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第十二部・パリ 編

一生分の恋 ☆

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「……た、……佑さんにされて嫌な事はないの……」

 小さく呟くと、はぁー……と安堵の溜め息が聞こえた。
 耳や頬にキスをされて、指の隙間から佑を見ると、彼は愛しげな目でこちらを見ている。

「……俺は絶対に香澄に害を加えない。それだけは信じて」

「当たり前だよ」

 微笑んだ香澄は、両手で彼の頬を包んだ。

「……動いていい? 正直、気持ち良くてつらい……」

 そこで改めて佑が困った顔を見せ、香澄は破顔する。

「どうぞ、佑さん」

 彼の頭を抱き寄せチュッと唇にキスをすると、佑が香澄の脚を抱えてゆっくり腰を前後させ始めた。

「……ん、……ン、ぅ……」

 ぐちゅ、ぐちゅ……と柔らかな肉が硬い肉棒を咀嚼する音がし、羞恥で顔が染まっていく。
 それでも香澄は佑に舌を絡め、いやらしいキスにさらに興奮していった。

 キスだけでお腹の奥がジン……と熱くなる。
 こんないやらしくて素敵なキスができるのは、佑一人だけだ。

(……好き……)

 佑に触れてキスをしているだけで、この上なく幸せな気持ちになる。
 香澄は彼の髪を撫で、佑の動きに合わせて腰をくねらせた。

(こんないやらしくなるのも、佑さんの前だけ)

 ちゅ……と小さな音を立てて唇が離れ、香澄はポーッとして佑の綺麗な色の目を見つめる。

 いつだったか、明るい場所で佑の目をじっくり見させてもらった事があった。

 瞳孔のまわりにオレンジや茶色の混じった虹彩があり、虹彩の縁に至る過程でグリーンが混ざっていた。
 とても美しく、香澄は隙あらば佑の目を見たいと思っていた。

 けれど見つめ合うと、どんどん恥ずかしくなってしまうので、たまに盗み見する程度だ。

 こうしてベッドで愛し合っていると、自然と見つめ合うので、さらにうっとりとしてしまう。

「……佑さん、綺麗……」

 思わず言葉が漏れ、それに佑が「え?」と不可解そうな顔をした。

「何言ってるんだ。香澄が一番綺麗だ。俺は綺麗なんて言われても嬉しくないよ」

 そう言って頭を撫でられ、キスをされる。

「……私にとって、佑さんが世界で一番綺麗な生き物なの」

 ぎゅうっと佑を抱き締め、香澄は心からの言葉を紡いだ。

 この気持ちは何回口にしても、何度表そうとしても表現しきれない。

 佑の事が好きで堪らず、大切で、彼以上の存在などいないという気持ちを、さらに突き詰めて考えようとすると、切なくなって涙が零れてしまう。

(私、佑さんに恋をし続けている)

 佑に会うまで、誰かを想って泣くなど体験した事もなかった。

 交際して一年も経たないうちに沢山の体験をして、一生分の恋をしている。
 こんな大恋愛はこの先絶対にできないと確信していた。

 香澄にとって世界で一番綺麗な人は、困ったように笑ってもう一度キスをしてきた。

「俺にとっても、香澄が世界で一番綺麗な存在だよ」

 そう言って頭や髪、顔を撫でてくる手が優しくて涙が滲む。

「……何だってしてあげる。私、佑さんのためなら何をしても怖くないの」

 この腕に抱いているのは、何にも代えがたい世界の宝だ。

 そんな人が自分を求めてくれるなら、喜んですべてを差し出したい。
 佑に命令されるなら、どんな恥ずかしい事だってするし、危険な事だってきっとできる。

 彼は思い詰めた感情を香澄の目の奥に見つけ、額にキスをしてきた。

「好きだと言ってくれるのは嬉しい。でもそんな事を言わなくていいよ。『俺のために何かしてくれ』なんて言わない。……いやらしいお願いならするかもしれないけど」

「もぉ……」

 彼らしい冗談に、香澄は笑いながら彼に頬ずりする。

「じゃあ、どんないやらしいお願いをしたいの?」

 頬を赤くして見つめると、佑が嬉しそうに目を細めた。

「自分で胸を揉んでみて」

「ん……」

 頷いた香澄は、恥じらいつつも自身の乳房に手を這わせ、おずおずと白い双丘を揉み始めた。

 自分で胸を揉んでみてもあまり気持ち良くないが、佑に見つめられてだと性的快感とは異なる興奮が湧き起こる。

 香澄は自分でも最近掴みきれなくなった白い乳房に指を埋め、ムニュムニュと捏ねる。
 ときおり乳首を指先で転がすと、心地よい掻痒感に腰が揺れ、蜜壷がキュウ……と彼を締め付けた。

「ああ……。香澄、可愛いよ」

 佑はご満悦な顔になり、上体を起こすと再び香澄を突き上げ始めた。
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