836 / 1,548
第十三部・イタリア 編
ここまで必死だったっけ
しおりを挟む
それから一階をうろうろしたあと、地下に向かった。
「佑さんの作業部屋は立ち入り禁止だから、ないとして……。ワインセラーもない……かな?」
言いつつ、ワインセラーの電気をパチンとつけて中を覗き込み、「……あった」と呟く。
そこは巨大なワインセラーを置く部屋になっていて、ワインセラーの中には酒類の他にもチーズやチョコレートなども入っている。
加えて、ちょっと一人飲みをするために、バーカウンターとスツール、ソファセットもある。
そのバーカウンターの上に、小さめのショッパーがあった。
「……バッヂ……」
赤と緑の特徴的なストライプは、まごう事なきバジーリオ・バッヂだ。
「せめてお手軽な物でありますように……」
もうプレゼントを受け取って、嬉しいのだか申し訳ないのだか分からない。
とりあえず佑の愛が重たい事だけは分かる。
黒い箱を開けると、中にサングラスが入っていた。
そしてバジーリオ・バッヂのメッセージカードに佑の文字がある。
『これから冬になるけど、紫外線はどの季節にもあります。香澄の綺麗な目を守るために、サングラスは何種類あっても困らないので、ぜひつけてください』
「……うん。気持ちはありがたいんだけど……。いや、ありがとう……」
香澄は自分の部屋にブランド物のサングラスが二十本近くあるのを思いだし、生暖かく笑う。
ショッパーを持ってシアタールームに向かうと、そこのテーブルにも平たい箱が置いてあった。
「むむ……」
ソファに座って箱を手にすると、かなりずっしりしている。
(……嫌な予感……)
そう思うも、予感はズバリ的中していて、出てきたのはまたリンゴのマークだ。
「……最新型のeコミュ……」
今年の十月に新モデルが出たばかりのスマホ、eコミュニケーションだ。
おまけに一番大きいサイズな上に、やはり容量も一番大きいと見た。
「……私そんなに容量使わないんだけどなぁ……」
ブツブツ言いながら、ためしに電源を入れてみる。
サイドボタンを長押しすると、コスモスレイン社のリンゴマークが出たあとに、ロック画面が出た――のだが。
「ぶほっ」
大きな液晶にばんっと出たのは、眠っている香澄にキスをしてる佑の自撮りだ。
「なんってものをロック画面にしてるの!? せ、設定!」
最新機種の使い方はよく分からないが、気が付くとホーム画面になっていて、その壁紙にもう一回噎せた。
今度は上半身裸の佑が、こちらに色っぽい目を向けて微笑んでいる写真だ。
逞しい胸板や割れた腹筋がくっきり浮かび上がり、実に興奮し――かけて香澄は我に返る。
「そ、そうじゃなくて……」
「もう……」と言ったあと、すでに入っているアプリを気にする。
コネクターナウを試しに開いてみると、登録されてあるアカウントは、佑のプライベートと社用アカウントのみだ。
「……ここまでしなくても……」
私用スマホは二台なくても大丈夫なので、そのうち引き継ぎをしにショップに行かなければ。
「はぁ……」
画面を設定し直す気力もなくなり、香澄はソファの背もたれに身を預けて溜め息をつく。
天井を見上げて「困った人だなぁ」と佑の事を思い――、急におかしくなってクスクス笑いだした。
「……おっかしぃ。佑さんってここまで必死だったっけ。いつまで経っても、私を全力で好きでいてくれるんだなぁ……」
不意に、『男が急に貢ぎだしたらやましい事がある証拠』という言葉を思いだした。
しかしそれに関してはまったく不安にならない。
「こんなに桁外れの額を貢いでくれる人も、そうそういないよなぁ……。物をもらって満足するのはあんまり良くないけど、ここまで愛されている人は私しかいないって思える。誕生日になるたびにこんなに沢山のプレゼントはいらないけど、本気度は分かったよ。ありがとう」
香澄はここにいない佑に向かって微笑みかけたあと、気を取り直して立ちあがった。
「……さて、クローゼットと自分の部屋、見てみよっか」
見つけた〝お宝〟を持って二階の私室に向かい、とりあえずデスクに置く。
――と。
「ん?」
デスクの上に箱があるのを見つけた香澄は、アーロンチェアに腰掛けるとラッピングを開いた。
「んー、万年筆。……わぁ、可愛い。『星の王子さま』だ」
万年筆は香澄でも知っているドイツの老舗ブランドの物で、ブルーの軸には『星の王子さま』に出てくるキツネの顔が描かれてある。
「佑さんの作業部屋は立ち入り禁止だから、ないとして……。ワインセラーもない……かな?」
言いつつ、ワインセラーの電気をパチンとつけて中を覗き込み、「……あった」と呟く。
そこは巨大なワインセラーを置く部屋になっていて、ワインセラーの中には酒類の他にもチーズやチョコレートなども入っている。
加えて、ちょっと一人飲みをするために、バーカウンターとスツール、ソファセットもある。
そのバーカウンターの上に、小さめのショッパーがあった。
「……バッヂ……」
赤と緑の特徴的なストライプは、まごう事なきバジーリオ・バッヂだ。
「せめてお手軽な物でありますように……」
もうプレゼントを受け取って、嬉しいのだか申し訳ないのだか分からない。
とりあえず佑の愛が重たい事だけは分かる。
黒い箱を開けると、中にサングラスが入っていた。
そしてバジーリオ・バッヂのメッセージカードに佑の文字がある。
『これから冬になるけど、紫外線はどの季節にもあります。香澄の綺麗な目を守るために、サングラスは何種類あっても困らないので、ぜひつけてください』
「……うん。気持ちはありがたいんだけど……。いや、ありがとう……」
香澄は自分の部屋にブランド物のサングラスが二十本近くあるのを思いだし、生暖かく笑う。
ショッパーを持ってシアタールームに向かうと、そこのテーブルにも平たい箱が置いてあった。
「むむ……」
ソファに座って箱を手にすると、かなりずっしりしている。
(……嫌な予感……)
そう思うも、予感はズバリ的中していて、出てきたのはまたリンゴのマークだ。
「……最新型のeコミュ……」
今年の十月に新モデルが出たばかりのスマホ、eコミュニケーションだ。
おまけに一番大きいサイズな上に、やはり容量も一番大きいと見た。
「……私そんなに容量使わないんだけどなぁ……」
ブツブツ言いながら、ためしに電源を入れてみる。
サイドボタンを長押しすると、コスモスレイン社のリンゴマークが出たあとに、ロック画面が出た――のだが。
「ぶほっ」
大きな液晶にばんっと出たのは、眠っている香澄にキスをしてる佑の自撮りだ。
「なんってものをロック画面にしてるの!? せ、設定!」
最新機種の使い方はよく分からないが、気が付くとホーム画面になっていて、その壁紙にもう一回噎せた。
今度は上半身裸の佑が、こちらに色っぽい目を向けて微笑んでいる写真だ。
逞しい胸板や割れた腹筋がくっきり浮かび上がり、実に興奮し――かけて香澄は我に返る。
「そ、そうじゃなくて……」
「もう……」と言ったあと、すでに入っているアプリを気にする。
コネクターナウを試しに開いてみると、登録されてあるアカウントは、佑のプライベートと社用アカウントのみだ。
「……ここまでしなくても……」
私用スマホは二台なくても大丈夫なので、そのうち引き継ぎをしにショップに行かなければ。
「はぁ……」
画面を設定し直す気力もなくなり、香澄はソファの背もたれに身を預けて溜め息をつく。
天井を見上げて「困った人だなぁ」と佑の事を思い――、急におかしくなってクスクス笑いだした。
「……おっかしぃ。佑さんってここまで必死だったっけ。いつまで経っても、私を全力で好きでいてくれるんだなぁ……」
不意に、『男が急に貢ぎだしたらやましい事がある証拠』という言葉を思いだした。
しかしそれに関してはまったく不安にならない。
「こんなに桁外れの額を貢いでくれる人も、そうそういないよなぁ……。物をもらって満足するのはあんまり良くないけど、ここまで愛されている人は私しかいないって思える。誕生日になるたびにこんなに沢山のプレゼントはいらないけど、本気度は分かったよ。ありがとう」
香澄はここにいない佑に向かって微笑みかけたあと、気を取り直して立ちあがった。
「……さて、クローゼットと自分の部屋、見てみよっか」
見つけた〝お宝〟を持って二階の私室に向かい、とりあえずデスクに置く。
――と。
「ん?」
デスクの上に箱があるのを見つけた香澄は、アーロンチェアに腰掛けるとラッピングを開いた。
「んー、万年筆。……わぁ、可愛い。『星の王子さま』だ」
万年筆は香澄でも知っているドイツの老舗ブランドの物で、ブルーの軸には『星の王子さま』に出てくるキツネの顔が描かれてある。
22
お気に入りに追加
2,544
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
『逃れられない淫らな三角関係』番外編 ヘルプラインを活用せよ!
臣桜
恋愛
『逃れられない淫らな三角関係』の番外編です。
やりとりのある特定の読者さまに向けた番外編(小冊子)です。
他にも色々あるのですが、差し障りのなさそうなものなので公開します。
(他の番外編は、リアルブランド名とかを出してしまっている配慮していないものなので、ここに載せるかは検討中)
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~
あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる