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第十四部・東京日常 編
女性陣からのプレゼント
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「一目惚れされて『運命の相手だ』と言われて、あまりにも押しが強いからうっかり一晩過ごしてしまったのよね? 事あるごとにうちに贈り物が届くし、メッセージや電話だって頻繁にしているんでしょう? もう遠距離恋愛してるって認めてしまえば? 面倒な子ね」
「えぇーっ!? ドラマチック……!」
香澄は甘い話を聞いてジィン……、と感動し、もだもだと体を揺する。
「まだ付き合ってない」
澪はムスッとして言い、スモークサーモンの入ったサンドイッチに手を伸ばす。
「澪さんツンデレじゃないですか~。可愛い……」
「もぉ、やめてよ。あいつ、断っても断ってもめげないから、こっちもげんなりしてるの。放っておいても頻繁に連絡がきて辟易としているんだから、こういう時まで話題にしたくないの」
そう言いながらも、彼女の耳はほんのりと赤い。
香澄はあたたかーく笑って注がれた紅茶を飲み、「おいしー」とさらにあたたかーく笑う。
ちなみに今回の茶器は、イギリスの有名陶器で揃えられている。
色の変わり具合が分かりやすいように、ガラスのティーポットで淹れられた紅茶は、それ以上渋くならないように、温められた陶器のポットに移し替えられた。
「陽菜さんは、律さんとどうやって出会ったんですか?」
好奇心から尋ねると、陽菜は曖昧に微笑む。
「私の話は……、ちょっと複雑なので話すと長くなっちゃいます。ほら、今日の主役は香澄さんですし」
「じゃあ、またいつか聞かせてくださいね」
あまり話したくないのだと察し、香澄は雰囲気が悪くならないように返事をする。
その気遣いを受け取り、陽菜は安堵したように笑った。
「澪さんのプレゼント、開けさせてもらいますね」
彼女からの贈り物は、やはり美容系だ。
「わ」
香澄もよく知っているデパコスのショッパーだったので、そのブランドの商品かと思いきや、中には色んなブランドの物が入っている。
「最近、私パックに嵌まってて。っていうか、もとからこだわってはいたんだけど。その中でもお勧めだと思ったシートパックの詰め合わせにしたから、気兼ねなく使って!」
そう言って澪はビシッとサムズアップし、紅茶を飲む。
「ありがとうございます」
(さすが美意識高い……)
香澄もフェイスパックはするものの、それほどこだわりはない。
何せ知識があまりないので、「このブランドは有名だからいいのかな?」ぐらいにしか思っていない。
シートパックとクレイパックの効果の違いもよく分からず、「潤えばなんでもいいよね」と、ある物を使っているだけだ。
澪に向かってなむなむと手を合わせたあと、陽菜からのチョコレートをニコニコして取り出す。
「私のプレゼントは言わなくても分かりますよね」
「ふふ、そうですね」
「お勧めなので、ぜひ糖分補給したい時にどうぞ」
「ありがとうございます」
高級ブランドのチョコレートの箱は、一番大きなサイズだ。
万単位する三段のボックスを手にありがたい重みを感じると、香澄は「心していただきます」とお辞儀をした。
「佑とはうまくいってるの?」
焼きたてのスコーンにクロテッドクリームを塗り、アンネが尋ねてくる。
「あ……。……はい、ご心配おかけしました。少しガタガタしてしまったのですが、一緒にヨーロッパを回っている間、また元の関係になれました」
「そう、なら良かったわ」
ここで優しく笑いかけないのが、アンネらしい。
澄ましてスコーンを食べているが、心配してくれているのは分かったので心が暖かくなる。
そんなアンネを見て、澪がニヤァ……と笑う。
「こんな反応だけど、ママったらずっと家で『香澄さんがどうしてるか、佑に電話したほうがいい?』って何回もパパに確認してたんだよ」
「澪」
暴露する娘を、アンネがジロリと睨む。
陽菜はいわずもがな、「分かっています」という顔でニコニコしていた。
「ありがとうございます」
そんな彼女たちにも少しずつ慣れてきて、最初の緊張はどこかへ香澄は楽しくアフターヌーンティーを楽しめた。
**
「えぇーっ!? ドラマチック……!」
香澄は甘い話を聞いてジィン……、と感動し、もだもだと体を揺する。
「まだ付き合ってない」
澪はムスッとして言い、スモークサーモンの入ったサンドイッチに手を伸ばす。
「澪さんツンデレじゃないですか~。可愛い……」
「もぉ、やめてよ。あいつ、断っても断ってもめげないから、こっちもげんなりしてるの。放っておいても頻繁に連絡がきて辟易としているんだから、こういう時まで話題にしたくないの」
そう言いながらも、彼女の耳はほんのりと赤い。
香澄はあたたかーく笑って注がれた紅茶を飲み、「おいしー」とさらにあたたかーく笑う。
ちなみに今回の茶器は、イギリスの有名陶器で揃えられている。
色の変わり具合が分かりやすいように、ガラスのティーポットで淹れられた紅茶は、それ以上渋くならないように、温められた陶器のポットに移し替えられた。
「陽菜さんは、律さんとどうやって出会ったんですか?」
好奇心から尋ねると、陽菜は曖昧に微笑む。
「私の話は……、ちょっと複雑なので話すと長くなっちゃいます。ほら、今日の主役は香澄さんですし」
「じゃあ、またいつか聞かせてくださいね」
あまり話したくないのだと察し、香澄は雰囲気が悪くならないように返事をする。
その気遣いを受け取り、陽菜は安堵したように笑った。
「澪さんのプレゼント、開けさせてもらいますね」
彼女からの贈り物は、やはり美容系だ。
「わ」
香澄もよく知っているデパコスのショッパーだったので、そのブランドの商品かと思いきや、中には色んなブランドの物が入っている。
「最近、私パックに嵌まってて。っていうか、もとからこだわってはいたんだけど。その中でもお勧めだと思ったシートパックの詰め合わせにしたから、気兼ねなく使って!」
そう言って澪はビシッとサムズアップし、紅茶を飲む。
「ありがとうございます」
(さすが美意識高い……)
香澄もフェイスパックはするものの、それほどこだわりはない。
何せ知識があまりないので、「このブランドは有名だからいいのかな?」ぐらいにしか思っていない。
シートパックとクレイパックの効果の違いもよく分からず、「潤えばなんでもいいよね」と、ある物を使っているだけだ。
澪に向かってなむなむと手を合わせたあと、陽菜からのチョコレートをニコニコして取り出す。
「私のプレゼントは言わなくても分かりますよね」
「ふふ、そうですね」
「お勧めなので、ぜひ糖分補給したい時にどうぞ」
「ありがとうございます」
高級ブランドのチョコレートの箱は、一番大きなサイズだ。
万単位する三段のボックスを手にありがたい重みを感じると、香澄は「心していただきます」とお辞儀をした。
「佑とはうまくいってるの?」
焼きたてのスコーンにクロテッドクリームを塗り、アンネが尋ねてくる。
「あ……。……はい、ご心配おかけしました。少しガタガタしてしまったのですが、一緒にヨーロッパを回っている間、また元の関係になれました」
「そう、なら良かったわ」
ここで優しく笑いかけないのが、アンネらしい。
澄ましてスコーンを食べているが、心配してくれているのは分かったので心が暖かくなる。
そんなアンネを見て、澪がニヤァ……と笑う。
「こんな反応だけど、ママったらずっと家で『香澄さんがどうしてるか、佑に電話したほうがいい?』って何回もパパに確認してたんだよ」
「澪」
暴露する娘を、アンネがジロリと睨む。
陽菜はいわずもがな、「分かっています」という顔でニコニコしていた。
「ありがとうございます」
そんな彼女たちにも少しずつ慣れてきて、最初の緊張はどこかへ香澄は楽しくアフターヌーンティーを楽しめた。
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