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第十二部・パリ 編
決着
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『……すまなかった。嫉妬に駆られ、節子を犯して申し訳なかった。もうクラウザー家には関わらない。……エミリアの罪も私が購おう。……申し訳なかった』
その言葉を聞いて、佑の胸の奥でつかえていた何かが少し溶けた。
ずっと釈然としない想いを抱えているのは、エミリアから謝罪の言葉を聞いていなかったからだ。
『分かった。許すとは言わない。私は一生お前を許さないだろう。だが、その謝罪は受け取る』
アドラーが言い、それでようやく、本当にすべてが終わった気がした。
『……帰るか』
一番にクラウスが立ち上がり、アロイスも立った。
佑、エルマー、アドラーが立って、順次執事からコートを受け取る。
双子が一番に部屋を出て行き、護衛たちも動きだす。
佑はソファに座ったまま動かないフランクを見て溜め息をつき、気持ちを切り替えると自分も応接室を出た。
**
『佑。一時間だけミュンヘンで飲んでいかないか?』
帰りがけアドラーに言われ、佑は車に乗ろうとした足を止める。
『お、いいね。僕らも飲む』
『来いよタスク』
双子にも言われ、佑は腕時計を確認する。
自分のジェットだからいいものの、常識的な離発着時間ギリギリだ。
『なら早く移動だ。二十三時には俺は帰るからな』
さっさと車に乗り込んだ佑は、瀬尾に「ミュンヘンに向かってくれ」と告げてシートに寄りかかった。
「…………はぁ」
佑はぞんざいに脚を組み、眉間を揉む。
すべてにカタがついた筈なのに、どこかスッキリしない。
思っていたより、自分は傷ついているのだろう。
だからこれ以上打つ手がないほど謝罪されても、心から納得できていない。
何よりエミリア本人が反省していないので、やるせない気持ちのままだ。
(エミリアの事はガブリエルに任せよう。あいつに何か変化が起きたら、知らせてもらえる事になっているから)
なんとか心理的な疲れを癒やそうとし、佑はスマホを取りだしていた。
コネクターナウを開き、時間的に香澄はもう寝ているだろうかと迷う。
しかし香澄が就寝するのは大体二十三時以降だ。
メッセージを入れようとしたが、文字を入れるより前に、つい通話ボタンをタップしていた。
「あ」
タップしてしまってから自分が何をしたのか理解し、参っている自分に苦笑する。
(コール音五回だけ待とう。寝てたら悪いし)
そう思って夜闇に目を向け、耳を澄ます。
プルル……とコール音が鳴り始め、佑の胸がトクトクと騒ぐ。
好きな女性に電話を掛ける時は、いつだって緊張する。
『もしもし?』
コール音三回目の途中で、香澄の声がした。
軽やかな甘い声音に、思わず涙腺が緩みそうになる。
香澄を守るためなら、どんな事だってしてみせる。
彼女が知ったら悩みそうな事を考え、佑は潤んだ目元を拭い微笑む。
『佑さん? イタ電?』
黙っていたからか香澄が不審な声になり、佑は慌てて声をだす。
「奥さん、今日の下着の色は?」
『んふふふふっ……。何色がいい?』
耳元で香澄の声が聞こえるので、電話は好きだ。
助手席で呉代が噎せた音が聞こえたが、無視する。
「香澄ならベージュでも興奮するよ」
『もーっ、すぐそういう変態言う! 私ベージュのおぱんつ持ってないもん』
「ベージュピンクって近いよな?」
『あれは可愛い色だからいいの。セーフ』
あまりにくだらない会話に、心がどんどん癒やされていく。
「じゃあ、俺がベージュの下着作ったらつけてくれる?」
我ながら何を言っているのだろうと思うが、今は楽しければ中身がなくてもいい。
『うーん……。つける……けど……。そう言えば高級ランジェリーのサイトで、シームレスな感じの肌色下着を見たけど、結構ヌードっぽく見えるね? 逆に一番やらしい色かもしれない』
「確かにあるな。最近レースのアイテムが流行ってるだろ。インナーがベージュだと一瞬下は裸なのかと思って、思わずガン見するよな」
『もーっ、誰見て言ってるの!』
すぐ怒る香澄に佑はクツクツ笑い、思わず見とれたバストラインを思いだす。
その言葉を聞いて、佑の胸の奥でつかえていた何かが少し溶けた。
ずっと釈然としない想いを抱えているのは、エミリアから謝罪の言葉を聞いていなかったからだ。
『分かった。許すとは言わない。私は一生お前を許さないだろう。だが、その謝罪は受け取る』
アドラーが言い、それでようやく、本当にすべてが終わった気がした。
『……帰るか』
一番にクラウスが立ち上がり、アロイスも立った。
佑、エルマー、アドラーが立って、順次執事からコートを受け取る。
双子が一番に部屋を出て行き、護衛たちも動きだす。
佑はソファに座ったまま動かないフランクを見て溜め息をつき、気持ちを切り替えると自分も応接室を出た。
**
『佑。一時間だけミュンヘンで飲んでいかないか?』
帰りがけアドラーに言われ、佑は車に乗ろうとした足を止める。
『お、いいね。僕らも飲む』
『来いよタスク』
双子にも言われ、佑は腕時計を確認する。
自分のジェットだからいいものの、常識的な離発着時間ギリギリだ。
『なら早く移動だ。二十三時には俺は帰るからな』
さっさと車に乗り込んだ佑は、瀬尾に「ミュンヘンに向かってくれ」と告げてシートに寄りかかった。
「…………はぁ」
佑はぞんざいに脚を組み、眉間を揉む。
すべてにカタがついた筈なのに、どこかスッキリしない。
思っていたより、自分は傷ついているのだろう。
だからこれ以上打つ手がないほど謝罪されても、心から納得できていない。
何よりエミリア本人が反省していないので、やるせない気持ちのままだ。
(エミリアの事はガブリエルに任せよう。あいつに何か変化が起きたら、知らせてもらえる事になっているから)
なんとか心理的な疲れを癒やそうとし、佑はスマホを取りだしていた。
コネクターナウを開き、時間的に香澄はもう寝ているだろうかと迷う。
しかし香澄が就寝するのは大体二十三時以降だ。
メッセージを入れようとしたが、文字を入れるより前に、つい通話ボタンをタップしていた。
「あ」
タップしてしまってから自分が何をしたのか理解し、参っている自分に苦笑する。
(コール音五回だけ待とう。寝てたら悪いし)
そう思って夜闇に目を向け、耳を澄ます。
プルル……とコール音が鳴り始め、佑の胸がトクトクと騒ぐ。
好きな女性に電話を掛ける時は、いつだって緊張する。
『もしもし?』
コール音三回目の途中で、香澄の声がした。
軽やかな甘い声音に、思わず涙腺が緩みそうになる。
香澄を守るためなら、どんな事だってしてみせる。
彼女が知ったら悩みそうな事を考え、佑は潤んだ目元を拭い微笑む。
『佑さん? イタ電?』
黙っていたからか香澄が不審な声になり、佑は慌てて声をだす。
「奥さん、今日の下着の色は?」
『んふふふふっ……。何色がいい?』
耳元で香澄の声が聞こえるので、電話は好きだ。
助手席で呉代が噎せた音が聞こえたが、無視する。
「香澄ならベージュでも興奮するよ」
『もーっ、すぐそういう変態言う! 私ベージュのおぱんつ持ってないもん』
「ベージュピンクって近いよな?」
『あれは可愛い色だからいいの。セーフ』
あまりにくだらない会話に、心がどんどん癒やされていく。
「じゃあ、俺がベージュの下着作ったらつけてくれる?」
我ながら何を言っているのだろうと思うが、今は楽しければ中身がなくてもいい。
『うーん……。つける……けど……。そう言えば高級ランジェリーのサイトで、シームレスな感じの肌色下着を見たけど、結構ヌードっぽく見えるね? 逆に一番やらしい色かもしれない』
「確かにあるな。最近レースのアイテムが流行ってるだろ。インナーがベージュだと一瞬下は裸なのかと思って、思わずガン見するよな」
『もーっ、誰見て言ってるの!』
すぐ怒る香澄に佑はクツクツ笑い、思わず見とれたバストラインを思いだす。
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