【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

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第十三部・イタリア 編

〝人は考える葦〟

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『……後悔しても、どうにもなりませんね』

 様々な思いから、そんな言葉が漏れた。
 香澄に関わるあらゆる事、エミリアたちに下した沙汰、様々な後悔が佑の胸にのしかかっている。

『人生は前にしか進めない。した事を後悔するより、これから後悔しないように考え続けたまえ。〝人は考える葦〟だ。思考する事は尊く、ゆえに人間は、人生は面白い』

『はい』

 人生の大先輩から言われ、佑は微笑んで頷く。

『それより、今の君に必要なのは休憩ではないかね? 私ならいつでも話し相手になる。今は離れに戻って、夕食までゆっくり休みたまえ』

『ありがとうございます。そうします』

 佑は礼を言い、立ち上がった。
 マルコと軽くハグをし、リビングにいるルカたちに挨拶をして母屋を出ていく。

 外に出ると爽やかな秋風が心地いい。
 自分は今、太陽の恵み溢れるローマにいるのだと思い、深呼吸をした。

 離れに戻ると、足音を殺してベッドルームに入る。

 相変わらず香澄はくうくう寝ていて、佑は笑みを零した。

(もう少し、人を信じなければ)

 香澄にも「私を信じて」と言われた。

 なにより大切な彼女の言葉を受け入れず、突っ走ろうとした自分に苦い笑いが漏れる。

 立ち止まって休憩している時は、マルコの言葉をすんなり聞き、「あの時の自分はこうだった」と反省できる。

 しかしまた香澄が危機に陥るような事があれば、そんな心の余裕は決して生まれないのは分かっている。

(せめて平和な時ぐらいは、なるべく自分を甘やかすようにしよう)

 まじめで根っからの仕事人である佑は、自分に休憩を与えるのがとても下手だ。

 休日に家で過ごそうと思っても、つい端末を弄ってしまっている。
 だから出雲を誘って食事に行くとか、兄弟からの誘いがあれば応じて、何もなければドライブをして時間を過ごしていた。

(今後、香澄を側に置きながら、できるだけ二人ともゆっくり過ごすためには、どうすればいいのか考えていかなければ)

 考えながら香澄の無防備な寝姿を見ているが、愛しさが溢れて仕方がない。

「香澄、愛してるよ」

 気が付けば彼女に愛を囁き、そんな自分に笑みが零れる。

 自分にとって、香澄を愛する事は当たり前で、なくてはならないものだ。

 佑は彼女がそこにいる事を確認して安心し、ジャケットを脱ぐ。

 ジャケットをウォークインクローゼットのハンガーに掛けてから、スーツケースの中にある服も収納していく。

 香澄の服も掛けてあげたかったが、スーツケースの鍵はバッグに入っているのでやめておいた。

 半袖白Tシャツとスウェットに着替え、佑も少し横になる事にした。

「お邪魔します」

 もそりと羽根布団を捲って香澄の隣に寝転ぶと、彼女の体温で布団が温まっていて思わず笑みが漏れる。

「ぬくぬくうさぎだな」

 愛しくて堪らず、佑は香澄の肩を抱きその頭に唇を押しつける。

「んぅ……?」

 と、起こしてしまったのか、香澄がムニャムニャ言いながら目を開けた。

「ごめん、起こしたか?」

「んーん。……寝るの?」

「ああ、俺も疲れたから少し寝る」

「うん……。寝よ」

 眠たそうに、幸せそうに寝ぼけている香澄は、佑に抱きついてまた目を閉じた。

(ああ、可愛い……)

 すっかりリラックスした佑は、香澄の匂いを思いきり嗅いでから、息を吐くと同時に体から力を抜いていく。

(ここずっと、体に余計な力が入りっぱなしだった気がする。香澄にも気を遣わせてしまったかもしれない)

 一人反省会を始めるも、香澄の体温を感じていると、どんどん思考能力が落ちていく。

 それでも「ローマでの今後の予定を……」と思っていたが、そのうちストンと眠りの淵に落ちてしまった。



**




「…………ん……」

 ふ……と目が覚めると、知らない天井がある。

(どこだっけ……)

 ぼんやりとした頭では何も考えられない。

 とりあえず札幌の実家でもないし、札幌の賃貸マンションでもない。

 モソリと身じろぎすると、体の上に掛かっている腕が力なく香澄を抱いた。
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