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第十三部・イタリア 編
勢揃いしたフィオーレ家
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(電話に出る時に『アロ』って言うの、フランス語だったっけ)
そう思っていたら、やはり佑はフランス語で話していた。
香澄は『ありがとう』などの挨拶や、店で買い物をする時の言葉ぐらいしか知らない。
なので彼が何を話しているのかは、まったく分からなかった。
佑はすっかり冷静になっていて、先ほどまでとの温度差が凄い。
そんな彼を見て、香澄は無意識にニヤついていた。
(やっぱりお仕事モードの佑さんは格好いいなぁ。私だけに見せてくれる顔も好きだけど、この雰囲気も捨てがたい)
そう思っていたが、彼のスマホを見て自分のスマホの存在を思いだした。
(何時だっけ? 夕ご飯、大丈夫?)
手を伸ばしてテーブルの上にある自分のスマホを掴むと、花柄の手帳型ケースを開く。
(あれ、もう十七時過ぎてるんだ。佑さんの電話が終わったら、母屋に行かないと。河野さんたちも一緒に行っていいのかな?)
そんな事を考えていると、佑の電話が終わった。
「お仕事?」
「あー……、半分そんなもんかな。友人から、『パリにいたならなぜ声を掛けなかった』っていう文句の電話だ」
「世界中にお友達がいると、付き合いも大変だね。佑さんモテモテ」
「皆、香澄を見たがってるだけだ。そう簡単に見せてたまるか」
性格の悪い事を言って笑う佑は、独占欲を隠さない。
「もー。お友達とは仲良くしてね。そうだ。もうそろそろご飯の時間じゃない? 河野さんたちも一緒にお呼ばれしていいのかな?」
「そうだな。河野たちの事は、一応訊いてみるか」
「うん」
香澄はぴょこんと佑の膝から下り、仕上げにワンピースのウエストリボンを結ぶ。
「お布団直しておこ」
乱れた布団が気になったので、ベッドルームに戻って布団を直す。
そのあと、佑が淹れてくれたコーヒーが勿体なかったので一気飲みした。
「もう冷めてるだろ」
いつも佑は熱いうちに飲んでしまうのだが、香澄は猫舌なのでスローペースだ。
なので割と多く残っていた。
「勿体ないもん」
香澄は洗面所に向かって化粧直しをする。
ティッシュで余計な皮脂をとり、HANNAの艶出しタイプのフェイスパウダーをポンポンし、クレイオのフィックスミストを顔全体に掛ける。
ディアールのカプサイシンが入ったリッププランパーをつけると、カプサイシンの効果で唇がプクンとボリュームアップする。
そのあと軽くティッシュオフしてから、コンシーラーで輪郭を綺麗にし、リップライナーで輪郭を作る。
それからお気に入りのドニ・サン=ジョルジュのリップをリップブラシで塗っていく。
香澄はどちらかというと、ファンデーションもリップも艶派だ。
マットメイクは、ファッションの系統や自分の雰囲気に合わないと思っている。
単なる好みの問題だ。
塗ったリップを一度ティッシュオフしてから、もう一度リップブラシで重ねづけすれば化粧直しの完成だ。
鏡に映った自分を見て「よし!」と微笑んで化粧室を出た。
**
母屋に向かうと夕食の準備が進んでいて、ルカが『いま呼びに行こうと思ったところだったんだ』と笑いかけてくれた。
河野たちも同席していいらしく、彼らのテーブルも用意されてある。
カロリーナとルカの母、二人の娘と家政婦が忙しく働き、香澄は何か手伝えないかオロオロしだす。
マルコは動物たちが邪魔をしないように、サンルームでカデンツァたちを相手にしていた。
『初めまして! 君がタスク・ミツルギだね。私はアントニオだ』
ルカの父が握手を求め、佑と香澄、そして河野たちと順番に握手をしていく。
『お邪魔しています。タスク・ミツルギです』
『初めまして。私はカスミ・アカマツです。お邪魔しています』
『私はフランチェスカよ! あっちは長女のダニエラ』
続いてルカの母が全員と挨拶をし、太陽のような笑みを浮かべる。
『あ、あの! 私も何かお手伝いできる事はありませんか?』
前のめりになって申し出たが、フランチェスカはどう解釈したのか、『まぁ~! 可愛い!』と香澄をムギューッと抱き締めた。
「エッ?」
上ずった声を上げる香澄に、ルカが笑って説明する。
『カスミはお客さんだから座っていて。ソレッラもソレリーナも進んで料理や手伝いをする人じゃないから、マンマが感動してるんだよ』
『こら! ルカ!』
その声を聞いて、キッチンから女性の怒鳴り声が聞こえた。
驚いてそちらを見ると、ダニエラとパオラがパスタトングを片手に現れた。
**
例により……。
HANNA→SUQQUが「すっく」とした姿勢が由来らしいので、華やかなイメージで
クレイオ→クラランスが古代ローマの男性の名前なので、古代ローマの歴史の女神の名前、ギリシア語「祝う」が語源の、ミューズの一人から
ディアール→ディオール
ドニ・サン=ジョルジュ→イヴ・サン=ローラン
から、なんちゃってブランドです
そう思っていたら、やはり佑はフランス語で話していた。
香澄は『ありがとう』などの挨拶や、店で買い物をする時の言葉ぐらいしか知らない。
なので彼が何を話しているのかは、まったく分からなかった。
佑はすっかり冷静になっていて、先ほどまでとの温度差が凄い。
そんな彼を見て、香澄は無意識にニヤついていた。
(やっぱりお仕事モードの佑さんは格好いいなぁ。私だけに見せてくれる顔も好きだけど、この雰囲気も捨てがたい)
そう思っていたが、彼のスマホを見て自分のスマホの存在を思いだした。
(何時だっけ? 夕ご飯、大丈夫?)
手を伸ばしてテーブルの上にある自分のスマホを掴むと、花柄の手帳型ケースを開く。
(あれ、もう十七時過ぎてるんだ。佑さんの電話が終わったら、母屋に行かないと。河野さんたちも一緒に行っていいのかな?)
そんな事を考えていると、佑の電話が終わった。
「お仕事?」
「あー……、半分そんなもんかな。友人から、『パリにいたならなぜ声を掛けなかった』っていう文句の電話だ」
「世界中にお友達がいると、付き合いも大変だね。佑さんモテモテ」
「皆、香澄を見たがってるだけだ。そう簡単に見せてたまるか」
性格の悪い事を言って笑う佑は、独占欲を隠さない。
「もー。お友達とは仲良くしてね。そうだ。もうそろそろご飯の時間じゃない? 河野さんたちも一緒にお呼ばれしていいのかな?」
「そうだな。河野たちの事は、一応訊いてみるか」
「うん」
香澄はぴょこんと佑の膝から下り、仕上げにワンピースのウエストリボンを結ぶ。
「お布団直しておこ」
乱れた布団が気になったので、ベッドルームに戻って布団を直す。
そのあと、佑が淹れてくれたコーヒーが勿体なかったので一気飲みした。
「もう冷めてるだろ」
いつも佑は熱いうちに飲んでしまうのだが、香澄は猫舌なのでスローペースだ。
なので割と多く残っていた。
「勿体ないもん」
香澄は洗面所に向かって化粧直しをする。
ティッシュで余計な皮脂をとり、HANNAの艶出しタイプのフェイスパウダーをポンポンし、クレイオのフィックスミストを顔全体に掛ける。
ディアールのカプサイシンが入ったリッププランパーをつけると、カプサイシンの効果で唇がプクンとボリュームアップする。
そのあと軽くティッシュオフしてから、コンシーラーで輪郭を綺麗にし、リップライナーで輪郭を作る。
それからお気に入りのドニ・サン=ジョルジュのリップをリップブラシで塗っていく。
香澄はどちらかというと、ファンデーションもリップも艶派だ。
マットメイクは、ファッションの系統や自分の雰囲気に合わないと思っている。
単なる好みの問題だ。
塗ったリップを一度ティッシュオフしてから、もう一度リップブラシで重ねづけすれば化粧直しの完成だ。
鏡に映った自分を見て「よし!」と微笑んで化粧室を出た。
**
母屋に向かうと夕食の準備が進んでいて、ルカが『いま呼びに行こうと思ったところだったんだ』と笑いかけてくれた。
河野たちも同席していいらしく、彼らのテーブルも用意されてある。
カロリーナとルカの母、二人の娘と家政婦が忙しく働き、香澄は何か手伝えないかオロオロしだす。
マルコは動物たちが邪魔をしないように、サンルームでカデンツァたちを相手にしていた。
『初めまして! 君がタスク・ミツルギだね。私はアントニオだ』
ルカの父が握手を求め、佑と香澄、そして河野たちと順番に握手をしていく。
『お邪魔しています。タスク・ミツルギです』
『初めまして。私はカスミ・アカマツです。お邪魔しています』
『私はフランチェスカよ! あっちは長女のダニエラ』
続いてルカの母が全員と挨拶をし、太陽のような笑みを浮かべる。
『あ、あの! 私も何かお手伝いできる事はありませんか?』
前のめりになって申し出たが、フランチェスカはどう解釈したのか、『まぁ~! 可愛い!』と香澄をムギューッと抱き締めた。
「エッ?」
上ずった声を上げる香澄に、ルカが笑って説明する。
『カスミはお客さんだから座っていて。ソレッラもソレリーナも進んで料理や手伝いをする人じゃないから、マンマが感動してるんだよ』
『こら! ルカ!』
その声を聞いて、キッチンから女性の怒鳴り声が聞こえた。
驚いてそちらを見ると、ダニエラとパオラがパスタトングを片手に現れた。
**
例により……。
HANNA→SUQQUが「すっく」とした姿勢が由来らしいので、華やかなイメージで
クレイオ→クラランスが古代ローマの男性の名前なので、古代ローマの歴史の女神の名前、ギリシア語「祝う」が語源の、ミューズの一人から
ディアール→ディオール
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