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第十二部・パリ 編

特定してくる双子

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『タスクずるい!!』

『僕らもこれからパリ行っていい!?』

『そこセーヌでしょ? ラ・レーヌ広場の向かい辺り!? 特定!』

「わぁ、凄いね。やっぱり慣れてる人は背景見ただけで分かっちゃうんだ」

「こわ……」

 香澄は双子の反応に関心しているが、佑はドン引きしている。

「私も札幌の中心部なら分かりそうなんだけどな」

『ホテルどこ?』

「香澄、この質問には答えなくていい」

 とっさに佑が香澄の手を押さえ、真剣な顔で首を振る。

「う、うん……」

「香澄があいつらと遊びたいって言うなら別に構わないが、今は一か月ぶりに会えた俺を優先してほしい。今回のヨーロッパ旅行の間は駄目だ」

「分かった」

 そう頷いたのだが――。

『凱旋門行ってエッフェル塔行ってその位置なら、ルーブルに向かって歩いてるんだよね? そっち方面で五つ星って言ったら、ショーンのホテル?』

 言い当てられ、佑が「うわっ」と鳥肌を立てて青ざめた。

「香澄、何でもいいから『違う』って打って」

 こんな焦った佑を見るのも珍しく、香澄は戸惑いながらも『違いますよ。別のホテルです』と打ち返しておいた。

 そのあとも双子は、知っているホテルの名前を出してくる。

「ああ、パンドラの箱を開いてしまった気分だ。香澄、適当に終わらせておいて」

「ふふ、分かった」

 コネクターナウに『また後で連絡しますね』とメッセージを入れ、今度こそスマホをバッグにしまった。

 また腕を組んでブラブラと歩きだし、通りを歩く人々を見て目を細める。

「こっちの人ってイチャイチャしてるのを隠さないよね。日本でイチャイチャしているのを見ると、逆に見ているほうが恥ずかしくなってくるんだけど、こっちではならない。不思議だなぁ」

「お国柄かな?」

「だね。佑さんも隠さないタイプだけど」

「そうかな?」

「そうだよ」

 広い空の上を、飛行機が飛んでいくのが見える。
 近くに大きな国際空港があるからか、空には幾筋もの飛行機雲ができていた。

「佑さん」

「ん?」

「……その。今夜、お手柔らかにね?」

 スペシャルな夜の事をほのめかすと、堪らず笑った佑がギュッと抱き締めてきた。



**



 ホテルに戻って休憩したあと、ディナータイム前に二人は『オーバード』パリ本店に向かった。

「クリスマス近くになると、恋人が下着を贈るように街中に広告が出るんだよ」

「へぇ。そう言えばこっちって、割と女性のセクシーな広告とか堂々と出ている気がする」

 昨今、何かと性的な広告が出ると、批判される風潮を思い出す。

「欧米でも広告に関するトラブルは当たり前にあるけどね」

「Chief Everyで下着ラインやるなら、どういう広告を目指す?」

 香澄の問いに、佑は「おや」という顔をして笑う。

「割ときわどい所を突くな。そうだな……。『ストロベリー・ジョー』みたいに女性支持の高いブランドもあるから、戦略的にはそちらに寄せたいかな。広告に下着の女性が出ても、いやらしさのない物を作りたい。それでいて女性に『ここの下着をつけてみたい』と思わせる説得力と、魅力が出せるような」

 語りつつ、佑の目は真剣なものになっている。

「作れるといいね。Chief Everyの下着ライン」

「作るよ。Chief Everyと、Chief Every Platinumとはまた別の、第三の柱になってくれたらいいと思っている」

 言い切る佑が頼もしく、香澄は一人満面の笑みを浮かべた。



**




『オーバード』の店舗に入ると、可愛らしい内装が広がっていた。

 白い壁一面に白や黒、ピンクや花柄のブラジャーやパンティが、ハンガーに掛かって吊されている。
 腰より下にある専用の棚にもブラジャーが置かれていて、様々なサイズ展開がある。

 オープンな店構えは、女性の好みを熟知しているように思えた。
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