786 / 1,544
第十三部・イタリア 編
マリア
しおりを挟む
さすがに佑は慣れているようで、照れもなく乾杯の挨拶をしてクイッとカクテルを飲む。
そしてルカに『美味しい』と微笑んでいた。
(気にしすぎなんだな。恥ずかしい……。小学生男子みたい)
一人でこっそり赤くなりながら、香澄は独特な香りのカクテルをストローで飲む。
「んン!」
見た目の通りオレンジの風味がする。ルカいわくハーブも入っているようなので、少し変わった香りがするのはそのせいだろう。
『美味しいかい? カスミ』
『はい! とっても美味しいです!』
ハッと「ボーノ」を思い出し、香澄は人差し指で頬をくりくりとしてみせた。
それを見てルカは破顔する。
『良かった! で、マリアを夕食に呼んだんだ。僕のアモーレにも会ってね。とってもいい子だから』
『はい! 楽しみです!』
それからたわいのない話をしていると、キッチンからスープの皿を持ったパオラやダニエラ、フランチェスカにカロリーナが現れた。
香澄も慌てて立ち上がり、料理を運ぶのを手伝おうとする。
『ノ、ノ、ノ。カスミは座っていて』
けれどパオラにウインクをされ、やんわりと肩を押されてしまう。
そのタイミングで、玄関から「Buonasera!」と女性の声がした。
『マリアだ!』
ルカがパッと表情を明るくし、早足に玄関に向かった。
「私たちもご挨拶に向かったほうがいいかな?」
香澄が言いかけたが、すぐにルカが女性――マリアを連れてきた。
彼女は長い金髪を低い場所でポニーテールにし、眼鏡をかけている。明るいブラウンアイの持ち主で、そばかすがチャーミングだ。
ルカはマリアとチュッとキスをして、紹介してくれる。
『カスミ、こちらがマリア。僕のアモーレだ』
『初めまして、マリアさん』
マリアは身長一七〇cm以上あり、やや見上げての挨拶となる。
とはいえ、パオラやダニエラ、フランチェスカも高身長だ。
挨拶をすると、彼女はクシャッと笑った。
『あなたが私たちのキューピッドね!』
マリアはそう言って、握手もそこそこにギュッと抱き締めてきた。
「わっ」
『あなたのお陰でルカと仲直りできたの! あなたがニセコ? でルカを勇気づけてくれたから、彼がまた私を求めてくれたわ! 私も今度こそきちんとルカと向き合えて、結婚しようって覚悟ができたの』
マリアからは、シトラス系のいい匂いがフワッと立ち上った。
『そ、そんな事ないです……。私もニセコではルカさんに励まされていて』
あわあわと返事をすると、体を離したマリアが魅力的に笑う。
『積もる話はこれから沢山しましょう? そしてあなたがタスクね?』
マリアは佑とも握手をし、軽いハグをする。
それから彼女がルカの家族たちに挨拶をしていると、サンルームからはマルコがカデンツァたちを連れて姿を現した。
『さぁさ! ワインを開けましょう』
カロリーヌの声を皮切りに、それぞれが手近にあったワインのボトルを手にし、コルクを開けた。
別のテーブルにいる河野たちも場の空気に従い、「お疲れ様」と言ってワインを注ぎ合っている。
『それでは、遠い日本からフィオーレ家を尋ねてくれた、タスクとカスミに――Cincin!』
マルコの声がしたあと、全員が「Cincin!」と言って、周囲の者とワイングラスを合わせた。
とにかく全員が佑と香澄と乾杯をしたがり、遠くの席にいる者までもがテーブルに身を乗り出して腕を伸ばしてくる。
香澄も腕を伸ばし、相手の目を見てニッコリ微笑み乾杯した。
周りに合わせてクイーッとワインを飲んでしまうと、先にルカと飲んでいた分も相まって体がポカポカしてくる。
『ズッパ・ディ・ズッカを召し上がれ』
カロリーヌに言われて目の前の皿を見ると、具だくさんのスープのような物がある。
どうやって食べるのが正解か周囲を見ていると、佑がこそっと囁いてきた。
「ズッパは具だくさんのスープを言うんだ。こっちのズッパは日本みたいに液体そのものを楽しむより、パンを浸して具と一緒に食べる。ズッカはカボチャの事。だから、これはカボチャメインの具だくさん野菜スープかな」
「ありがとう!」
お礼を言った香澄は、周りの人のようにパンをちぎってスープに浸し、なるべく具を絡めて口に入れる。
そしてルカに『美味しい』と微笑んでいた。
(気にしすぎなんだな。恥ずかしい……。小学生男子みたい)
一人でこっそり赤くなりながら、香澄は独特な香りのカクテルをストローで飲む。
「んン!」
見た目の通りオレンジの風味がする。ルカいわくハーブも入っているようなので、少し変わった香りがするのはそのせいだろう。
『美味しいかい? カスミ』
『はい! とっても美味しいです!』
ハッと「ボーノ」を思い出し、香澄は人差し指で頬をくりくりとしてみせた。
それを見てルカは破顔する。
『良かった! で、マリアを夕食に呼んだんだ。僕のアモーレにも会ってね。とってもいい子だから』
『はい! 楽しみです!』
それからたわいのない話をしていると、キッチンからスープの皿を持ったパオラやダニエラ、フランチェスカにカロリーナが現れた。
香澄も慌てて立ち上がり、料理を運ぶのを手伝おうとする。
『ノ、ノ、ノ。カスミは座っていて』
けれどパオラにウインクをされ、やんわりと肩を押されてしまう。
そのタイミングで、玄関から「Buonasera!」と女性の声がした。
『マリアだ!』
ルカがパッと表情を明るくし、早足に玄関に向かった。
「私たちもご挨拶に向かったほうがいいかな?」
香澄が言いかけたが、すぐにルカが女性――マリアを連れてきた。
彼女は長い金髪を低い場所でポニーテールにし、眼鏡をかけている。明るいブラウンアイの持ち主で、そばかすがチャーミングだ。
ルカはマリアとチュッとキスをして、紹介してくれる。
『カスミ、こちらがマリア。僕のアモーレだ』
『初めまして、マリアさん』
マリアは身長一七〇cm以上あり、やや見上げての挨拶となる。
とはいえ、パオラやダニエラ、フランチェスカも高身長だ。
挨拶をすると、彼女はクシャッと笑った。
『あなたが私たちのキューピッドね!』
マリアはそう言って、握手もそこそこにギュッと抱き締めてきた。
「わっ」
『あなたのお陰でルカと仲直りできたの! あなたがニセコ? でルカを勇気づけてくれたから、彼がまた私を求めてくれたわ! 私も今度こそきちんとルカと向き合えて、結婚しようって覚悟ができたの』
マリアからは、シトラス系のいい匂いがフワッと立ち上った。
『そ、そんな事ないです……。私もニセコではルカさんに励まされていて』
あわあわと返事をすると、体を離したマリアが魅力的に笑う。
『積もる話はこれから沢山しましょう? そしてあなたがタスクね?』
マリアは佑とも握手をし、軽いハグをする。
それから彼女がルカの家族たちに挨拶をしていると、サンルームからはマルコがカデンツァたちを連れて姿を現した。
『さぁさ! ワインを開けましょう』
カロリーヌの声を皮切りに、それぞれが手近にあったワインのボトルを手にし、コルクを開けた。
別のテーブルにいる河野たちも場の空気に従い、「お疲れ様」と言ってワインを注ぎ合っている。
『それでは、遠い日本からフィオーレ家を尋ねてくれた、タスクとカスミに――Cincin!』
マルコの声がしたあと、全員が「Cincin!」と言って、周囲の者とワイングラスを合わせた。
とにかく全員が佑と香澄と乾杯をしたがり、遠くの席にいる者までもがテーブルに身を乗り出して腕を伸ばしてくる。
香澄も腕を伸ばし、相手の目を見てニッコリ微笑み乾杯した。
周りに合わせてクイーッとワインを飲んでしまうと、先にルカと飲んでいた分も相まって体がポカポカしてくる。
『ズッパ・ディ・ズッカを召し上がれ』
カロリーヌに言われて目の前の皿を見ると、具だくさんのスープのような物がある。
どうやって食べるのが正解か周囲を見ていると、佑がこそっと囁いてきた。
「ズッパは具だくさんのスープを言うんだ。こっちのズッパは日本みたいに液体そのものを楽しむより、パンを浸して具と一緒に食べる。ズッカはカボチャの事。だから、これはカボチャメインの具だくさん野菜スープかな」
「ありがとう!」
お礼を言った香澄は、周りの人のようにパンをちぎってスープに浸し、なるべく具を絡めて口に入れる。
32
お気に入りに追加
2,509
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
【R18】寡黙で大人しいと思っていた夫の本性は獣
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
侯爵令嬢セイラの家が借金でいよいよ没落しかけた時、支援してくれたのは学生時代に好きだった寡黙で理知的な青年エドガーだった。いまや国の経済界をゆるがすほどの大富豪になっていたエドガーの見返りは、セイラとの結婚。
だけど、周囲からは爵位目当てだと言われ、それを裏付けるかのように夜の営みも淡白なものだった。しかも、彼の秘書のサラからは、エドガーと身体の関係があると告げられる。
二度目の結婚記念日、ついに業を煮やしたセイラはエドガーに離縁したいと言い放ち――?
※ムーンライト様で、日間総合1位、週間総合1位、月間短編1位をいただいた作品になります。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる