【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

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第十四部・東京日常 編

第十四部・序章 寿司デート1

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「こんばんは」

 佑が入ったのは、銀座にある落ち着いた雰囲気の寿司屋だ。

「いらっしゃい、御劔さん。そちらが噂の婚約者さんですね」

 明るい色の木のカウンターの奥で、四十代前半の男性が微笑む。

 板前の姿が堂に入っている彼は、この高級寿司店の主だ。

「こ、こんばんは。初めまして。赤松香澄と申します」

 ペコリと頭を下げると、「っかぁーっ、可愛いですねぇ」と男性が悶えた。

「こちらは木場きばさん。この店はプライベートで楽しみたい時に、よく使わせてもらっている」

 会話していると、木場の弟子らしい板前が話しかけてきた。

「コートをお預かりします」

 言われて、二人はコートを脱ぎ彼らに預ける。
 高級店らしく、店の出入り口にクロークがあり、コート類を預かってくれる。

 そのあと、カウンターに二人分のテーブルセットがあったので、そこに座る事にした。

 接待の時は個室を利用するが、「せっかくだからカウンターでの臨場感を楽しもう」と言ったので、その通りにしたいと思った。

「わぁ、カウンターのお寿司って久しぶりだから、ドキドキする」

 高級感のある白木のカウンター前に座ると、高揚感が増す。

 木という物は不思議なもので、どんな場所にも馴染むし一般的なのに、高級店のカウンターとなると緊張してしまう。

 香澄はドキドキしながら、おしぼりで手を拭く。

 ガラスケースの中には氷の上に笹とすだれがあり、その上に寿司ネタが並んでいる。

「じゃあ、予約していたコースでお願いします」

 佑が微笑み、ドリンクメニューを香澄に見せてくる。

「何飲みたい? 俺は日本酒にしておこうかな」

「う、うーん……。日本酒……はまだデビューできてないから、梅酒にしようかな。ソーダ割りがいい」

「御劔さん、お酒はいつものでいいですか?」

「はい、お願いします」

 それを聞き、弟子たちが飲み物の用意をし始める。

「松井さんはお元気ですか?」

 どうやら木場は、松井の事を知っているようだ。

「ええ、元気なものですよ。今日もたっぷり仕事をさせられました」

「赤松さんのためにも、たっぷり仕事をして稼がないといけませんね」

「はは、違いありません」

 佑と木場が親しげに話す横で、香澄は緊張しつつソワソワしている。

「赤松さん、苦手な寿司ネタやアレルギーはありませんか?」

「いえ! 何でも食べます! アレルギーなしの好き嫌いなしが唯一誇れる点です」

 ピシッと背筋を伸ばしてハキハキ答えると、木場が表情を緩めて笑いだした。

「可愛らしい女性ですね。いやぁ、御劔さんにいい人が見つかって本当に良かった……」

「女運が悪かったような言い方、やめてくださいよ」

 佑も冗談まじりに笑い、「な?」と香澄に同意を求めて見てくる。
 それに笑い返したあと、香澄は笑顔で爆弾を投下した。

「佑さんってこのお店に女性を連れて来た事、ありますか?」

 気になったので質問してみたのだが、木場の手元が止まり、水を飲もうとしていた佑がゴフッと噎せる。

「……香澄、なんでそういう事を聞きたがるんだ」

 佑にじっとりとした目を向けられ、香澄は「えへへ」と誤魔化し笑いをする。

「つい……」

 木場は二人の様子を確認してから、再び手を動かしつつ香澄の質問に答えた。

「この店には、お一人でとか、ご家族、針山様と……が多いですね。女性を連れて来られた記憶はありません」

「そうなんですか? へぇぇ……」

 答えを聞くと嬉しくなって、香澄はうんうんと頷く。

「香澄は俺にどうしてほしいんだ」

 横からむにゅ、と頬を摘ままれ、香澄は「いひひ」と笑う。

「いやぁ、〝世界の御劔〟はモテるから、女の子をどういう所に連れて行ったのかなー? って気になって」

 特に嫉妬して絡んでいる訳ではなく、サラッと言う。
 するとカウンターに頬杖をついた佑が苦笑いした。

「こういう言い方をすると語弊があるかもしれないが、後々どういう関係になるか分からない人を、常連になってる店に連れていかないよ。後腐れなく別れても、飲食店でばったり出くわしたら悲惨だろう?」

「まぁ……確かに。……ふぅん? 社長~、ずるい男ですねぇ」

 つんつん、と肘で佑をつつくと、佑は「参った」というように肩を揺らして笑った。
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