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第十四部・東京日常 編

〝デザート〟 ☆

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「ん……」

 ヌルリと唇の内側を舐められ、腰が震える。

「……あまい」

 僅かに唇を離した佑が呟き、また香澄の唇に吸い付いてきた。
 そのあと夢中になって、二人でちゅっ、ちゅっと音を立ててキスを交わし合う。

「ふ……、ん……、ン」

 佑は香澄の頭を撫で、まっすぐな黒髪の感触をツルツルと指で楽しんだ。

「ん、く」

 香澄は唾液を嚥下し、それしか知らないように、さらに舌を伸ばしキスを求める。

 キスをしている間に頭を撫でられ、舌を舐め、唾液を嚥下する事が〝良い事〟なのだと思えてくる。

 柔らかいベルベットのような舌に愛され、香澄の思考は次第にトロォ……と粘つき、正常な判断を下せなくなっていった。

(キス……。佑さん……、キス……)

 舌を舌で擦られるのがこの上なく気持ちいい。
 口端から唾液が溢れると、佑がそれをちゅっと吸う。

 触れ合った場所から溶け合い、舌から思考まですべて一つになれたらいいのに……と思ってくる。

「ん……ぁ」

 とろけた顔で舌を出した香澄は、佑を欲の籠もった目で見つめる。

「香澄……。ケーキ、またあとででいいか?」

 佑が余裕のない目で尋ねてくる。
 体の奥にできた熾火に耐えられない香澄は、コクンと頷いた。

「ん……。〝デザート〟……ちょうだい」

 ねだる声を聞いた佑は、耳元で「お腹一杯になるまであげるよ」と囁いてきた。

「っ……」

 佑は赤面した香澄を抱き上げ、立ち上がる。
 そして今度こそ迷わずにベッドルームに向かい、キングサイズのベッドの上に香澄を横たえた。

「香澄は俺のご褒美だ。逆に今日は俺の誕生日みたいだな」

 バスローブの紐を解かれ、体を隠していたフカフカのタオル地が左右に開かれる。

「ん……」

 何度裸になっても、恥ずかしさは変わらない。
 羞恥を堪えるために、香澄は佑に〝同じ〟になる事を望む。

「佑さんも脱いで……」

「ああ」

 視線の先、佑がゆっくりとバスローブを脱ぐ。
 香澄を見つめたまま、逞しい胸板や割れた腹筋を見せつけるようにしているのは、絶対にわざとだ。

(もぉ……)

 香澄は赤い顔で力なく佑を睨む。

「目が欲情してる」

 クスッと笑われ、恥ずかしくなった香澄は「知らない」とコロンと横を向いてしまった。

「ごめん」

 佑はクスクス笑い、香澄に覆い被さって肩や二の腕にキスをする。

「……いい香りがする。香澄の匂いだ」

 もう一度コロリと仰向けにされ、香澄は恥ずかしいとも何とも言えない目で佑を見上げた。

 香澄の視線を受ける佑は、「すべて分かっている」というような目をしている。
 言葉を口にしなくとも、香澄が小さく唇を開いただけでキスをしてくれた。

「……ん」

 香澄はサラリと佑の髪を掻き混ぜ、かすれた声を漏らす。

 ちゅ、ちゅぷ……とリップ音が立ち、佑の手が乳房をまさぐってくる。

 彼の手はねっとりと円を描くように乳房の大きさを確認し、掌で押し潰すようにして揉み、指先を柔肉に埋めてくる。

「あ……、ん、あぁ……」

 乳房を自由にされて香澄は歓喜し、体の奥にじんわりと熱を宿す。

(佑さん……好き……)

 香澄も彼の胸板を両手で撫で、「感じるかな?」と思って乳首をクリクリ指で弄ってみた。

「あぷ」

 すると佑に、窘めるように唇をあむっと噛まれた。

 そのままキスをしながら、二人でクスクス笑う。

 佑の唇は次第に下に移動し、首筋や鎖骨、デコルテを柔らかな唇で愛していく。

 両手で腋の下から腰、臀部と表裏の境目をツゥッとなぞられ、くすぐったさとも気持ちよさともつかない感覚に甘い声が漏れた。

「っひぁあ……っ、ん」

 香澄は身をよじらせてその掻痒感から逃げだそうとし、佑に背中を向けてズリズリと枕元のほうへ逃げた。
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