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第十二部・パリ 編

チェーンとリング ☆

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「ああ、俺のうさぎがピョンピョコ跳ねてきた」

 佑はすでにジェットバスに入っていて、濡れた手で前髪を掻き上げ笑っている。

「もーっ! 止めて! これ止めて!」

 両手で胸を覆い、体を揺すってねだるとようやく尻尾の震えが止まった。

「あはははは……! 可愛い……!」

 怒ろうにも佑があまりに朗らかに笑うので、怒るに怒れない。

「もぉぉぉ……」

「おや、うさぎのはずなのに牛になった」

 小さなリモコンを濡れない場所に置き、佑がまた笑う。

「もぉ。あんまりうさぎを怒らせても知らないんだからね? ちょっと調べたら、うさぎって寂しがり屋で甘えん坊……じゃなくて、結構強いんだから。自分のしたい事しかしなくて、邪魔をしたら許さないの。それでもって発情期には気性が荒くなるんだって」

 香澄の説明を聞き、佑はニヤリと意地悪に笑う。

「ふぅん? じゃあ、プリプリ怒っている今は発情期なのかな?」

 揚げ足を取られて香澄は何も言えなくなり、頬を膨らませる。

 香澄は洗面所の椅子に腰掛け、うさぎの尻尾に力が加わらないように、片足をお尻の下に挟んでワンクッション作った。

「香澄、もう一つプレゼントがあるからこっちにおいで」

「え? ……何かやだ。やな予感しかしない」

「俺を慰めてくれるならおいで。毎回こんな事はしない。今夜だけスペシャルなんだろ?」

「…………もー」

 けれど自分で言ってしまった手前、従わざるを得ない。

 椅子から下りて、両手で胸を覆ったまま浴槽に近付くと、佑はバスタブの縁に座って大理石の上に置いてあったチェーンを手に取る。

「……なに……それ。……チェーンハーネス? ならさっきつけたけど……」

 細い金色のチェーンには嫌な予感しかない。
 おまけにチェーンには小さなリングが幾つもついている。

「言ったら香澄は『嫌だ』って言うから、俺につけさせて」

「……うー」

 じろりと上目遣いに睨んでも、匂い立つほど妖艶な彼はうっすら笑ったまま引こうとしない。

「……今回だけ……だからね」

 一歩前に出ると、顎を掴まれてちゅっとキスをされた。

「ありがとう。結局折れてくれる香澄が好きだよ」

 目の前でヘーゼルの目が嬉しそうに細められ、香澄は「ずるい」と思った。

 こんな美しい男性にお願いをされて、断れるはずがない。

 佑は香澄の髪が濡れないように、出しておいたバスタオルで手を拭いた。

 そしてチェーンを香澄の首に回し、そこから三本伸びたチェーンのうち、二本の先端にある小さなリングを持つ。

「……それってピアス? 私、ピアス開いてないよ?」

「大丈夫だよ。これはピアスじゃなくて挟むだけ。ほら」

 佑は香澄にリングの切れ目を見せる。

「つける前に、勃たせないとな」

 佑はそう呟き、香澄の手を退けると、ちゅっと彼女の乳首に吸い付いた。

「え! ……えっ!? 耳じゃないの!?」

 香澄は慌てふためき、佑の肩を押す。

「耳じゃないよ。これは香澄の可愛い乳首につけるんだ」

 シンプルな金色のリングを見せつけられ、カァーッと顔が赤くなる。

(……となると)

 気になった香澄は、そろりと残る四つのリングを見る。

「じゃ……じゃあ……こっちは?」

 こんな物があるなんて知らなかった。

 絶望的な顔をする香澄の前で、佑はこの上なくいい笑みを浮かべた。

「香澄のココにつけるんだよ」

 花弁をクニッと撫でられた途端、あまりに破廉恥なアクセサリーに顔が真っ赤になった。

「嘘ぉ! ……こんなんあっていいの!?」

「目の前にあるだろ? 世の中には、本当にピアスを開けている人もいるよ」

 過激な事を言われ、香澄はいやらしいと思うより、痛そう……と思って眉を寄せる。

 その間も佑は指でクリクリと香澄の乳首を弄り、硬く尖らせている。
 舌でレロリと舐め上げては指でこより、またチュパッと吸い上げる。

「ん……、もぉ……。佑さんどこでこんな知識仕入れるの?」

 文句を言いつつも、香澄は胸からジンジンと甘い疼きに体を支配され、色っぽい溜め息をついていた。

「男には色々情報の仕入れ処があるんだよ。でも浮気はしてないし、エッチなサイトも買い物以外は見てないから、安心してほしいな」

「むー」

 佑にも男友達はいるだろうし、大人の男性として猥談をする事もあるだろう。

 性欲を否定するつもりはない。
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