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第十三部・イタリア 編
秋の庭、ブランコを漕ぐ
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「さっきはナポリ貴族が食べていた高級料理って言ったけれど、今ではちょっと手間はかかるけど、前日に残ったパスタ料理をうまく活用するための、リメイク料理とも言えるわね」
「確かに! 効率良さそうですね!」
笑い合ったあと、マリアはパチンとウインクをして付け足す。
「でも、中にマカロニが入っているティンバッロは、茹で時間の計算もあるし、よそ行きの物ね。だから勿論、おもてなしのための料理よ」
「はい!」
他にもトマト味のスパゲッティやボンゴレビアンコを少しずつ、シンプルながらそれが至高のピッツァ・マルゲリータを味わう。
肉料理やアクアパッツァ、タコ料理が出されたあと、サラダや茄子料理が出される。
イタリア料理と言うと、日本で認識される料理まるごとがそうなのだと思っていた。
だがリゾットや牛肉のカルパッチョ、バーニャカウダやミラノ風カツレツ、ティラミスやパンナコッタは、北イタリアの料理らしい。
ルカにワインを勧められ、カロリーヌやフランチェスカに料理を勧められる。
「佑さん、私太って帰国しそう」
幸せ一杯で佑に囁くと、佑も「俺もだ」と笑った。
たっぷりイタリアの家庭料理を堪能したあと、ドルチェとカフェを頂く。
大皿の上にコロコロと丸っこいパンのような物がのっているのは、ババだ。
ラムシロップをたっぷり染みこませたブリオッシュのお菓子で、生クリームとチェリーのシロップ漬けが添えられている。
さすがにお腹いっぱいなので、テイクアウトしてきたジェラートをそれぞれ食べる傍ら、希望者がババに手を伸ばす形だ。
その頃には、香澄のお腹ははち切れそうになっていた。
「く……苦しい……」
おまけに調子に乗ってワインもスイスイ飲んでしまい、少々酔っ払っている。
「香澄、苦しいかもしれないけど水を飲んで。酔い潰れるよりマシだから」
「うん……」
佑に言われてクピクピと水を飲んでいると、席から立ったルカが顔を覗き込んできた。
『大丈夫かい? 顔が真っ赤だ。少し勧めすぎてしまったね。すまない、タスク』
『いや、俺が側にいるから問題ない』
そんな会話を聞いていると、マリアが提案してくる。
「ねぇ、香澄さん。酔い覚ましにちょっと庭で話をしない? スィニョーレ、いいでしょう?」
マリアに言われ、佑は香澄を心配そうに見てから「俺は構わない」と頷く。
「俺とルカも外に出る。女性同士の話があるなら、聞こえない距離にいる」
どうにも心配性の佑は、酔っ払った香澄の体調が気になって仕方がないらしい。
「分かったわ、ありがとう。立てる? 香澄さん」
「はい」
他の家族たちは酒盛りを続けている。
香澄は『ごちそうさまでした。美味しかったです。少し外で涼んできます』と挨拶をして、佑、ルカ、マリアと一緒に庭に出た。
「香澄さん、あっちにブランコがあるの。行きましょう」
「はい」
フィオーレ家の庭は広い。
レモンがなっている場所を抜けて、秋バラが咲いている場所まで向かうと、アーチからブランコが二つぶら下がっていた。
「ここでマルコがチビちゃん達の背中を押してるのよ。でも本当は、カロリーヌのために作ったブランコなの。素敵でしょう」
「本当ですね。マルコさん、とってもいいお爺ちゃんです。愛妻家の素敵な旦那様でもありますね」
「体重的に、座っても大丈夫かな?」と軽く腰掛けるが、思いの外頑丈にできているようで安心する。
その間に、マリアは慣れた様子でブランコに座り、気分良さそうにこぎ始めた。
秋の空気は気持ち良く、空を見上げると星が瞬いている。
「北部の山岳地帯は、空気が澄んでいてとても星空が綺麗よ」
「そうなんですね。あ、そっか。アルプスがありますもんね」
キィ、キィとブランコを漕いでいると、子供時代の気持ちが蘇り楽しくなってくる。
チラッと佑を探すと、ずっと遠くの母屋に近い場所でルカと座り、何か話している。
「ルカからあなたの事をちょっと聞いたの」
不意にそんな切り口で話題を振られ、少しドキッとする。
「え? ど、どういう……」
「何かおかしな事をニセコで言ったかな?」と心配になったが、マリアは友好的に微笑んでいるので悪い話ではないらしい。
「確かに! 効率良さそうですね!」
笑い合ったあと、マリアはパチンとウインクをして付け足す。
「でも、中にマカロニが入っているティンバッロは、茹で時間の計算もあるし、よそ行きの物ね。だから勿論、おもてなしのための料理よ」
「はい!」
他にもトマト味のスパゲッティやボンゴレビアンコを少しずつ、シンプルながらそれが至高のピッツァ・マルゲリータを味わう。
肉料理やアクアパッツァ、タコ料理が出されたあと、サラダや茄子料理が出される。
イタリア料理と言うと、日本で認識される料理まるごとがそうなのだと思っていた。
だがリゾットや牛肉のカルパッチョ、バーニャカウダやミラノ風カツレツ、ティラミスやパンナコッタは、北イタリアの料理らしい。
ルカにワインを勧められ、カロリーヌやフランチェスカに料理を勧められる。
「佑さん、私太って帰国しそう」
幸せ一杯で佑に囁くと、佑も「俺もだ」と笑った。
たっぷりイタリアの家庭料理を堪能したあと、ドルチェとカフェを頂く。
大皿の上にコロコロと丸っこいパンのような物がのっているのは、ババだ。
ラムシロップをたっぷり染みこませたブリオッシュのお菓子で、生クリームとチェリーのシロップ漬けが添えられている。
さすがにお腹いっぱいなので、テイクアウトしてきたジェラートをそれぞれ食べる傍ら、希望者がババに手を伸ばす形だ。
その頃には、香澄のお腹ははち切れそうになっていた。
「く……苦しい……」
おまけに調子に乗ってワインもスイスイ飲んでしまい、少々酔っ払っている。
「香澄、苦しいかもしれないけど水を飲んで。酔い潰れるよりマシだから」
「うん……」
佑に言われてクピクピと水を飲んでいると、席から立ったルカが顔を覗き込んできた。
『大丈夫かい? 顔が真っ赤だ。少し勧めすぎてしまったね。すまない、タスク』
『いや、俺が側にいるから問題ない』
そんな会話を聞いていると、マリアが提案してくる。
「ねぇ、香澄さん。酔い覚ましにちょっと庭で話をしない? スィニョーレ、いいでしょう?」
マリアに言われ、佑は香澄を心配そうに見てから「俺は構わない」と頷く。
「俺とルカも外に出る。女性同士の話があるなら、聞こえない距離にいる」
どうにも心配性の佑は、酔っ払った香澄の体調が気になって仕方がないらしい。
「分かったわ、ありがとう。立てる? 香澄さん」
「はい」
他の家族たちは酒盛りを続けている。
香澄は『ごちそうさまでした。美味しかったです。少し外で涼んできます』と挨拶をして、佑、ルカ、マリアと一緒に庭に出た。
「香澄さん、あっちにブランコがあるの。行きましょう」
「はい」
フィオーレ家の庭は広い。
レモンがなっている場所を抜けて、秋バラが咲いている場所まで向かうと、アーチからブランコが二つぶら下がっていた。
「ここでマルコがチビちゃん達の背中を押してるのよ。でも本当は、カロリーヌのために作ったブランコなの。素敵でしょう」
「本当ですね。マルコさん、とってもいいお爺ちゃんです。愛妻家の素敵な旦那様でもありますね」
「体重的に、座っても大丈夫かな?」と軽く腰掛けるが、思いの外頑丈にできているようで安心する。
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「そうなんですね。あ、そっか。アルプスがありますもんね」
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