口では文句をいいながらも、香澄は笑っている。

 そして麻衣からのバースデーカードを開き、微笑んだ。

『元気ですか? その後、御劔さんと仲直りした? っていうか御劔さんの苗字、画数が多くて書くとキツイね。普段使わない漢字だけど、何回も書いてるうちに覚えそう。』

「そうそう、そうなんだよね」

 香澄は手紙に相槌を打ち、クスクス笑う。

『香澄が札幌から発って以来、ニセコでクソガキに絡まれた事とか、ヨーロッパで豪遊した話とか、また直接会って色々話したいな。次はいつぐらいに札幌に戻ってこられるのかな。年末年始、こっちに戻る時はぜひ教えてね。』

 麻衣がこの荷物を札幌から送る時には、まだ年末の計画を話していなかった。

「年末年始、東京で会えるといいね」

『東京に行って垢抜けた香澄先輩にオシャレコスメをプレゼントします。もっとオシャレになってください。あと個人的に香澄の根性の入った直毛のファンなので、ヘアケアもどうぞ。それから魔法の布は、有事に役立ててください。』

「魔法の……布!」

 親友の表現力に、香澄はケラケラ笑う。

「ありがとう! 麻衣」

 それから麻衣以外の友人からのプレゼントを開封する。

 学生時代の交友関係は、狭く深くだった。
 だから今でも繋がりのある人数は多いとは言いがたい。

 それでも、社会人になれば学生時代の友達とは疎遠になると言われているなかで、誕生日プレゼントを贈ってくれる友人がいるのはありがたい。

 SNSのアカウント連絡先も、そう多くの人には教えていない。
 だから「おめでとう」と連絡がくる数も、対応しきれる程度だ。

 香澄は懐かしい友達の顔を思い浮かべ、プレゼントを開けてバースデーカードや手紙を読む。

 手紙の中身は予想通りで、祝いの言葉の他、東京での生活を聞きたがっていたり、佑のプライベートも知りたがっていた。

「んまー……。んー、……あはは」

 その文章を見て香澄は苦笑いする。
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